魔王と歩む世界

太津川緑郎

八話 激怒


「お前たちは何を考えているんだ!」

第二魔法軍の軍隊長、ルシア・クラネスが激怒していた。
それは数時間前に遡るーー。

この宿舎の一階には、いつでも利用できるバイキングのような場所がある。
そこには色々な料理が無料で、尚且つ好きなだけ食べられるということで、宿舎に来てまだ数時間というのに、席の大部分は埋まっていた。

今回の魔法師試験は、受験者は三百人名程度で、合格者は二百五十名ほど、それを成績の良い順に九分割すると、大体二十七名が新たに魔法軍に加入した。

「隣いいか?」

大抵は友達と食っているが、もちろん知り合いなんていない。
唯一の知り合いのバーチェとは、第四魔法軍に行ってしまった。

「おう! ってお前!」

「僕のこと知っているのか?」

長く、艶のある黒い髪は顔と喋り声を聞かない限りは、女性と勘違いしてしまうほどだった。
椅子に座っている感じ、背はそこまで高くなく、全身黒のコートで隠れていた。

「お前! 容量が五万もあるらしいな! だが調子乗るなよ、容量が全てじゃないということ俺が教えてやる!」

「まず名前を教えてくれよ」

「レグルス・スターリーだ! 覚えとけ!」

怒号を飛ばし、席を去っていった。
なぜか嫌悪感を抱かれているようだ。

「マージュ牛のステーキにしよ」

そのことに対しての嫌悪感など空腹には及ばなかった。
それよりも今は空腹を満たすことで、頭が満たされていた。


そこまでは良かった。
誰もが卓に並ぶ料理に、誰もが夢中だった。
時間を忘れるほどに。

今考えると、その時の時刻午後三時。
メインホールに集まるのが、午後三時、完全に一致していた。
だが、ここにいる誰もがそんなこと頭の隅にもなかった。

それがあっての今だ、ルシア・クラネス。
この軍の軍隊長で、数少ない女性での軍隊長らしい。

「時間を守れない輩など、荷物をまとめて故郷にでも帰ってしまえ!」

余程時間に厳しいのか、ルシア軍隊長の後ろにいる先輩方も酷く怯えていた。

「お前らもそうだ! 何故こいつらに時間の忠告をしなかった! おい! シナリーお前副軍隊長だろ!」

「すみません! 今後こういう事の無いように精一杯指導していく所存です!」

すごく畏まった言い方だった。
軍隊長と副軍隊長では立場に、雲泥の差があるようだ。

「お前らはグラウンドを十周だ!」

宿舎に隣接したグラウンド、その規模は一周なんと、一キロメートルもあるらしい。

「返事は!」

「はい!」

魔王はここにもいた。

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