お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

ifとこれから





 「話聞いてくれてありがとうございます」
 「全然大丈夫だよ。ありがとうね。話してくれて…病気のこと…言いづらいよね…なのに話してくれてありがとう。私からは誰にも話さないよ。ありがとうね。告白してくれて、陽菜ちゃんの想いは受け取ったよ。ありがとう。勇気出して想いを伝えてくれて…」
 「りっちゃんさん…受け答えがいちいちイケメンです…」

 私が陽菜ちゃんの頭にぽんっと手を置いて、撫でてあげながら言うと陽菜ちゃんは幸せそうな表情で言う。イケメンって割といろんな人から言われるけど私ってイケメンなの?一応、私も女の子だからイケメンよりかはかわいい。と言われる方が嬉しい気もする……

 「陽菜ちゃん…もし、だよ…私が陽菜ちゃんと付き合って…陽菜ちゃんと長く一緒にいたい。って言ったら陽菜ちゃんはどうする?」

 これで、陽菜ちゃんがどう答えても構わない。この質問はただの興味本位なのだから…

 「もし…りっちゃんさんにそう言ってもらえたら陽菜はすごく嬉しいです。幸せです。今まで頑張って生きた甲斐があるって思えます。だから、残された時間いっぱいをりっちゃんさんと過ごしたいです。自由にりっちゃんさんと一緒にいたいです。りっちゃんさんには申し訳ないですね…先がない私のために時間を使うことになってしまいますから……」

 なんか、もやもやする。病気とかそういうのじゃない…たぶん…陽菜ちゃんが…陽菜ちゃんと関わる時間を私にとって無駄な時間というように言ったことが…納得できない。

 「無駄になんかならないよ。もし、私が陽菜ちゃんと付き合ったとしても、陽菜ちゃんと付き合う時間は無駄になんかならない。私の記憶にずっと残るよ。陽菜ちゃんと過ごす日々は…大切な人との記憶は…一生、残り続ける。私の中に…そして、好きな人と一緒にいた大切な記憶は、時に勇気をくれて、元気をくれて、慰めをくれる。その記憶と一緒に人間は成長する。無駄になんかならない。無駄にしてはいけない。少なくとも、私は無駄にしたくない。もし、最後は私一人になっても、私は悲しさと共に…大切な記憶と共に成長する。だから、無駄にはしない」

 なんか、ぐちゃぐちゃなこと言っているな。伝わったかな…と思いながら陽菜ちゃんを見ると陽菜ちゃんは泣いていた。私は陽菜ちゃんの涙を拭って陽菜ちゃんを抱きしめてあげる。冷たい…けど、温かい。陽菜ちゃんの身体は風に冷やされていて冷たいが、陽菜ちゃんと言う人間の温もりは感じた。この温もりは…好きだ。

 悪くないかもな……少しだけ、そう思った気がする。陽菜ちゃんを見つめながら…悪くない。と思った。



 「あれ、りっちゃん、陽菜ちゃん、こんなところで何してるの?」

 陽菜ちゃんが泣き止んだので、私は陽菜ちゃんを抱きしめるのをやめた。そして、少しだけお話をしながら星を眺めていた。どうでもいい話をしながら、私は陽菜ちゃんと手をそっと繋いでいた。陽菜ちゃんは驚きながらも幸せそうだった。私と陽菜ちゃんが空を…綺麗な星空を見上げていると、まゆちゃんと、春香ちゃん、りょうちゃんが手を繋いで外にやってきた。

 「ん?ちょっと、星を見ながらお話してたの。まゆちゃんたちもそうなんでしょう?」

 私はまゆちゃんの質問に答える。合宿が始まってからはあまりいちゃいちゃしたりはしていない気がしたが、3人で手を繋いで外で星を眺める…と……人目があるのにいちゃいちゃしてけしからんなぁ。今の私が言えることではないか……

 「えへへ。りょうちゃんがどうしてもって言うからさ」
 「え?提案したのはまゆちゃんだよね?でも、りょうちゃんが合宿中はあまりいちゃいちゃしないようにしないと…って言ったらめちゃくちゃ寂しそうな顔してさ…」
 「は…春香ちゃん?そ、そんなことないよ。りょうちゃんが、まゆと星を見たいって言ってくれたの」
 「まゆちゃんが悲しそうにしてたからやむなくだよ。りょうちゃんは優しいからさ……」

 まゆちゃんと春香ちゃんが少しバトリ始めた。痴話喧嘩は他所でやってくれ。

 「まあまあ、春香、その言い方はだめだよ。僕だって、春香とまゆと星空見たりしたかったしさ。だけど、また変なこと言われたら嫌でしょう?」
 「別に今更じゃない?」
 「うん。春香ちゃんの言う通りだよ。みんな、すでに知ってるし、まゆはどう思われてもいいもん。りょうちゃんと春香ちゃんと一緒にいられれば」
 「私も…」
 「僕もだよ」

 そう言いながら、3人で抱きしめ合っている。バカップルかよ。私は何を見せられているんだ。と思っていると陽菜ちゃんも私と似たような表情をしていて笑いそうになってしまう。
 そう思いながら…私は少しだけ…まだ、まゆちゃんのことを羨ましい。と思ってしまっていて、気づいたら、まゆちゃんの姿に自分の姿を重ねていた。あり得ないifを私は再び、脳内で描いていた。ifなんて存在しないのにさ。ifに縋るのではなくこれからを生きると決めたのに…

 「陽菜ちゃん、身体冷えちゃったし、そろそろ中行こうか」
 「はい。そうですね」

 私は、りょうちゃんたちにじゃあね。と言い陽菜ちゃんと中にいる。これ以上3人を見ていると…まゆちゃんを見ていると…また、思い出してしまいそうだから……

 思い出してしまう。は表現が悪い。眠っていた想いが目を覚ましてしまう。という表現の方が正しい。

 「大丈夫ですか?」
 「ん?大丈夫だよ」

 私の隣にいた陽菜ちゃんに心配かけてしまい申し訳ないと思いながら、私は一瞬振り返り、りょうちゃんの背中を、春香ちゃんの背中を……まゆちゃんの背中を見つめた。
 そして、すぐに前を向いて陽菜ちゃんと一緒に建物内の適当なソファーに座り、自販機で温かい飲み物を買って、身体を温めながら雑談を楽しんだ。






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