神龍に育てられた世間知らずは王都で暮らすそうです

霧雨 紫

龍の息子になりました

 巨大な龍は未だジーっとこちらを覗き込んでいた。


 今の俺はアライヤ様の慈悲なのか木製のゆりかごの中で温かい布でくるまれている、だが無防備なのは違いない。


「あ...うあ(終わった)」


「ふむ、あの女神が言ったのはこの人の子を育てればよいのか...」


「う?(え?)」


 え?俺食べられずに済むのか!


「普通の人間なら我の姿を見ると泣きわめいて失禁するものだが、お前は肝が座っているのだな」


 えへへ、褒められてしまった、ただあまりのことに思考麻痺しただけなんだけどな...。


 というか育てる?喰うの間違いじゃないのか?


 すると、いきなり俺のゆりかごが宙に浮いた。


「うや!?ああう!(なんだ!魔法か!?」


 まさかこんなにも早く魔法に出会えるとは、出会い方は微妙だけどな...。


「人の子よ、我の言葉がわかっているかは知らぬが今日からはわれがお前の親だ、だから我の家まで行くぞ」


 親?おや?んんん!?まさかアライヤ様が仕組んだのか?


 なるほど、話が繋がったぞ!


 ただこの龍がなぜアライヤ様と会話ができたんだ?そんなに神って軽いものなのだろうか。


「お前にかけたのは浮遊魔法だ、まあ我の言葉を理解できるようになれば色々と教えてやろう」


 随分と独り言が多い龍だな...俺が言語を理解してることはアライヤ様は伝えてないのか、まあこれは言わない方がいいんだろうな...。


 そうして龍は俺を魔法で操作しながら更に森の奥に進む。


「人の子と言うのはこんなにもおとなしいのか?不思議な子だ」


 いや、この浮遊魔法とゆりかごの揺れ方がベストマッチしすぎて...寝そうだ


 低く威圧感のある声も少し心地が、い…い。


「む。寝てしまったのか、まあ寝る子は育つと人間たちの中で言い伝えとしてあったからな、ふふ、よく寝るんだぞ、ウル」


 ウ...ル...、俺の...な、ま...えか。


 そうして俺の意識は睡魔に飲み込まれた。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 漆黒の龍は嬉しかった、なぜだろうかただの人の子を育てるだけなのにすごく楽しみで、ご機嫌だった。


 軽快であるが重量感を感じる足取りで家に向かう、例えるなら小さな少年が新しいゲームをもらったときのように。


 20分ほど歩くと里のようなものが見えてきた、それこそがこの龍が住む、【神龍の里】だった。


 そして里に踏み込んだその時だった。


「ニルヴァーナ様!」


 漆黒の龍に声をかけたのは赤い鱗を持った2回りほど小さい龍だった、だがそれでも巨大なことには変わりない。


「どこに言ってたんですか!貴方様が龍議会を抜け出すなんて何してるんですか!」


 龍議会とは稀に様々な種類の龍の長が集まり今後のことを話す大事なものだった。


 そしてニルヴァーナと言われる漆黒の龍はたじろぎながらも威厳を保ちながら答えた。


「すまぬ、トイレだ!」


「......じゃあそのゆりかごはなんですか!」


 ジーッとニルヴァーナの隣に浮いているゆりかを見た。


「う、いやぁ、じ、実はな...」


 そしてニルヴァーナはさっきあったありのままのことを話した。


 すると赤の龍は驚きつつも尋ねる。


「あ、あの気難しいニルヴァーナ様が人間の子を育てるなんてことがありえますか...?」


「むむ、失礼な、我は本当にウルを気に入ったのだ、よく見てみろ、賢そうな顔をしておる、我の言葉が分かっているような気もする」


 ニルヴァーナはそう言って寝ている赤ん坊、ウルを優しく傷つけないように爪の甲で頭を撫でた。


「そんな、赤ん坊が言葉を理解するはずがないでしょう、というかもう名前も付けているとは...」


「まあ、そうだろうな...」


「それにしてもあの森でいきなり空から落とすなんてアライヤ様は何を考えているんでかね、もしニルヴァーナ様がいなかったら...」


 これに関しては同意見だった、アライヤ様に教えてもらってはいたものの赤ん坊を落とすなんて...、しかも不思議なことに赤ん坊は生まれたばかりの状態ではなく少し育っていた、まあこれらは考えてもしょうがないのだろう。




「とりあえず、この子はこの里の長である神龍ニルヴァーナが育てるのだ!」


「貴方様の補佐でもある私も手伝いますからね、貴方様に任せてたら赤ん坊が危ないですから...」


 こうしてニルヴァーナの危なげな子育てが始まろうとしていた。











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