転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

44話 初仕事。

 ギルドには人が沢山いた。が、これでも遅いせいか、いつもより少ないらしい。入り口入ってすぐにあるランク毎に分けられた掲示板に向かう。手前がF。奥に行くに従って高ランクになるようだ。Sの掲示板はない。

「カイトは自分のランクの依頼用紙を見て適当に薬草採取クエストの張り紙取って受付で受けたら混んでるし外で待ってて。僕たちもすぐ行くよ。」

「わかった。」

「じゃあ後でな。」

 ガイツ達はCランクの掲示板を見に行った。

 Fランクの掲示板にはたくさんの依頼が張り出されてあった。ドブ掃除や土木作業の補助、配達などなど。

「あった。」

 その中にある薬草採取の張り紙を見つける。



Fランク
薬草採取依頼
薬師ギルド
状態普通の薬草1種類10本につき200ルーツ
上限なし。好状態なら10本につき50ルーツ追加報酬。
薬草の種類:アカネ草、血止め草、がま




 これでいいだろう。がまはわかる。あの川辺に生えてる棒突きウインナーだろ?他にもあったけど似たようなものだったし。

 そう思い張り紙を剥がし、受付へと持っていく。前に6人くらい並んでいた。次々と受付の職員が裁いていく。そして自分の番がきた。

「次の方、こちらへどうぞ。」

 そこへ横からやけにいい装備に背中に細身の両手剣を背負った男が順番を無視して割り込んでくる。

「え?」

 あまりにも自然に割り込んでくるその男に唖然とする。

「ねーちゃんこの依頼ね、はいギルドカード。あんたかわいぃなー。」

 なんか関西弁?方言がそういう風に聞こえるのだろうか?

「貴方今割り込んで来ましたよね?並んで順番を待てないような方に依頼するクエストはございません。並び直して順番をお待ちください。お引き取りを。」

 聞き覚えのある声がする。

「はあ?なにゆーてんの?どうでもええから受付してえな。」

「次の方!こちらへどうぞ!あらカイトさん。」

 あの目ははやく来いと言っている。

 仕方なく向かう。近付くと、

「おいにーちゃん邪魔せんといてーな。今俺が受付してんねん。」

「え?割り込んで来た貴方の受付なんてしてませんしするつもりもありませんが?」

「なにゆーてんねん俺はBランクやで?なんでFの後ろに並ばなあかんねん。」

「なんでもなにも決まりです。よくもまあそんな態度でBランクがもらえましたね。えーと?メラトニア王国王都ヨルム名前はハルト・シュテーゲンさんですか。家名がありますし貴族なんですね。」

 メルヴィルさんそれ以上は危ないよ?逆上しちゃうカモよ?多分その男ナンパしたいだけだろうし。おじさん夜道が心配。

仕方ない、と口を挟む。

「メルヴィルさん。冒険者って血気盛んな人がいるとは思ってましたけどこんな頭の悪い人もいるんですね。いや、貴族出身で頭はいいのかもしれないけど貴族出身なのに素行で品位を落とすような考えなしの冒険者さんでしょうか。あ、このクエストお願いしますね♪」

 そう言って矛先を自分に向けることにした。

 メルヴィルさんにはガイツがいるんだ!邪魔するな!

「わかりました。薬草採取クエストですね。薬草の情報はありますか?」

 さすがメルヴィルさん。なんの気負いもない対応だ。ほんと心臓強えなあ。

「いえ、わからないので教えてください。」

「おい!テメェ、俺を馬鹿にしてんのか!?」

うるさいなあ。してますけどそれがどうしたんですか?そんなわがままなお坊ちゃんなんて子供すぎて構ってられないと思ってますよ?自らの行いをかえりみることができない人を大人とは言いません。というかいつまでそこにいるんですか?自国の恥を晒しにきたのですか?羞恥心という言葉を知っていますか?」

言ってるうちに腹が立ってくるわずらわしい。

「ようもこの俺様に恥をかかせてくれよったな!殺したる。名を名乗のらんかい。」

 そう言うと男は背中の剣を抜いた。

「で、メルヴィルさん。これは正当防衛が認められますか?それと薬草教えてください。」

「正当防衛は認められますが殺したらダメです。なんなら私がりたいくらいです。が、お任せします。2日酔いなので。薬草ですが本取ってきますね。」

 と言うとメルヴィルさんは奥に行った。

 気付けば俺とハルトと言ったか、2人を中心に、他の冒険者達が囲んで、一部では賭けをしてる。ガイツ!さっきメルヴィルさんを助けるのはお前の役目だったぞ?見てないでなんとか言え。まあいちいち相手にしてたら日が沈みそうだからある程度メルヴィルさんが強くないとだけれども。強気すぎる。

「あー名を名乗れでしたか。名を聞く場合は普通自らが先に名を名乗るのですか…まあいっか。昨日ここで冒険者登録したばかりのFランク冒険者のカイトといいます。まだ何も知らない初心者ですのでよろしくお願いします。」

 そう言って黒い結晶の杖を正眼に構えた。

「どこまでもなめ腐りやがって。そんな杖で相手するってか?ね!」

 そう言うと男が両手剣を構えて飛びかかってきた。

「いやです。死にたくありません!」

 そう返しつつ左上から右下に振り下ろされた剣を右斜め前にすり足で避けかわしつつハルトの手甲を巻いた左手首に結晶杖を振り下ろし握り絞る。

 バキッ。

手首に衝撃を与えつつそのまま最短で姿勢を変え、腕に添い首筋に向け払いを繰り出し寸止めた。

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