お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

辛い時は……




 
 「ご主人様、まゆに何かご命令してください」
 まゆ先輩に髪を乾かしてもらった後、僕はまゆ先輩に膝枕をさせてもらい耳掃除をされていた。幸せすぎる……まゆ先輩は笑顔で僕に尋ねるが、まゆ先輩がかわいすぎて…その…見てるだけで幸せだから、命令なんてできない…けど……
 「写真…撮らせて…」
 「撮った写真で何するのかなぁ?」
 「何もしないよ…」
 「ふーん。りょうちゃんが今考えてること、実際にまゆでしてくれていいんだよ」
 「すぐそういうこと言わないの…」
 「はーい」
 まゆ先輩はごめんね。と言いながら立ち上がり写真撮っていいよ。と言ってくれたので、遠慮なく写真を撮りまくった。まゆ先輩はノリノリでいろいろなポーズをしてくれて一緒に写真を撮ったりして、僕のスマホの写真フォルダがまゆ先輩の写真で埋め尽くされた。
 「満足してくれた?」
 「うん。めっちゃかわいい写真いっぱい撮れたよ」
 まゆ先輩が僕のスマホの画面を覗き込んできたので、撮れた写真をまゆ先輩に見せていくと、まゆ先輩がうわ…これ恥ずかしいなぁ…などと呟いたりしていた。かわいい。
 「他に何かまゆにしてほしいことはないですか?ご主人様」
 まゆ先輩が満面の笑みで僕に尋ねてくれる。まゆ先輩にご主人様と呼ばれる度にすごくドキドキしてしまい、メイド服姿のまゆ先輩から目を逸らしてしまう。
 「ん〜ちょっと考えていい?」
 「うん」
 まゆ先輩に何をお願いしようか考えながらスマホの画面を見ると通知が届いていた。
 「りょうちゃん?どうしたの?」
 「あ、ううん。何でもないよ」
 まゆ先輩に動揺しているのを悟られないように注意しながらまゆ先輩に返事をして、一旦スマホの画面を消した。僕のスマホに届いていた通知はりっちゃんさんからのLINEだ。『心配かけてごめんね。いろいろ考えたけど、私に春香ちゃんとまゆちゃん、りょうちゃんと仲良くする資格なんてない。だから、ごめんなさい。春香ちゃんとまゆちゃんには今度事情を話して、ちゃんと謝って、ちゃんとお別れを言うことにするよ。』その一文を読んで僕の心は締め付けられるように痛くなった。だが、横にいるまゆ先輩に心配をかけたくないので、僕は笑顔を作りまゆ先輩に悟られないように注意しながら、りっちゃんさんに何と返事をするかを考えた。
 「りょうちゃん…」
 「ん?え…ちょっ…」
 僕に声をかけたまゆ先輩は僕を抱きしめてくれた。驚く僕にごめんね。と言いながらまゆ先輩は僕を抱きしめてそのまま床に押し倒した。
 「何があったの…そんな悲しそうな顔して辛そうにしているりょうちゃんなんてまゆ、見たくないよ」
 ポーカーフェイスには自信があったのにな…こうもあっさりと僕が悩んでることに気がついてくれるなんて…まゆ先輩には敵わないや……
 「悩んでることとかあるならまゆに言って…まゆが無理なら春香ちゃんでもいいから…りょうちゃん1人で抱え込まないでよ…りょうちゃんが悩んでたり困ってたりしたらまゆと春香ちゃんは一緒に悩んであげたり、助けてあげたい…りょうちゃんを支えてあげたい。りょうちゃんが辛そうな顔してるの嫌だから…だから、もしよかったら話して……」
 まゆ先輩が優しい声で僕に言ってくれた。それが嬉しすぎて僕は泣き出してしまった。泣いてしまった僕を見てまゆ先輩は優しく僕を再び抱きしめて頭を撫でて大丈夫だよ。りょうちゃんにはまゆと春香ちゃんがついてるからね。と耳元で囁いてくれた。ありがとう。情けないな…自分は情けない……1人で抱え込んで……大切な人に心配をさせてしまうなんて……本当に情けない。
 「無理して話す必要はないけどさ、ちょっと心配だったから…最近、思い詰めたような表情ばかりしててまゆも春香ちゃんも心配だったの?1人でなんとかできそうなの?無理なら本当に頼ってね。まゆと春香ちゃんはりょうちゃんの彼女で先輩なんだからさ、りょうちゃんが困ってたら絶対力貸すよ」
 だから…なのかな…まゆ先輩が今日、帰ってからずっと、いろいろしてくれたのは…いや、そんなことないような気もするが…ありがとう。本当にありがとう。
 「まゆ、ありがとう。頼っていい?」
 「うん。もちろんだよ。何があったの?」
 まゆ先輩は僕が話しやすいように、と笑顔を崩さないで話を聞こうとしてくれた。そんなまゆ先輩の優しさに僕は救われた。りっちゃんさんとのことを、僕の口からまゆ先輩に伝えていいのか…そう言った悩みはあったが、ずっと、まゆ先輩と春香に黙っていることはできないだろう。りっちゃんさんも春香とまゆ先輩に今回の出来事は伝えるつもりのようだし……僕は、今この場でまゆ先輩に話すことを決めた。まゆ先輩がどのような反応をするかはわからない。だが、りっちゃんさんは春香とまゆ先輩から離れようとしている。罪滅ぼしのために…望んでもいないのに…自分には春香とまゆ先輩と一緒にいる資格がないと言い聞かせて……まゆ先輩が今回の話を聞いてどう思うのかは予想ができない。だが、もし、まゆ先輩が…春香が…りっちゃんさんと離れる未来を望んでいないのなら、りっちゃんさんのためにも、まゆ先輩と春香のためにもこれからも仲のいい友達でいて欲しい……
 「驚かないで聞いてね。出来れば、何も言わずに最後まで話を聞いて欲しい」
 「うん。わかった。話して…」
 まゆ先輩は僕を抱きしめるのをやめて、僕から離れてクッションの上に座る。僕も起き上がり、まゆ先輩と向き合うように座った。
 そして、りっちゃんさんとの出来事をまゆ先輩に話した。りっちゃんさんに想いを告げられたことを話すとまゆ先輩は驚いたような表情をしたが、最後まで黙って話を聞いてくれた。
 「まゆはさ…りっちゃんさんのことどう思う?許せない?」
 りっちゃんさんがまゆ先輩と春香から離れようとしていることを相談する前に、僕はまゆ先輩に尋ねた。まゆ先輩はうーん。と少し悩みながら僕の問いへの返事を考えてくれるのだった。






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