転生バーテンは生き残る
49話
「ほらここだ!」
そう言われて案内されたのは工業区手前の路地裏にある寂れ、入るのを躊躇するほど煙か何かが染み付いた店だった。そう遠く場所で金属音がする。
「あ、味は店の外見とは全く関係ないからね…。」
「それにしても…すごい外観ね…。」
「並ばなくていいとは言ったケド…。」
「お肉のいい匂いがします ︎」
確かにいい匂いはするんだけどね…。
「何してるんだ?入るぞ?」
呆気にとられていると、ガイツは楽しそうに入っていく。アリスがそれに続く。
「ここでこうしてても仕方ないわ。覚悟を決めて入りましょう!」
「そう…だね。」
ギィィイッと音のする扉をドアベルを鳴らし開け、中に入ると、数人がテーブルに座って何か大きな具が入ったスープ状のものを美味しそうに食べていた。
「ぃらっしゃい。」
店の奥にあるおそらくキッチンから声がする。
「こっちこっち、早く座れよ。ここはいつも空いているんだ。普段は肉を炭で焼いてるから煙たいが美味い肉を出す店なんだが週1の今日は別の料理の店なんだ。たまたま今日はその日だったからみんなを連れてきたくてな。ぜひ味わってもらいたい!カイト、少し高いがいいか?」
自信満々にガイツが言いながらも忘れていたと聞いてくる。
「構わないよ。俺も食べてみたいし。ここまで来て食べない選択肢はないよ!」
「良かった。」
「やあガイツじゃないか!珍しいな、昼からここに来るなんて。今日はクエストはないのか?」
急に後ろから低い声がする。振り向くとそこには身長150cmくらいで骨太な筋肉質のひげを生やしたおっちゃんが5人分の木製コップとピッチャーの乗ったお盆を持って立っていた。
「今朝は寝坊して、さらにギルドで久々にオイタしたお坊ちゃんが居てな。連れのコイツ、カイトって言うんだけど、一瞬でカイトが退治しちゃったらギルマスに呼ばれちゃって。事情聴取やなんやかんやでこんな時間になったから昼飯食べる話になったからカイトのおごりでここに来たんだ。」
このタイミングを逃したら挨拶しづらい。
「初めまして、カイトです。」
「よろしくな。そりゃあ観たかったな!ガイツはもちろん賭けてたんだろ?」
話しながらコップを置きピッチャーで水を注ぐ。柑橘類の爽やかな香りがする。
「カイトの啖呵のキレが良くて、呆れて眺めてた。負けるとは思ってなかったけどな。」
「そりゃ勿体ない。で他はお前のパーティか?1人はギルドの職員みたいだが…。」
「こっちが幼馴染のメルヴィル。『森の恵亭』の娘さん。今日の事件の発端でもある。」
「確かにベッピンさんだな。」
店主の言葉にメルヴィルが少し頬を染める。
「初めまして、ギルドで受付をしてますメルヴィルです。」
「こりゃどうも。この店の店主のリガルドだ。」
「んでこっちが同じパーティのルドルフとアリスだ。」
「どうも。」
「よろしくです。お肉はまだですか?」
「よろしくな。ああ悪かった。飯食いに来たんだったな。注文は決まってるか?」
店主は思い出したように注文を取る。
「ラビットのもも肉の塩焼き2つに絶品シチュー5つとパンを人数分くれ。とりあえすは以上だ。追加があるときはまた言うよ。」
「りょうかい!肉は切り分けるか?」
「頼む。」
「んじゃちょっと待ってな。」
リガルドは奥にあるだろうキッチンに踵を返した。
5分ほど待っていたろうか。辺りにいい匂いが広がった。
「待たせたな。」
そう言いながら店主が大きなスープ皿を配膳していく。
「肉はもうちょい待ってろ。」
と言い残し、ナイフやフォークやスプーンの入った木製のカトラリーケースを残し、奥に下がった。
「じゃあ食べようぜ!」
みんなは食前の祈り俺はいただきますと言い、手を伸ばす。
スープ皿にはゴロゴロと脂肪の層が見える肉と茶色いとろみのあるスープが入っていた。見た目はビーフシチューに近い。
スプーンでスープを一くち口に運ぶ。ナンダコレ!旨味がスープに凝縮されていた。ほのかなフルーツの香りと野菜の優しい味わい。それらをまとめる肉の旨味!例えるなら何日も骨を入れ替え煮込んだスープで作ったビーフシチュー。いやそれそのものかもしれない。気になって肉を口に運ぶ。同じ旨味が先に来て、肉に歯を埋めると豚肉のような歯ざわりと共に肉汁が溢れ出す。と言うことはいろんな骨を煮込んだスープに野菜や果物をすり潰し混ぜ、その後焼いた豚のような獣の肉を入れて煮たシチューなのか…。そりゃ週1な訳だ。
「なにこれ!美味しいっ!」
沈黙を破ったのはメルヴィルだった。
「そうだろう?美味しいだろう?」
ガイツが自慢げに話す。
「パンをスープに浸して食べても絶品だぜ?」
「ガイツが自慢する訳がわかったわ!こんな美味しいスープなんて滅多に食べられないわよ。それにこのお肉。ホーンボアの肉ね。」
「そうだ。カイトがホーンボアの全身を食べたいって言ってたのもこの店にした理由だ。砕いた骨でスープをとって、肉まで食べられる。」
「そんなこと考えてたのか。ガイツ、ありがとな!」
「いいってことよ。メルヴィルやみんなにも教えたかったしな!」
その2人はといえば黙々と食べている。アリスに至ってはもうすぐ器の底が見えそうだ。
少ししてお肉が運ばれてきた。肉の焼けた匂いが炭の香りと相まって香ばしい。
「はいよ。ラビットのもも肉の炭火焼。お、アリスちゃんお代わりするかい?」
「はい!もちろん!」
キラキラと顔を輝かせ…、いや実際に輝いている。祈るように両手を組んで潤んだ瞳で店主を見つめる。
「気に入ってもらえたようで良かった。他にお代わりは?」
「「「「お願いします(頼む、あとパンも)!」」」」
ラビットのもも肉はガツンと塩が効いて美味かった。が、やはりシチューが絶品だ。
その後お代わりを平らげ、みな満腹で幸せそうにしていた。ちなみにお会計は銀貨5枚。
「端数は切っといた。また食べに来い。」
そう言う店主にありがとうございますと頭を下げ、また食べに来ることを誓った。
「もうガイツのせいで満腹よ!」
みんなでギルドの方に向かう道すがら、そう言いながらも微笑んでいるメルヴィルにガイツが微笑み返す。
「な?美味かったろう?」
もう付き合う飛ばして結婚しちゃえよ。親公認なんだから。
そう言われて案内されたのは工業区手前の路地裏にある寂れ、入るのを躊躇するほど煙か何かが染み付いた店だった。そう遠く場所で金属音がする。
「あ、味は店の外見とは全く関係ないからね…。」
「それにしても…すごい外観ね…。」
「並ばなくていいとは言ったケド…。」
「お肉のいい匂いがします ︎」
確かにいい匂いはするんだけどね…。
「何してるんだ?入るぞ?」
呆気にとられていると、ガイツは楽しそうに入っていく。アリスがそれに続く。
「ここでこうしてても仕方ないわ。覚悟を決めて入りましょう!」
「そう…だね。」
ギィィイッと音のする扉をドアベルを鳴らし開け、中に入ると、数人がテーブルに座って何か大きな具が入ったスープ状のものを美味しそうに食べていた。
「ぃらっしゃい。」
店の奥にあるおそらくキッチンから声がする。
「こっちこっち、早く座れよ。ここはいつも空いているんだ。普段は肉を炭で焼いてるから煙たいが美味い肉を出す店なんだが週1の今日は別の料理の店なんだ。たまたま今日はその日だったからみんなを連れてきたくてな。ぜひ味わってもらいたい!カイト、少し高いがいいか?」
自信満々にガイツが言いながらも忘れていたと聞いてくる。
「構わないよ。俺も食べてみたいし。ここまで来て食べない選択肢はないよ!」
「良かった。」
「やあガイツじゃないか!珍しいな、昼からここに来るなんて。今日はクエストはないのか?」
急に後ろから低い声がする。振り向くとそこには身長150cmくらいで骨太な筋肉質のひげを生やしたおっちゃんが5人分の木製コップとピッチャーの乗ったお盆を持って立っていた。
「今朝は寝坊して、さらにギルドで久々にオイタしたお坊ちゃんが居てな。連れのコイツ、カイトって言うんだけど、一瞬でカイトが退治しちゃったらギルマスに呼ばれちゃって。事情聴取やなんやかんやでこんな時間になったから昼飯食べる話になったからカイトのおごりでここに来たんだ。」
このタイミングを逃したら挨拶しづらい。
「初めまして、カイトです。」
「よろしくな。そりゃあ観たかったな!ガイツはもちろん賭けてたんだろ?」
話しながらコップを置きピッチャーで水を注ぐ。柑橘類の爽やかな香りがする。
「カイトの啖呵のキレが良くて、呆れて眺めてた。負けるとは思ってなかったけどな。」
「そりゃ勿体ない。で他はお前のパーティか?1人はギルドの職員みたいだが…。」
「こっちが幼馴染のメルヴィル。『森の恵亭』の娘さん。今日の事件の発端でもある。」
「確かにベッピンさんだな。」
店主の言葉にメルヴィルが少し頬を染める。
「初めまして、ギルドで受付をしてますメルヴィルです。」
「こりゃどうも。この店の店主のリガルドだ。」
「んでこっちが同じパーティのルドルフとアリスだ。」
「どうも。」
「よろしくです。お肉はまだですか?」
「よろしくな。ああ悪かった。飯食いに来たんだったな。注文は決まってるか?」
店主は思い出したように注文を取る。
「ラビットのもも肉の塩焼き2つに絶品シチュー5つとパンを人数分くれ。とりあえすは以上だ。追加があるときはまた言うよ。」
「りょうかい!肉は切り分けるか?」
「頼む。」
「んじゃちょっと待ってな。」
リガルドは奥にあるだろうキッチンに踵を返した。
5分ほど待っていたろうか。辺りにいい匂いが広がった。
「待たせたな。」
そう言いながら店主が大きなスープ皿を配膳していく。
「肉はもうちょい待ってろ。」
と言い残し、ナイフやフォークやスプーンの入った木製のカトラリーケースを残し、奥に下がった。
「じゃあ食べようぜ!」
みんなは食前の祈り俺はいただきますと言い、手を伸ばす。
スープ皿にはゴロゴロと脂肪の層が見える肉と茶色いとろみのあるスープが入っていた。見た目はビーフシチューに近い。
スプーンでスープを一くち口に運ぶ。ナンダコレ!旨味がスープに凝縮されていた。ほのかなフルーツの香りと野菜の優しい味わい。それらをまとめる肉の旨味!例えるなら何日も骨を入れ替え煮込んだスープで作ったビーフシチュー。いやそれそのものかもしれない。気になって肉を口に運ぶ。同じ旨味が先に来て、肉に歯を埋めると豚肉のような歯ざわりと共に肉汁が溢れ出す。と言うことはいろんな骨を煮込んだスープに野菜や果物をすり潰し混ぜ、その後焼いた豚のような獣の肉を入れて煮たシチューなのか…。そりゃ週1な訳だ。
「なにこれ!美味しいっ!」
沈黙を破ったのはメルヴィルだった。
「そうだろう?美味しいだろう?」
ガイツが自慢げに話す。
「パンをスープに浸して食べても絶品だぜ?」
「ガイツが自慢する訳がわかったわ!こんな美味しいスープなんて滅多に食べられないわよ。それにこのお肉。ホーンボアの肉ね。」
「そうだ。カイトがホーンボアの全身を食べたいって言ってたのもこの店にした理由だ。砕いた骨でスープをとって、肉まで食べられる。」
「そんなこと考えてたのか。ガイツ、ありがとな!」
「いいってことよ。メルヴィルやみんなにも教えたかったしな!」
その2人はといえば黙々と食べている。アリスに至ってはもうすぐ器の底が見えそうだ。
少ししてお肉が運ばれてきた。肉の焼けた匂いが炭の香りと相まって香ばしい。
「はいよ。ラビットのもも肉の炭火焼。お、アリスちゃんお代わりするかい?」
「はい!もちろん!」
キラキラと顔を輝かせ…、いや実際に輝いている。祈るように両手を組んで潤んだ瞳で店主を見つめる。
「気に入ってもらえたようで良かった。他にお代わりは?」
「「「「お願いします(頼む、あとパンも)!」」」」
ラビットのもも肉はガツンと塩が効いて美味かった。が、やはりシチューが絶品だ。
その後お代わりを平らげ、みな満腹で幸せそうにしていた。ちなみにお会計は銀貨5枚。
「端数は切っといた。また食べに来い。」
そう言う店主にありがとうございますと頭を下げ、また食べに来ることを誓った。
「もうガイツのせいで満腹よ!」
みんなでギルドの方に向かう道すがら、そう言いながらも微笑んでいるメルヴィルにガイツが微笑み返す。
「な?美味かったろう?」
もう付き合う飛ばして結婚しちゃえよ。親公認なんだから。
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