お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

3人の幸せ






 「春香、あの拓磨って人のことだけど春香はどう考えてる?これに関しては春香の意思を尊重したいし、被害に遭った春香が決めるべきだと思う」
 僕が春香に尋ねるとまゆ先輩も横でうんうん。と頷いていた。
 「私は…できれば大事にはしたくなかったけどりょうちゃんとまゆちゃんを傷つけられてもう許せない…とりあえず今回の件は部活の顧問の先生に相談して先生から他の先生に根回ししてもらえるように頼んでみることにするよ。もしかしたら2人にも聞き取りとかあるかもしれないけどその時は正直にあったことを伝えて欲しい」
 「わかった」
 「うん。安心した。春香ちゃん優しいからまだ大事にしたくないと言うと思ってたから心配だったんだ」
 「被害に遭うのが私だけならそうしてたと思うけどりょうちゃんとまゆちゃんに被害が出るなら私は容赦しないよ」
 春香にそう言われて僕とまゆ先輩は嬉しかった。普段大人しい春香が僕たちのことを心配して動いてくれることが嬉しかったのだ。
 「そっか、じゃあ、そのことは春香に任せるね。何か協力できることがあったら遠慮なく言ってね」
 「まゆにもできることあれば何でも手伝うからね」
 「うん。2人ともありがとう」
 春香はそう言って安心したような表情を見せる。春香の表情を見て僕もまゆ先輩も安心するのだった。
 「春香、まゆ、今回の件は僕が2人の気持ちを考えないで2人の想いを蔑ろにしていたから起こった出来事だと思う…本当にごめんなさい」
 「……りょうちゃちゃんさ、あいつに言われたこと気にしてる?」
 僕の言葉を聞いたまゆ先輩が少し苛ついているような声で僕に尋ねた。僕が頷くと、りょうちゃんのバカ…とほっぺたを割と思いっきり捻られた。
 「あいつがまゆと春香ちゃんの何を分かってるって言うの?忘れなさい。まゆも春香ちゃんも告白の返事が遅くなるくらいで怒ったりしないし、どっちが選ばれたって妬んだりしない。あんなやつの言うことなんて気にして本当にバカ…」
 「まゆちゃんの言う通りだよ」
 春香はまゆ先輩の言うことに同意しながらまゆ先輩が捻っていた方とは反対のほっぺたを捻る。痛いです…
 「とにかく、りょうちゃんがどっちを選んでもまゆと春香ちゃんはりょうちゃんを責めたりしない。選ばれた方とりょうちゃんが幸せになるように願う。少なくともまゆはそうする。だからゆっくりでいいから焦らず決めてよね」
 「私も…だよ。少しは辛いと思うけど選ばれなかったからって不幸にはならない。りょうちゃんとまゆちゃんを応援するって一応決めてるから…」
 2人の言葉を聞いて少しだけ楽になった気がした。今日のような状況を作ってしまい、まゆ先輩と春香、どちらかを不幸にしてしまう選択肢を作ってしまった責任を感じていたが、まゆ先輩の春香はそんなこと気にしてない様子だった。
 「りょうちゃん、そんなに気にしてるなら一つだけまゆの我儘聞いてくれない?」
 「え、僕にできることならなんだって聞くよ」
 「じゃあさ、りょうちゃんが答えを出すまででいいからさ、まゆと春香ちゃん、どっちも幸せにさせて」
 「まゆちゃん、それ最高」
 春香はまゆ先輩の言葉にあっさり賛成した。2人がそれでいいなら僕は答えを出すまで絶対に2人を幸せにしてあげたい。
 「そんなこと、言われなくてもそのつもりだよ。今は、春香もまゆ先輩も2人とも同じくらい大好きなんだ。だから、答えを出すまでは絶対に春香もまゆ先輩も幸せにする。大好きな2人に絶対に幸せになってほしい」
 僕がそう言うと春香とまゆ先輩は思いっきり僕に抱きついてきた。2人の顔を見ると2人ともすごく幸せそうな表情だった。
 「「りょうちゃん、ありがとう」」
 春香とまゆ先輩は同時に僕に言い僕をギュッと抱きしめる。僕も2人にありがとう。と言い2人をギュッと抱きしめた。
 「こんなに幸せならもう答えなんて出さなくていいのに…」
 春香がボソッと呟いたが、そんな不誠実なことはできない。僕はいずれ春香かまゆ先輩か選ばなければならない。せめてそれまでの間…春香とまゆ先輩、どちらも幸せでいてほしい。どちらも幸せにしてあげたい。
 「春香、まゆ、今、幸せ?」
 「「うん!」」
 僕の質問に2人は幸せそうな表情で頷いた。
 「「りょうちゃんは、今、幸せ?」」
 春香とまゆ先輩は同時に僕に尋ねる。僕は春香とまゆ先輩を思いっきり抱きしめて幸せだよ。と返事をする。きっと、僕も春香とまゆ先輩みたいな表情をしているのだろう。
 いずれ、壊れてしまう関係なのかもしれない。だが、僕がどちらかを選ぶ覚悟ができるまでは2人にはこの幸せを感じていてほしい。答えが出るまでは絶対に2人を幸せにしてあげたいと思うのだった。







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