お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

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 「私、朝から何を見せつけられてるんだろう…」
 僕が春香とまゆ先輩を抱きしめているのを見てりっちゃんさんが呟いた。いや、そもそもこうなったのはりっちゃんさんのせいなんですけど…
 春香とまゆ先輩は嬉しそうにえへへ…私たちが1番…ってにやけていて本当にかわいい。
 誤解が解けた後、僕たちは慌てて大学に向かう準備をして朝ごはんを食べずに慌てて大学に向かった。

 
 大学に到着して、春香ちゃんとまゆちゃん、りょうちゃんが授業に向かうのを見送ってから私はホールの鍵を借りてホールで楽器を吹くことにした。
 ホールの鍵を開けて楽器庫に入っている私のバストロンボーンを持ってホールの舞台に向かい、楽器ケースからバストロンボーンを取り出した。
 軽く基礎練習をした後、私は楽器庫に入り、楽譜が保管されている棚から一つの楽譜を取り出した。その中からバストロンボーンのパート譜を取り出した。
 私はさっそくその楽譜を持って舞台に戻り、楽譜を譜面台に置いてバストロンボーンを構える。はっきり言って、楽譜は必要ない。全て覚えているのだから……
 「熱い…か……」
 そう呟いた後、息を吸いバストロンボーンに息を吹き込む。息を吸った際、吸い込んだ息がいつもより肺の中で熱を帯びている感覚があった。身体が……熱い………
 音ははっきりと伸びて、ホール全体に響き渡り、狙った音を外すことなく出すことが出来て何より音から感情を感じてしまう。
 熱いなぁ…すごく熱い………やっぱりか…………私は今、どうしようもなく……恋をしてしまっているのだろう……
 「りょうちゃん…か……」
 吹き終えた後、私は一人で呟いた。辛いなぁ…本当に辛い……今朝、無理だってわかったのに…絶対叶わない恋だってわかったのに……辛いなぁ…春香ちゃん、まゆちゃん、ごめんなさい。
 「すごい…ですね……」
 「りょう…ちゃん?どうしてここに?」
 私はバストロンボーンを吹きながら流れていた涙を拭い去り舞台の袖から現れたりょうちゃんに尋ねた。たしかに先程授業に向かったはずなのに…どうしてここにいるの……
 「先生の体調不良で授業が休校になって…やることがなかったので…」
 りょうちゃんは私の質問に答えながら舞台にやってきて私の側に座った。
 「『夢海の景色』ですよね?すごかったです。もしよかったらここで聴かせてもらってもいいですか?もっと聴いていたいです」
 「うん…いいよ。聴いてて」
 私はりょうちゃんに答えて再びバストロンボーンを構えて息を吹き込む。泣きそうになるが必死に我慢しながら熱い感情を音に込めてバストロンボーンから放った。
 熱い想いが心から発生し、肺からバストロンボーンを通して外に放出される。近くで私の演奏を聴いてくれている愛しの人に届くように願いながら……私は精一杯演奏をした。
 「りっちゃん…さん……大丈夫ですか?」
 演奏が終わった後、泣き出してしまった私にりょうちゃんが心配そうな表情で尋ねる。
 「やっぱり…その曲辛いんですか?その…ちょっと楽器置いて落ち着きましょう」
 「心配かけちゃってごめんね…でも、大丈夫。ちょっとね。辛くなっただけだから本当に大丈夫だよ。うん。もう落ち着いた」
 「嘘つかないでください。辛いなら無理しないでくださいよ…」
 私がついた嘘を一瞬でりょうちゃんは見破って私に言った。嬉しかった。私のこと、りょうちゃんが見ていてくれて…でも…辛かった……今はそっとしておいて欲しい…お願いだから……それ以上優しくしないで……という私の感情まではりょうちゃんは見抜いてくれない。私のことを本当に心配してくれて、楽器スタンドにバストロンボーンを置いた私を舞台袖に連れて行き落ち着くまで側にいてくれた。その優しさはね…私を苦しめるだけ…なんだよ。。。
 心の中でりょうちゃんに訴えながら少しだけ落ち着いた私はりょうちゃんにお礼を言う。
 「辛いなら無理して吹かないでくださいね…本当に心配なんですから……」
 「うん。ありがとう…ごめんね。心配かけて…」
 私がりょうちゃんに言うとりょうちゃんは全然大丈夫ですよ。無理だけはしないでくださいね。と言ってくれた。その優しさが本当に辛い…ここでりょうちゃんが私を見捨ててくれたら楽だっただろう。だが、りょうちゃんは絶対にそんなことをしてくれない。だから、私は…りょうちゃんを……この人を……好きになってしまったのだろう。
 「りょうちゃん、さっきの演奏、聴いててどう思った?」
 「すごかったです。りっちゃんさんの演奏、いつもすごいなぁって思いながら聴いているんですけど…なんていうか、今日の演奏は次元が違った気がします。もしかしたら失礼な言い方になってしまうかもしれないですけど…いつも、りっちゃんさんの音は機械的な完璧なんです。今日はそれに加えて感情的表情がはっきりしている気がしました。なんとなく…ですけど…ごめんなさい。りっちゃんさんの演奏、凄すぎて上手く言葉で言えないです」
 りょうちゃん……それはね……りょうちゃんのおかげなんだよ……感情が込められなくなってた私の音に……感情を与えてくれたのは……………りょうちゃんなんだよ。
 「そっか…ありがとう。さっきね。感情を込めて吹いたの。私の想いを詰め込んで吹いたの。私が勝手に愛している人に向けての想いを全部込めたの…」
 「そうなんですね…すごいです…届くといいですね。その想い……」
 届かない…いや、届かなかったよ……大好きな君に…私の想いは………これで……よかった。私の想いは…ここで消してしまおう………







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