お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

先輩の家にお泊まり(ドライブ)






 「ねえ、りょうちゃん、少しだけドライブでもしない?」
 プリンを食べ終えた後、僕の真横に座っていたまゆ先輩が僕に言う。僕はまゆ先輩の提案を了承して、僕とまゆ先輩はまゆ先輩の家を出てまゆ先輩の車に乗る。
 「りょうちゃん、手…」
 まゆ先輩にそう言われて僕はまゆ先輩の片手を手に取り手を繋いだ。危ないからやめないといけないと思うけど、まゆ先輩に言われると逆らえない…曲がったりする時はちゃんと手を離すからいいかな…とも思うけどやめた方がいいのは事実だ。

 まゆ先輩が車のアクセルを踏むと、車が動き始める。まゆ先輩の家は海に近い場所にあり、外道はあまり広くなく、1車線の道が続いている。外灯も少なく、かなり暗い。そんな道を走りながらまゆ先輩は海が見える海沿いの道を走った。夜の海は暗く、どこに海があるのかよくわからない。波の音だけがそこに海があることを証明していた。
 「夜の海って怖いよね…まゆ、明るい海は好きだけど暗い海はあまり好きじゃないんだ。でも、こうやってりょうちゃんと手を繋いでいると怖くないし暗い海も悪くはないな。って思っちゃうんだよね」
 そう言われて僕はついまゆ先輩の方を見てしまった。まゆ先輩の横顔を見て一瞬ドキッとしてしまい、まゆ先輩の手と繋がれていた手に少し力が入ってしまった。
 「ねえ、りょうちゃん、せっかくドライブするんだし飲み物買っていいかな?」
 まゆ先輩は僕に確認を取り、車で少し走った場所にあるハンバーガーショップに入る。ドライブスルーの注文口に入り、注文を尋ねられた。
 「りょうちゃんは何飲む?」
 「あ、えっと、オレンジジュースで」
 「じゃあ、まゆもオレンジジュースにしよう。ポテトも頼んでいい?」
 まゆ先輩にうん。と答えるとまゆ先輩はオレンジジュース2つとポテトを1つ注文した。そして、お会計を済ませて商品を受け取る。僕がお金を出そうとしたが、お会計はまゆ先輩しかできない為、まゆ先輩がお金を受け取ってくれなかったので御馳走になることにした。今日の夜ご飯も含めて今度何かお礼しようと僕は思った。
 まゆ先輩は受け取ったオレンジジュースを1つ僕に渡して、もう一つは運転席サイドにあるドリンクホルダーに入れた。そしてポテトが入った袋を僕に渡して車を走らせる。
 「ねえ、りょうちゃん、まゆ、ポテト食べたいんだけど運転中で食べれないから食べさせて…」
 しばらく走っているとまゆ先輩がわざとらしく言う。ポテト頼んだ理由はこれか…僕は袋からポテトを取り出してまゆ先輩の手と繋がっていない方の手でまゆ先輩の口元にポテトを運ぶ。するとまゆ先輩はパクリとポテトを口にした。
 「ありがとう。でももっと食べたいなぁ…それにちょっと長いやつ食べにくいから短めのやつでお願い」
 僕はまゆ先輩の要望に従い短めのポテトを手に持ちまゆ先輩の口元に運ぶとまゆ先輩はパクリとポテトを口にした。その際に、ポテトが短かった為、まゆ先輩の唇が僕の指に触れてしまった。まゆ先輩はわざとらしくごめんね。というが、まゆ先輩の顔が本当に幸せそうなので文句を言えなかった。
 その後、僕はしばらくまゆ先輩にポテトを食べさせ続けた。本当に幸せそうな表情をしているまゆ先輩を愛おしく思いながら次々とポテトを与えていく。やがて、信号に捕まり車が止まると今度はまゆ先輩が僕にポテトを食べさせてくれた。そんなやり取りをしていたらあっという間にポテトはなくなってしまった。
 「あっという間になくなっちゃったね…」
 赤信号で車を停止させたまゆ先輩が寂しそうに言う。
 「りょうちゃん、最後の一つあげるね」
 「あれ、まだ残ってたんですか?」
 そう言い、僕がまゆ先輩の方を向いた瞬間、まゆ先輩の唇と僕の唇がぶつかった。僕が離れないようにまゆ先輩は片手で僕の頭を押さえてその場に固定させていた。十秒くらい経過してまゆ先輩の唇が僕の唇から離れた。
 「塩辛いもの食べたら甘いものも食べないとね。このデザートは嫌いだった?」
 まゆ先輩が誘惑するような表情で僕に尋ねる。僕がドキドキしながら嫌いじゃないけど…と答えるとまゆ先輩は嬉しそうにじゃあ、また今度食べさせてあげるね。と言うのだった。
 まゆ先輩みたいなかわいい女性にこんなことされて僕の心は少しだけまゆ先輩に揺らいでしまっていると思う。
 「そろそろ眠くなってきたし帰ろうか…」
 僕の唇から離れながらまゆ先輩が僕に言う。急に唇を奪われてドキドキが止まらなかった僕は、まゆ先輩の顔を直視できなかったため正面の景色を見つめながらうん。と答えるのだった。
 ふと、車に表示されていた時間を見るともうすぐ23時だった。次の信号でまゆ先輩はUターンをして帰路に着く。車をUターンさせてあとはしばらく直進するだけだったので、まゆ先輩は再び僕の手を取るが、まゆ先輩の手はとても温かかった。おそらくだが、今、まゆ先輩もこの温もりと同じものを感じているだろう…
 この温もりを二人が味わっているとあっという間にまゆ先輩の家に到着したので僕とまゆ先輩は手を離すが、二人の手に温もりはしばらくの間残り続けるのだった。









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