魔王と歩む世界

太津川緑郎

十六話 生還


ラージホースの駅馬車に乗っている最中、ある答えを探していた。
あのグリフォンと戦って無傷で帰ってきた、理由と、言い訳だ。
駅馬車の揺れが心地よいが、今はそんなことはどっちでもいいことだ。

時期に着いてしまう。
それまでの短い時間内で脳をフル回転させる、そうすると、一つの疑問にぶつかった。

言い訳なんているのか?
僕は、第二連合軍の危機を救った、言わば英雄だ。
そんな果敢な戦士に疑問など抱くだろうか? 否普通なら、笑顔で迎えてくれるはず。

そう信じて馬車に身を預ける。
先ほどどっちでも言った、馬車の揺れさえ今は緊張をほぐす材料だった。


訪れるなど願っていた時間が、ついに訪れてしまう。
第二連合軍の宿舎近くの駅、お金を払うても、馬車から降りる時の足元も酷く震えていた。

それもあのルシア軍隊長を守る為とはいえ、突き飛ばしたのだ。
相当の懲罰は覚悟の上だった。

「ふ〜う」

一つ大きく深呼吸をした、いざ尋常に!

ゆっくり扉を開ける、この時間はおそらく自由時間だろう。
それにもかかわらず、誰もメインホールにも、食堂にもいない。

「まさか! あの吹雪の餌食に!」

もしそうだとしたら、生き残ったのは作戦に行っていない先輩方と僕だけってことになる。

「そんな⋯⋯」

膝から崩れ落ちてしまう。
僕が命を賭してまで助けようとした仲間が、自然の驚異の餌食になってしまった。

そんなやり場のない怒りと悲しみに浸っていると、入り口の方から、大勢の足音と呼吸音が絶えなく聞こえてくる。

入り口まで何も考えずに走る、生きていてくらという願いだけを胸に秘め。

「えっ!?」

「えっ!?」

そこには何故か雪にまみれた、討伐隊の姿があった。

「なんで生きてるの?」

ルシア軍隊長が寒さと恐怖で震えながら、力を振り絞り声を発した。

「ルシア軍隊長こそ、無事で良かったです」

僕含め討伐隊のメンバー全員の目に涙が浮かんでいた。
その涙の意味は各々だが、心が一つになったような気がした。

「まぁ、ここにいる理由は、後日聞くとして、まずはこの勇敢なミノルに拍手を」

「いえ、僕は時間稼ぎしか出来なかったですから」

「その時間稼ぎの成果が、これだけの命を救っなのだ。それは素晴らしいことだと思う」

段々と皆んなの表情に笑顔が戻ってくる。
その安堵のせいなのか涙が止まらない。

「もう泣くなよ! 皆んな無事じゃないか!」

「そういうルシア軍隊長だって、号泣してるじゃないですか!」

この生還劇の最優秀選手は、敵のボスである魔王だということを僕以外は誰も知らない。

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