転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

53話

アリスを探してマントの棚に行くと、アリスがじっとマントを見ていた。

「アリス!防具決まったよ!マントどう?」

「んー 高い。いっそギルさんに頼む?素材持ち込みで。すぐには必要ないだろうし。薄手で保温性があればいいんだから」

「あーそれもそうかもね。ちなみに雨の日はみんなどうしてるの?」

「革製の雨具をつけてクエストしてるわ。でも休む人も多いの。だから雨季はお肉が減って高くなるのよ。やっぱりマントより先に雨具ね。まあそれはまた今度にしましょう。靴も買わなきゃなら早めにここでの買い物終わらせたいし。時期によっては安くもなるから。お会計して出ましょう?お肉のために!」

アリスは革製品に詳しいらしい。

会計場所に向かうと、防具磨きなどの手入れ道具が揃っていた。

「いらっしゃい。ガイツがお客を連れてくるとは珍しいな。新人か?」

カウンターに立っている男はまだ若く、20代半ばくらいだろうか?赤茶色の髪の

「ああ、カイトと言うんだ。よろしく頼む。」

「カイトです。よろしく。」

「おれはドリューだ、よろしくな。それで?その箱か?」

「はい。この防具一式ください。」

「はいよ。3万千ルーツね。一緒に手入れ道具もどうだ?ガイツの知り合いなら安くしとくよ?使い方はがいつに教わるといい。」

「買っとけ。道具の手入れは大切だからな。」

「じゃあお願いします。」

「はいよ。」

「占めて3万と1425ルーツな。」

「じゃあコレお会計。大銀貨3枚と銀貨1枚大銅貨5枚で。」

「んじゃ、銅貨7枚小銅貨5枚。会計して言うのもなんだがサイズは大丈夫か?」

「ええ。ぴったり。」

「ならよかった。物によっては魔道具になっていてフィットするものもあるが普通は人によって詰め物したりしなきゃだからな。それも値段のうちだ。なんか問題があればもってこい。修理できる状態なら製作者に頼んで修理してやる。胸当てに彫ってあるだろ?『ヒュー』それが製作者の名前だ。まだ20代で若く無名だがいい防具職人だ。だいたい似たようなところに製作者の名前が彫ってある。気に入って金があればまた買ってやってくれ。」

「わかりました。覚えておきます。色々教えてくれてありがとう。」

「どうってことない。また来い。じゃあな『夜明けの月』。」

軽く挨拶を交わし店を出る。
また違う路地に入り、北通りに向け歩き出す。どうやら宿へ向かう道らしい、その道すがら普段履きの革の編み靴を買い、「森の恵亭』へと戻ってきた。

「あらおかえりなさい…クエストじゃなかったの?」

ミランダさんが言う。

「ちょっと色々ありまして、どうせだからと買い物に付き合ってもらいました。今から着替えてまたちょっと出てきます。」

「カイトがやらかしたからね。」

「アリス!」

「じゃあ僕たちは休憩がてらお茶でももらおうか。」

「そうだな。話はその間に。」

「ルドルフとガイツまで!酷い!俺も予想外の展開だったんだから!」

「早く着替えて戻ってこい!アリスが肉なくて怒るぞ?」

「イエッサー!」

あれ?コレはどんな風に訳されてんだろ?

そんなことがちらりとよぎりながらも防具の箱に積まれた諸々を持ちながら階段を駆け上り部屋に向かい、防具をつける。

今日はダーツコンバージョンにして持ってってみようかな?フライト刺したままケースに刺してベルトにつければいけるし…。ハード家に置いてたからなあ。防具は仕方ないとして音鳴るものはなるべく置いてこ。杖は…今日はすぐ戻ってくるし防具慣らしだからいいか。

用意が終わり降りていくとミランダさんが目に涙を溜め爆笑していた。

「あははははは!そんなことがあったの?それを見逃したのは痛いわね。それじゃあ今月のヒーローカイトの事をみんなもう知ってるころね。この町は噂が広まるのは早いから。あらカイト、似合ってるわよその防具。どうしたの?そんなところにうずくまって?」

階段を降りたところで膝から崩れ落ち俯く俺を見て、ップフッと堪えきれずに笑う4人、いや5人目がカウンターの奥に。

「大丈夫よ!カイト!ガイツなんてもう数えきれないくらいメルちゃんを庇ってくれたんだから。仲間ができてよかったわね♪ガイツくん♪」

「ああ、本当に自分があんな目で見られていたんだなと、つくづく実感したよ。」

「俺はガイツが出ていく場面じゃないかと思ったけど出てこないし、メルヴィルさんの目が怖くって、近づいてったらナンパ野郎にムカついて剣構えてくるから手が出ちゃっただけなのに!お肉取りにいくよっ!」

「わかるぞ?わかるぞカイト…。」

ガイツに慰められながらも無理やり話を切って外に出ようとすると、アリスが先にドアに着く。流石はお肉娘。そうだったなとガイツとルドルフも腰を上げ、行ってきますとミランダさんに告げ外に出た。

昨日来た南の森に向け歩き出す。

「カイト?その腰にあるのは何だ?」

「僕も気になった!」

「ダーツだよ。んー手投げの弓みたいなもんかな?金属だし刺さるとは思うけど少し動きを鈍らすくらいで威力はないと思う。試してみようかと思って持ってきたんだ。」

「カイト。練習したら私にもできるかしら?ほとんど後ろで控えてるだけだからできることの幅を増やしたくて。」

「じゃあ今度みんなで武器屋さん行って鍛治師さんか細工師さん紹介してもらって作ってもらおうよ。本当はコレ遊び道具だから流石に心許ないし、予備も欲しいから。それが出来たら木の板で作った的に投げて練習しよう!」

「うん!ありがとう!」

「なんだそれ?遊び道具だったのか?」

「投擲のあるカイトにぴったりだね。楽しそう!」

「なかなか難しいんだよ?的の真ん中に当てるの。」

空は晴れているが、日はもう西のに傾いていた。


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