魔王と歩む世界

太津川緑郎

九話 感激



 走り続けて一時間、これも引きこもっていた事が災いした。
 早い人は十分ほどで走り終えたが、僕は制限時間の一時間を丸々使ってやっとゴールに辿り着いた。

 走り終えると、グラウンドに倒れこんでしまう、少し鍛え直さないといけないなと思っているとーー

「お前体力ないんだな」

 倒れこんだ僕を見下すかのごとく、真上から放たれた一言。
 レグルスにある程度の嫌悪感を抱いたのは間違いなかった。

「腹が膨れているんだ、僕も怒るときは怒る」

「何言ってんだ?」
  
 全く通じ合っていないようだ。
 これなら第四魔法軍に行くんだった。
 これほどまでに友を恋しいと思ったのは、十五年生きてきた中で二度目のことだった。

「走り終わったなら、早く帰って来んか!」

 これだけのペナルティを受けてもなお、ルシア軍隊長の怒りは収まっていないようだ。

 それからのこと、トイレや風呂、廊下の掃除をさせられ、気がつくと日が沈んでいた。

「今日のところは、これくらいで許してやろう。次からは、即刻退役してもらうから、そのつもりでいるように!」

 ルシアさんがその場を後にするや否や、皆が皆目に涙を浮かべ、抱き合っていた。
 僕とレグルスだけ、例外だった。

 その後、風呂、夜飯を終えた時には、皆体力を使い終えていた。
 当の僕も同じく、自室のベッドにダイブすると、秒で寝てしまっていた。

 翌日早朝、昨日早く寝たせいか時計を見てもまだ四時にもなっていなかった。
 水でも飲もうと洗面所に行く。
 洗面所についている鏡を見るたびに、何故こんなところにいるのか、何故自分だったのか、そう思ってしまう自分がいた。

  もう一度ベッドに戻ろうとしていたところ、轟音が鼓膜を撃ち抜いた。
 それは方向から察するに、グラウンドの方からだった。
 窓から覗くと、心が嫌悪で埋まる。
 あいつだレグルス、恐らく魔法の練習でもしていたのだろう。
 魔法の訓練は、今日からスタートのはずだ。

「あぁ〜 怒られてるよ」

 もう起きていたのか、ルシア軍隊長にこっ酷く怒られている。
 ちょっとスッキリしたのは、ここだけの話だ。


 今日こそはと、朝ご飯の時間、六時三十分より大分早い、六時ジャストに食堂に着いた。
 誰もいないだろうと思っていたが、先の端っこにうずくまるように座る男を発見した。

「何してんだよ」

「あ? なんでこんなに早いんだよ! お前は寝坊してこっ酷く怒られればいいんだ!」

「お前みたいに怒られないよ」

 少し面を食らったような、様子だった。
 まだあの時間なら、寝ていたのだろうと思っていたようだ。

「残念ながら、早起き主義でな」

 そう言い残すと少し口角を上げ、鼻で少し笑いながらその場を後にした。
 早起きなんて、数年ぶりのことだ気分が良かった。

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