お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

どっちの方がいいの?





 「うお…めっちゃ美味しそう……」
 アパートの部屋に入ってテーブルの上に並べられた料理を見て僕は呟いた。テーブルの上には唐揚げに濃い目の味付けがされていそうな焼肉、ポテトサラダ、そして沢山のお刺身と酢飯、海苔が並べられていた。
 「今日の夜ご飯は手巻き寿司と唐揚げです。あ、焼肉は手巻き寿司に巻くも良しそのまま食べるも良しだよ。私のおすすめは手巻き寿司に巻くことかな、焼肉の上にマヨネーズかけて巻くと美味しさ倍増だよ」
 「やった。りっちゃんが手巻き寿司する時に作ってくれる焼肉大好きなんだよね」
 「そう言ってくれると思ってちゃんと多めに焼いておいたよ」
 「りっちゃん最高」
 テーブルに並べられた料理を見て春香は既に満足そうな表情をしていた。
 「お刺身は私のバイト先の女将さんが提供してくれためちゃくちゃ美味しいやつだよ」
 「りっちゃん本当に最高」
 春香がめちゃくちゃハイテンションでりっちゃんさんに言うとりっちゃんさんは喜んでもらえてよかった。と言い、さっそく食べよう。と言うことになったのでさっそく4人でテーブルを囲んで座った。いつもなら席の取り合いになるが、今日はまゆ先輩が春香に僕の隣の席を譲ってくれた。まゆ先輩はりっちゃんさんの横に座り春香は僕の横に座る。そしてさっそくまゆ先輩とりっちゃんさんが用意してくれた夕食をいただく。
 「どれから食べるか迷うなぁ…ねぇ、りょうちゃん。私、決めれないからさ、私の分の手巻き寿司作ってくれない?」
 「え…自分の好きなやつ巻いた方がいいんじゃない?」
 「いいから、お任せで一つ作って。もしかして作るの嫌?」
 「あ…嫌じゃないよ。わかった。作るからちょっと待ってて」
 「ありがとう。りょうちゃん大好き」
 春香に悲しそうな表情をされたら断ることなんてできない。春香のお願いを受け入れたら春香は悲しそうな表情が幸せそうな表情に変わった。感情と表情が完全に一致しているところが本当にかわいいなぁ。
 「はい。できたよ」
 「ありがとう。お返しに私もりょうちゃんのやつ作ってあげたからさ…交換ね…」
 春香はそう言い口を開いた。食べさせて…と言うことだろう。僕は軽く醤油を付けてから春香に手巻き寿司を食べさせてあげた。春香は美味しい。と幸せそうな表情をして今度は僕に食べさせてくれた。やばい…めちゃくちゃ美味しい。春香はりっちゃんさんがおすすめしてくれた焼肉手巻き寿司を食べさせてくれたのだが、濃い目の焼肉にマヨネーズ、酢飯がすごくいい感じに混ざり合っていてめちゃくちゃ美味しい。
 え…めっちゃ美味しい。と僕が呟くとりっちゃんさんが誇らしげな表情をしていた。
 「りょうちゃん…まゆも選べないなぁ…」
 頬を膨らませてまゆ先輩が僕に言う。やばいかわいい…
 「わかった。まゆの分作ってあげるからまゆも僕の分作ってくれる?」
 「うん!」
 まゆ先輩はめっちゃ嬉しそうな表情で勢いよく頷いた。僕はまゆ先輩の手巻き寿司を作りまゆ先輩に食べさせてあげてまゆ先輩が作ってくれた手巻き寿司を食べさせてもらう。こうして僕と春香とまゆ先輩が幸せそうにしてるとりっちゃんさんはニヤニヤして僕たちを見ていた。なんか恥ずかしいな…
 「この唐揚げめっちゃ美味しいね…」
 「えへへ、そうでしょう。まゆが作ったんだよ。もっと食べて、ほら、まゆが食べさせてあげる」
 僕が唐揚げを食べて呟くとまゆ先輩は嬉しそうに言い、唐揚げをもう一つ僕に食べさせてくれた。それを見ていた春香は頬を膨らませる。
 「私が作ってあげた唐揚げよりもまゆちゃんが作った唐揚げの方が美味しいの?」
 春香はちょっと拗ねた感じで僕に言う。僕は慌ててそんなことないよ。と春香に言うと今度はまゆ先輩が頬を膨らませた。
 「まゆが作った唐揚げより春香ちゃんが作った唐揚げの方が美味しいんだ…」
 まゆ先輩が拗ねた感じで言うので僕は慌てふためく。りっちゃんさんはりょうちゃん大変だなぁ…と言うような目線を僕に向けてきた。お願いです。助け舟出してください…と目でりっちゃんさんに訴えるがりっちゃんさんは知らなーいと言うような表情をした。どうしよう…
 「えっとさ…春香が作ってくれる唐揚げもまゆが作ってくれる唐揚げもどっちも同じくらい大好きだよ。ほら、春香の唐揚げとまゆの唐揚げ、結構違う感じじゃん。だから比べられないよ。どっちの唐揚げも大好き。そうだ。今度さ、2人の唐揚げどっちも食べたいなぁ…もしよかったら今度作ってよ」
 僕がそう言うと春香とまゆ先輩はえへへ…じゃあ、今度作ってあげるね。と満足そうな表情で答えてくれた。なんとか2人の機嫌を損ねずに済んだ。どちらの唐揚げも大好きというのは本当のことなので春香とまゆ先輩、両方の唐揚げをいっぺんに食べられる機会ができてすごく嬉しい。春香とまゆ先輩も嬉しそうな表情なので一安心だ。と僕が思っているとりっちゃんさんは大変だなぁ…という目線をずっと向けてきていたのだった。






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