神龍に育てられた世間知らずは王都で暮らすそうです

霧雨 紫

始まりは唐突に

(死ぬのか...)


 そう考えた男の目の前には電車がすぐそこまで迫っていた。


 駅のホームには多くの人がいたがみんながこちらを見ている、それはそうだ人の死なんてなかなか見るもんではない。


 俺だって死にたくはない、だが誰かに押され、たまたま転落したのだ。


 誰も救いの手を差し伸べようとはしない、いいや、できないだけだ...、そんな事は分かりきっていることなのだがそれでも口にする。


「はは...見せもんじゃねえんだ、ばーか」


 このくだらない現実に乾いた笑いと掠れた声だけを残して、男は電車に轢かれた。


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「お...て...くださ...、おきて...さい、おきてください...」


 誰かが俺を呼んでいる。


 きれいな声だ。


「ん...、ここは、夢なのか...?」


 起き上がり、周りを見回す。


 そこは何も無い空っぽな空間だった、だが目の前にはこの虚無の空間を埋めるかのような大きな2つのモノが...。


「あの私の顔はこっちですよ!」


 大きなモノのうえにはとても美しく整った顔があった、ただ少し頬が赤みを帯びている。


「あっ...す、すみません!」


「別に気にしてなんかいませんよ」


 ぷいっと顔をそらす女性の仕草は子供っぽくも可愛らしかった、正直萌えた。


「それにしてもあなたは、驚かないのですね...」


「夢に驚くなんてことはしませんよ...まあそれにしても結構リアルな夢ですけどね」


 すると女性は急に真面目な顔になった。


「これは現実です、そしてあなたは電車に轢かれたことにより地球では死にました」


「...し、しんだ...やっぱりあれは、現実だったのか...だ、だとしたらここは天国なのか!?地獄なのか?!?」


「いいえ、ここは輪廻の狭間です、簡単に説明しますと、あなたが死んでしまうことはイレギュラーだったのです、このまま死んでしまうのは流石によろしくないと私達、神が判断をし、新たな生命を授けることにしました」


「転生...ですか、そしてあなたが言った私達、神ということは...」


「はい、遅れましたが私は輪廻の神アライネです」


 通りでこんな美しいわけだ...男は納得した、そして疑問にも思った。


「一ついいですか?」


「なんでも聞いてください」


 そう言うと女神は優しく微笑んだ。


 な、なんでもだと?!では3サイz...目が鋭く光った気がした。


「で、では、なぜ転生をすぐにさせなかったんですか?わざわざ俺に話した意味を教えてください」


「おお、鋭い方ですね、まあちゃんと説明するつもりだったのでいいでしょう、何故話したのかというと、それはあなたに異世界の住民になって欲しいのです、もちろんあちらの世界は普通の人では生きていくのは難しいと思うので、私達から加護を与え、そして一つだけ願いを叶えましょう、もともとこちらの不手際だったのですからね...」


 まさか自分が異世界転生に巻き込まれるだなんて思ってもいなかった、だがこんな機会を逃すほど愚かではない。


「では、成長の限界がなく、丈夫な体をください!」


「なるほど、面白い考えを持つ人ですね、では決まりですね、そして魔法の才、ステータス成長速度の上昇、武の才、自然治癒を一部の神たちからあなたに送ります」


 才ということは努力次第ならばどうにでもなるということだ、望みの体と相性がいい。


「ではあちらの世界で目が覚めたらステータスと唱えてみてくださいね、一応記憶に関しては元地球人でここで私と話したというおおまかな記憶のみ残しておきます、言語についても問題はないので心配なさらず」


 記憶は精神的に良くないらしいが、最低限の転生自覚だけは残してくれるようだ、そして言語は転生するにあたってあちらの言語をインプットしてくれるらしい。


「何から何までありがとうございます!女神アライネ様、最後に3サイz」


「もう!あなたは!異世界にもう飛ばしますからね!では、よい転生を!」


 顔を真っ赤にしてこちらに手を向けた。


「ちょ、まっ」


 そして俺は輝く光に呑み込まれていった。


(ああ、アライヤ様かわいかっ...た)


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 光が収まるとなんと......漆黒の鱗を持った巨大な龍が巨大な口を開け目の前にいた。


「ぴゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!あうあー!」


 自分の口からは言語も悲鳴といえるものも出なかった。


 自分の姿を見ると完全に赤ん坊だった。


 終わった...女神様、失礼なことをしてごめんなさい...せっかく頂いた体だったのに。


 俺は目を閉じ行く末をこの龍に委ねた...。



























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