魔王と歩む世界
十五話 再開
微かに開けた目に映るのは、如何にも凶暴そうで、尚且つ推定十メートル以上ある鎌のようなものを片手に、玉座に腰を下ろしている。
「⋯⋯」
何も言い出せなかった、最後に会って以来何ヶ月ぶりの再会だのいうのに、魔王は僕を蔑んだ目で見ているのがわかったから。
「おい! もう死んだのか?」
急所を的確に、尚且つ抉るような質問に答える勇気も気力もなかった。
だが最後の力を振り絞り、不満をぶつけることにした。
「魔法師になったんです、それで今日初任務で、それで、グリフォンが急に乱入してきたんです。酷くないですか? 第一ステージに、後半に出てくるはずのボスが、普通出てきます? 出てこないですよ! 完全に僕の設定知ってての登場ですよ!」
今抱いていた不満を、おそらくラスボスであろう魔王に包み隠さずぶつけた。
「なんか、大変だったんだな ⋯⋯」
ついに、ラスボスにまで同情させることに成功したが、今はそんなことどうでもよかった。
「まだあの街に戻るか?」
「ちょっとここに居させてください!」
最初に来た時も思ったが、住み心地の良さそうな物件だ。
家具は異様なほど大きいが、それも悪くない。
ソファーに腰掛け、少し目を閉じた。
「おい! 怠けるのか!」
「そうさせてもらいます!」
少しの間、ここで怠けることにした。
ラスボスの根城で。
ソファーでゴロゴロしたり、甲冑を着てみたり、ご馳走を振舞ってもらったり。
それから、どれくらいの時間が経っただろう、この城には時計というものがなく、外もずっと真っ暗なままだ。
「そろそろ帰ります ⋯⋯」
「そっ、そうか! 辛くなったらいつでも来るんだぞ!」
その優しい言葉に、目頭が熱くなる。
そうだ、辛くなったら自殺しよう。
「では!」
魔王が手を天に向かって掲げると、僕の周りに魔法陣が描かれる。
眩い光が全身を包む。目が眩んで辺りが見えなかったが、徐々に目も回復し景色の全貌が明らかになる。
「帰ってきてしまった!」
そこは、昔転移した街に戻ってきた。ラージホースに乗るお金もないし、第二連合軍の宿舎の位置も分からない。
「あの⋯⋯あっ!」
あの時の厳ついが、笑顔の眩しい男性に偶然出くわしたのだ。
あの時の笑顔はそのままだったが、服装が前に比べて、裕福な服装になっていた。
「よぉ兄ちゃん! 実はあの後ギャンブルで大成功してな! 兄ちゃんがきっとキューピットだったんだ!これほんのお礼だ!」
そういい革財布を取り出すと、札束をごそっと出し、持っていけと言わんばかりに、ポケットにコソッといれた。
「じゃあな兄ちゃん!」
眩しい笑顔を振りまきながら、去っていった。
「これで帰れる!」
帰りの交通費をゲットすることができた。
この時しみじみおもった。
「人との出会いって、大切なんだな」
その言葉をボソッと声に出すと、丁度目の前をラージホースが通っていた。
手を挙げると止まり、これで無事に帰れるだろう。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント