お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

春香のわがまま





 「りょうちゃん、そろそろ起きて」
 春香の声掛けで僕は目を覚ます。僕の両隣には春香とまゆがそれぞれいて僕の腕を抱きしめていた。
 「おはよう。春香」
 「うん。おはよう」
 まゆはまだ眠っていた。春香の笑顔を見て朝から幸せな気分になれたが、かなり忙しい連勤のせいで割と疲れていた為、正直言ってもう少し寝たい。まゆは僕よりもバイトで忙しい仕事をしてくれていたから僕よりも疲れているのだろう。目を覚ます気配がない。
 「やっぱり疲れてるよね。起こしちゃってごめんね。まゆちゃんも疲れてるみたいだし、もう少しゆっくり寝てて…私、今からお昼ごはんと夜ごはんの材料買いに行って来るからさ、朝ごはんは一応お米炊いて味噌汁作ってあるから、食べたかったら冷蔵庫に入ってる卵焼きと漬け物と一緒に食べてね」
 「うん。いろいろとありがとう。僕も買い物行こうか?」
 「ううん。疲れてるだろうし大丈夫だよ。まゆちゃんと一緒にゆっくりしてて。今日もバイトなんだからゆっくり休んでおかないとでしょう?」
 「うん。ありがとう。じゃあ、申し訳ないけどもう少しゆっくりさせててもらうね」
 「うん」
 春香は笑顔で僕に顔を近づけてきたのでそっとキスをしてあげる。すると春香は嬉しそうにありがとう。と言いリビングを出て行った。春香がリビングから出て行った後、まだ眠っているまゆにそっとキスをする。春香だけ…は不公平だからね。

 その後、僕とまゆは春香が昼食を作り終えるまでぐっすり眠っていた。疲れている僕たちが食べやすいように、と昼食をさっぱりとした冷やし中華にしてくれる春香の気遣いは本当にありがたい。冷やし中華には春香特製のごまだれがかけられていて本当にさっぱりしていてとても美味しい。温かくなってきた季節にこの冷やし中華は最高だ。こんなに料理上手で気遣いをしてくれる彼女を持てて僕は幸せ者だ。
 でも、ゴールデンウィーク最終日なのに春香とまゆとデートしたり出来なくて申し訳ないな…特に春香は、こんなに僕とまゆに気を遣ってくれているのに、夕方からアパートに放置してしまう形になるのは本当に申し訳ない。
 「ねえ、春香、まゆ、今からバイトまでの時間かバイトが終わってから何かしない?せっかくのゴールデンウィーク最終日なのに何もしないのはちょっと素っ気ないじゃん。それにバイトの時間、春香を1人にしてばかりで申し訳ないしさ…」
 昼食の冷やし中華をすすりながら僕は春香とまゆに尋ねる。
 「うーん。嬉しい提案だけど、りょうちゃんとまゆちゃんはバイトで疲れているでしょう?」
 春香は嬉しそうな表情を見せた後に、申し訳なさそうに言う。そんなに気を遣わなくても…気を遣ってくれるのは嬉しいんだけどね……
 「春香、気を遣ってくれるのは嬉しいんだけどさ、たまには春香もわがまま言ってよ。春香はいつも僕とまゆを支えてくれているんだからさ、春香のわがまま、聞いてあげたいなぁ。いつものお返し、させてよ」
 「りょうちゃんの言う通りだね。いつもまゆばかりりょうちゃんにわがまま言ってて申し訳ないしさ、春香ちゃんもりょうちゃんにわがまま言ってやりなよ」
 「いい…の?」
 「うん」
 春香の問いかけに僕は即答する。まゆも黙って頷いた。春香は嬉しそうな表情をしてうーん。と悩み始める。
 「あ、花火…したい…」
 「「花火?」」
 僕とまゆは予想外の発言に驚いた。まだ、ゴールデンウィークだし、花火って…売ってるのかな…
 「どうして花火?」
 「えー綺麗だし、夜中に出来るし、そこまで疲れないかな…って思って…」
 まゆが尋ねると春香は即答した。春香の返事を聞いてまゆは、「だから、遠慮すらなぁ〜ちゃんとわがまま言え〜」と言いながら春香の頬を抓るが、春香は「えー、私本当に花火したいんだよ」と笑顔で言う。
 「じゃあ、花火、しようか。まゆ、バイト行く時間よりも早くアパート出て花火の買い出ししよう」
 「うーん。春香ちゃんが花火でいいって言うなら言いけど…本当に花火でいいの?」
 「うん」
 まゆの問いかけに春香は迷わず答える。春香の笑顔から本当に春香が花火をしたいということは伝わってきたので、僕とまゆは納得して、今日、バイトが終わって夕食を食べたら、アパートの駐車場で花火をすることになった。春香はアパートの大家さんに電話して花火をしていいかを確認すると、火の扱いに気をつけて近所迷惑にならない範囲でなら問題ない。近隣住民から文句を言われたらすぐに止めることを条件に許可してくれたので、駐車場で花火をすることにした。

 「じゃあ、りょうちゃん、まゆちゃん、バイト頑張ってね。今日も夜ご飯作って待ってるから」
 「うん。いつもありがとう」
 春香の言葉に僕は感謝を伝える。今日の夕食は何かな…と今から楽しみだ。
 「夜ご飯食べたら花火しようね」
 「うん。楽しみに待ってるね」
 まゆの言葉に春香は嬉しそうに返事をした。春香に行ってきます。と言い、僕とまゆはバイトに出かける。ゴールデンウィーク最終日、3連勤最後のバイト、疲れは溜まっているが、頑張ろう。と、春香の「行ってらっしゃい。頑張ってね」の一言を聞いて思えた。





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