魔王と歩む世界

太津川緑郎

七話 受験者


王都スザンティスから、王城バルクーネまで徒歩三十分ほどで、バーチェは普通に歩いていたが、引きこもりの僕からしたら、フルマラソンを走るのと同等の辛さだった。


王城バルクーネ、王家バルクーネ家の根城とされており、儀式の時以外は立ち入ることすら禁じられている。

王城の玉座の間にて、配属の儀は執り行われるらしい。

「広いな!」

バーチェの言葉の通り、百畳はありそうな空間に、おおよそ数十人の受験者がいた。
そこには、ムキムキの男や、身長の高い男、綺麗な女性までいる。

各々が雑談をしていると、奥にある壇上にスポットライトが当たる。
光が纏まっているところに、豪勢な冠にマントという、イメージ通りの姿で王様が出てきた。

「え〜、我はバルクーネ・ダリスだ。諸君の配属の儀を心より楽しみにしていた。最近では近くの島に魔王の根城があることが判明した。国民に被害を与えるようなら、討伐せねばならない。だが魔法師になりたいという人材が不足している。何故なら命の危険が伴うからだ。だがここにいる人材は命を賭してでも、国民
の生活を守るために戦う、それが魔法師だ」

確かに、命を賭してでも魔法師になりたいという人は少ないのかもしれない。
僕も成り行きに流されなければ、建築士にでもなろうかと思っていたくらいだ。

「では、配属の儀を執り行う!」

その言葉と同時に、帽子で顔が隠れ、本を持った人が出てきた。

「今から、名前と合否と前者の場合の配属軍の発表をする! まず一番ルーディクス・マニエル!合格第七魔法軍所属とする」

こんな具合で、一人一人合否とそれに伴う配属場所が発表された。

「ミノル・ヒオカ! 合格!第二魔法軍配属!」

「バーチェ・ミーア合格! 第四魔法軍所属!」

殆どの受験者が合格していた、それは人材が不足しているのを物語っていた。
でも紆余曲折あったが、寝床と収入源は確保できた。
あとは帰るための情報集めくらいだ。
これに関しては、全く想像もつかない。

「お前第二魔法軍とかすげーな!」

「お前も頑張れよ?」

そこから、各軍の宿舎に移動した。
そこは、学校の部活などで見る宿舎ではなく、例えるなら高級なホテルといったほうがしっくりくる。

部屋は広く、部屋が五つほどあった。
その中には、フローリングもあれば、畳の部屋まであった。

「いやぁ〜広いな!」

持ち物を何も持っていない僕には、部屋が有り余ってしまった。

「魔王元気かな〜」

そんなくだらないことに、想いを馳せる昼下がりだった。

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