魔王と歩む世界

太津川緑郎

十九話 栗拾い


「なぁ? なんで実力派の第二魔法軍の魔法師がこんなところで栗拾いしてんだ?」

レグルスはトングでオータム栗を拾い、背中に背負った籠に放り込んでいた。

「お前魔法師よりも、栗拾いのバイトの方が向いてるんじゃないか?」

レグルスの籠は栗でいっぱいになっていた。

「なんでこんなところで栗拾いしてんだよ!」

「そりゃ依頼なんだから仕方がないだろ、これも立派な魔法師の仕事だ」

この国の制度の一つとして、以来という制度がある。
それは国民が解決してほしいことを依頼し、それを無償で魔法師が解決するという制度だ。

だが第一、第二魔法軍は戦闘に長けている軍のため、モンスター討伐の依頼がほとんどだ。
だが稀にこういう依頼が混ざっていることがある。
新人はそういう類の依頼をこなすところからスタートする。

ちなみにこの依頼は、この木の持ち主が体調を崩してしまい、収穫できなくなってしまった。
だがそのまま放置していると盗まれる可能性があるため、依頼したそうだ。

「違う! 俺はもっとこう、強いモンスターを倒したいんだ! 星五モンスターとか!」

「頭悪いのか?」

星五モンスターは全体の一パーセントにも満たない稀な魔物なのだ。
大昔にルーメニオン・アーク様が倒した魔物は、星五モンスターである。

「知ってるか? 星五モンスターってのは滅多に出会えるもんじゃないんだよ」

先日遭遇した、ダークグリフォンでさえ星四止まりだ。

「でも話では、ここの近くに魔王の根城があるらしいぜ、しかもその魔王は星五モンスターなんだと」

「へっ、へーそうなんだ!」

知っている。
なんなら知り合いなくらいだ。
もしその魔王の討伐が依頼されれば、僕は倒さなきゃいけない。
心に迷いが生じ始めていた。

「これで終わりだな!」

その籠を依頼主に届けると、笑顔で喜んでくれた。 レグルスも少し照れ臭そうにしていた。

「ぜひ少し持って帰ってください」

体調を崩しているにもかかわらず、ベッドから起き上がり、収穫したてのオータム栗を二つの袋に入れて手渡してくれた。

「そんなお礼なんて⋯⋯ これが仕事ですから」

「いえいえ、それでもお礼はしないとね」

時折見せる優しい笑顔は、その行いの全てが善意であることを物語っていた。

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