お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

3人で幸せに…





 「りょうちゃん、今日はさ、帰ったら春香ちゃんと一緒にいてあげてくれないかな?」
 春とりょうた君の見送りをした後、僕とまゆはバイトに向かい、バイトが終わった後の車の中でまゆは僕に言う。
 「え、急にどうしたの?」
 「うーん。なんとなく…春香ちゃんが心配だからさ…」
 「春香が心配?」
 「うん。春ちゃんとりょうた君が付き合うことになってさ、春香ちゃんはどう思っているのかなぁ…って…まゆがいなかったら、りょうちゃんと春香ちゃんも春ちゃんとりょうた君みたいに2人で幸せになれたんじゃないかな…って…」
 まゆは真剣な表情で僕に言う。今更、そんなこと気にしなくても…春香は……
 「ごめんね。まゆ…」
 「え、急に謝ってどうしたの?」
 「いや、まゆが罪悪感と言うか…複雑な思いをしているのに気付いてあげられなくてさ……春とりょうた君を見て、まゆは春香に申し訳ないって思ったんだよね?」
 「うん……」
 「まゆはバカだね…一回春香に怒ってもらった方がいいかもね」
 僕は笑いながらまゆに言う。まゆはどういう意味?と頬を膨らませる。かわいい。

 「まゆちゃん、相変わらずバカだね」
 アパートに帰り先程のまゆとのやり取りを春香に伝えると春香は笑いながらまゆに言う。
 「私たちは私たち、春ちゃんとりょうたは春ちゃんとりょうた、別の物語でしょう?私はね。りょうちゃんとまゆちゃんと一緒だから今、幸せなの。私の幸せにまゆちゃんは必要なの。だから、まゆちゃんがいなかったら…とか考えるのはやめて。怒るよ」
 最後の怒るよ。の一言は割りと本気の怒るよ。だったので僕はちょっと震えてしまった。まゆは春香にごめんなさい。ありがとう。と言い、この話は終わった。
 たしかに、春とりょうた君、幼馴染みの2人が、結ばれる。理想的な恋愛だと思う。だからと言って、僕たちが影響される必要はない。僕と春香とまゆには、僕と春香とまゆの恋愛が…幸せがあるのだから。

 「で、今日は私がりょうちゃん独占してもいいのかなぁ?」
 「え、だめ…傷ついてないならりょうちゃんを独り占めはだめ…」
 春香が悪戯心顔で言うとまゆは慌てて僕に抱きついて春香に言う。かわいすぎる…春香は笑いながらじゃあ、3人で夜ご飯食べようね。と言い、台所から夕食をテーブルに運び始めた。今日も、僕とまゆがバイトの間に夕食を作ってくれていて本当にありがたい。美味しくて温かい夕食があるからバイトも頑張れる。
 今日の夕食はミートパスタとサラダ、昨日の余りのホワイトシチューだった。1日寝かしたホワイトシチューは絶品だった。

 「ちょっと電話かかって来たから外行ってくるね」
 深夜の夕食を終えた頃、親から電話がかかってきたので春香とまゆにそう言って玄関でサンダルを履いて部屋を出て電話に出る。
 「もしもし?春とりょうた君そっち着いた?」
 電話に出て僕がお母さんに尋ねるとお母さんは着いたわよ。と答えてくれる。着いて早々に春はりょうた君の家にお泊まりに行ったらしい。
 「あなた、春香ちゃんともう1人、まゆちゃん?と付き合っているんだって?」
 「うん…」
 春から聞いたのか……いずれ話さないといけないとは思っていたが……認められなかったらどうしよう。否定されたらどうしよう。と思うと報告できずにいた。
 「2人と付き合うってことは2人の女性を幸せにしないといけないってこと、わかるわよね?」
 「覚悟してるよ」
 「そう。ならいいわ」
 「何も言わないの?」
 たぶん、このことはすでに春香のお母さんの耳にも入っているだろう。僕の親と春香の親は…この関係を認めてくれたのだろうか…
 「最初はね。私も春香ちゃんのお母さんもは?ってなったわよ。でもね。春が必死になって説明してくれたわ。お兄ちゃんと春香ちゃんとまゆちゃんは3人ですごく幸せそうだった。だから、否定しないであげてって…3人ともすごく本気だったからって…だから、あなたたちの関係については、私も春香ちゃんのお母さんも何も言わない。ただ、付き合うのなら誠意を持って付き合いなさい。中途半端に2人と付き合うのなら家族として縁を切るから覚悟しておきなさいよ」
 「うん。ありがとう」
 「礼なら春にいいなさい。あの子が必死になって言うから私も春香ちゃんのお母さんもとりあえず様子を見ることにしたのだから…言っておくけど、まだ、認めたわけじゃない。春香ちゃんとまゆちゃん、2人をきちんと幸せにして認めさせなさい」
 「うん」
 「あと、夏に春香ちゃんとまゆちゃんを連れて帰って来なさいよ」
 「え、まゆも連れてっていいの?」
 「当たり前じゃない。合わないとまゆちゃんを幸せにできているかわからないし、それに、会ってみたいしね。息子の初彼女に…」
 きっと電話越しでニヤニヤしているんだろうな…と思うような声でお母さんは僕に言う。その後は少し話をしてから電話を切った。

 少しだけ、安心した。
 僕と春香とまゆの関係を見ずに否定されたりしなくて…春香とまゆは必ず幸せにする。言われるまでもない。
 春香とまゆ、2人を幸せにする。それが大変なことだと言うのはよくわかる。だが、絶対に2人を幸せにできる自信がある。
 だって…僕は、春香とまゆ、大好きな2人に幸せにしてもらえるのだから……
 3人でなら必ず。幸せになれる。本気でそう思うから。






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