転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

40話

「く〜……く〜……」

「………寝てる!?」

「あー寝ちゃったか。ちょっと手を貸してくれ。俺がおんぶするから。」

「お姫様抱っこじゃだめなの?」

「あーそれすると起きてから怒るんだよこいつ。そしてなんか自暴自棄になる。」

「「あ〜。」」

 そう言葉を交わしながらガイツのかがんだ背中にメルヴィルを乗せ、ガイツの首に手を回してあげる。

「しっかりしてて良い人なのに」

「メルヴィルさんてほんと」

「「残念な子」」

 ルドルフと俺の心が通じ合った瞬間だった。

「ん?どうした?」

「「なんでもないよ。」」

 なんとなくだがガイツもなんだかんだでメルヴィルをほっておけないんだろう。青春してるな。羨ましい。

「ふふっ」

 急にメルヴィルさんが笑う。

 寝言か。いい夢見てるんだろうな。

 あっという間に『森の恵亭』に着く。

 カランカランと戸を開けるとミランダさんがこっちに気付く。

 まだ数名お客さんがテーブルで酒を飲んでいる。その接客をしていたのだろう。

「あら、おかえりなさい。あらあらまあまあ♪幸せそうねメルちゃんは。よかったでちゅねーガイツくんにおんぶして貰って♪」

「「「ただいま(戻りました)(です)。」」」

「ガイツくん、メルちゃんを部屋に連れてってあげて?みんなはまだ飲む?それとも部屋で休む?」

「疲れもありますし明日から仕事始めですので今日はもう寝ます。」

「僕も自分の部屋に帰ります。」

「じゃあ2人ともコレ鍵ね?あとでタオルと湯おけ持ってくわね。寝てたらまた明日の朝に井戸水でも被りなさい♪」

「ありがとうございますミランダさん。おやすみなさい。ガイツもおやすみ。」

「おやすみなさい。ガイツまた明日。」

「おう、また明日な!」

 階段を登る途中ふと思いつく。

「…というかルドルフはここの宿暮らしだったんだ?」

「そうだよ?言ってなかったっけ?」

「言ってないよ!ガイツは?」

「あーガイツは実家でもいいはずなんだけどこの宿に部屋取ってるよ。たまに実家行くけど寝るのはこっちみたい。」

「それって1つ屋根の下…でもガイツだもんな…。」

「そうだね。少しは変化があればいいんだけど…ないんだよね…。じゃあ僕はここだから。」

 階段登って2つ目の202号室前でルドルフが言う。

「おやすみなさい。」

「おやすみルドルフ。」

 自分も205号室に向かう。

 鍵を開け部屋に入り鍵をかけると装備だけ外してバタリとベッドに倒れこむ。

 あー疲れた。そう言えば今朝はまだ山でサバイバルしていたんだよな。ようやくベッドで寝られる。幸せ。気候がいいから外でも寝られるけど寝ている間に何かあるかもしれないから不安であんまり寝られなかったし、昨夜はケータイ見てほとんど寝てなかったっけ。そう思うと疲れたな。

 もう少し何か考え続けようとしたが頭が回らないし瞼が重い。遠くでトントンと音がするがそのまま意識は遠のいていった。

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