魔王と歩む世界

太津川緑郎

十三話 初任務



「全員集まったな? それではモンスターレベル三、グレーネードマンモスの討伐に行く! 準備はいいか?」

「はい!」

第二魔法軍全員の決意の声が、室外なのにもかかわらず、かなり響き渡る。

今回の討伐内容は、王都から北へと進むと、年中雪原の地帯に突入するらしい。
そこで栽培している、スノーキャベツは、噛めば噛むほど甘みが出る、最高級の食材だ。

だが、その雪原にグレネードマンマスという、体内で爆弾を生成し、鼻から放出することのできるモンスターが、栽培地域を荒らしているらしく、農家の方が、非常に困っているみたいだ。

今回の任務、いわゆる初任務は、そのグレネードマンモスの討伐だ。

討伐隊は、今回の魔法師試験で合格したものを中心とした、二十七名と、 それに加え、ルシア軍隊長、シナリー副軍隊長の計二十九名の軍隊が組まれた。

「よし! では出発だ!」

雪原の近くまでは、ラージホースに乗り向かうが、雪原近くになると、寒さのせいか、ラージホースが暴れてしまうため、そこからは徒歩で行くことになる。

一頭のラージホースに、六名ほど乗り、計四頭のラージホースで向かう。

「どっちがグレネードマンモス倒すか、勝負だかんな!」

「これは軍での討伐だよ」

「だが止めを刺すのは、この軍の誰かだろ? それを競うんだよ!」

相変わらず暑く、鬱陶しい奴だ。こいつの熱で雪原の雪が溶けてしまわないか心配だ。

そんなくだらない話をしている間に、王都を出ていた。
ラージホースは時速、約四十キロの速さで走る。
体感的にも、車に乗っている時のような感じがする。

雪原まで、王都から七十キロ。
おおよそ、一時間強ほどで着く計算になる。
だが、雪原手前で降りるため、実際は一時間半ほどだろう。

リングを起動させ、魔法の欄を確認する。
その最下には、とっておきの技名が記されていた。

これも特質魔法の利点で、五大属性の技は新しく作らないが、(実際には、おおよそ発見され尽くしているといったほうが正しい)特質魔法に関しては、新たに発見される魔法が多い、だから自ずと各自で新しく編み出すしか他には方法はないのだ。

雪原は、雪が吹雪くため光が届きづらく、威力も激減する。
だが、容量は五万、これを使い果たすほどの敵は出てこないだろう。

「帰ったら、スノーキャベツの料理食べよ!」

同じ馬車に乗っている同期の、スターリー・シルトンが、明らかなフラグを建設した。

「おい! それ以上言うな! お前死ぬぞ!」

そこで馬車は止まった。
ここからは、雪原まで徒歩で行くことになる。

「じゃあ行くぞ!」

ルシア軍隊長が先頭に立ち、シナリー副軍隊長が、後ろに立ち、その間に挟まれるようにして、三人で九列を組み、雪原へ向かう。

「うぅ、寒っ」

各々がファイアーブレイドを発動させ、視界の確保と、防寒対策の一石二鳥の役割を担っている。

雪原を歩いていると、吹雪が襲ってくる。
ファイアーブレイドも発動しては、吹雪で消え、発動しては、吹雪で消えを繰り返し、容量が平均値の魔法師の容量は、半分を下回っていた。

最前列の僕は、後ろの魔法師よりも強い吹雪を受けている。
その位置を、糞食らえと思っていたが時後ろから爆発音が聞こえた後、雪の混じった、爆風が襲ってきた。

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