転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

38話

出揃った料理のなんと美味しそうなことか!久々のまともな料理!ちゃんとお皿があるだけでこうも違うものに感じるとは。余裕ができたら冒険時に外でのご飯で使える食器や調理器具を探してみよう!ハーブについても誰かに教えてもらおう!

「はぁー、どっと疲れたわ、今日は飲むわよ!料理は食べたい人が食べたいもの食べたいだけ取ることにしましょう!まずは乾杯ね!」

席に着きながらメルヴィルさんが言う。

「じゃあ俺が音頭とっていいですか?。」

そう言って木製のジョッキを持ち上げる。

「今日は皆さん本当にありがとうございました。お陰様で冒険者にもなれ、こんな美味しそうな食事にありつけました。今後も迷惑をかけてしまうことがあるかと思いますが、少しずつ返していけたらとも思っています!これからもよろしくお願いします!乾杯!」

「「「乾杯!」」」

おおおおおぉぉぉぉぉ!久々のこの麦の香り!そして喉にくるこの炭酸!そしてアルコール!美味い!地ビールに近いか。でもぬるい。少し冷やせたらもっといいんだけどなあ。

「いやーいい音頭だった。オレの方こそこれからよろしくな!冒険者になってしばらくは1人で頑張ってみるといい。ランクがDになったらうちのパーティに来るかなとも考えてくれ。お前なら歓迎だ!な、ルドルフ。」

「ええ、カイトならガイツより俊敏だから前衛が厚くなりもっと依頼が楽になります。アリスも肉で釣れますし!」

「ルドルフってサラッと酷いこと言うのね。まあ同感だわ。Fランクのうちは町への貢献クエストや薬草採取がメインだからランクが上がるのも早いし、その間に顔を広げるって意味合いもあるの。依頼者も見たことない人よりも町に尽くしてくれてたってだけで冒険者ギルドに依頼しやすいし、一石二鳥よ!頑張りなさい♪」

「早くランク上げられるように頑張るよ。思ったんだけどメルヴィルさんはそっちが素なんだね?冒険者ギルドと全く口調が違うよ。」

「そりゃ仕事だもの。そして今はプライベート。違って当たり前よ。」

「まあそうなんだけどね。ちなみにガイツはどっちのメルヴィルさんが好き?」

「なっ!?」

「んーそうだな、仕事中は丁寧な言葉遣いが板についてて頑張ってるなと思うしカッコいいが、実際できているんだろうし、でもオレは普段のメルヴィルの方が好きかな♪」

「あ、ありがとぅ…。」

メルヴィルさんは頬を染めもじもじしだした。

「うわーこういうのを天然ジゴロって言うんですかね?」

「ルドルフ、それは違うよ。アレはただの無自覚だよ。」

久々の酒に酔いしれながら料理に手を伸ばす。幼女の威圧は気にしない。

「いただきます」

両手を合わせて一言言う。

まずはブラッドソーセジ!
ホーンボアの血と肉の腸詰。茹でて灰色になったブラッドソーセジはパリッとした歯ごたえの中に肉の食感そしてレバーにも似た風味が相まって美味い!腸はホーンラビットだろうか?薄いし解体した時より少し太く見える。羊やそれこそホーンボアの腸の可能性もあるけど分厚い気はしないしな。今度親方に聞いてみよう。

そう思いつつもう一口食べる。ホーンボアの肉汁と甘い脂、そして塩味と血の香り。そこにエールを流し込む!これが合わないわけがない!パンは少し焼いたのかほんのり暖かく柔らかい。ぎゅっと詰まってる印象だが小麦のいい風味が広がる。

「カイト、手を合わせて何してたの?川でもマンバ肉食べる時してたよね?」

「ああ、アレは食前に食材に対して感謝の意を示してありがたくいただく言葉と仕草だよ。まあ食前の祈りみたいなものかな?みんなとは宗派は違うだろうけど。」

「へえー、それでいいのか、短くていいな!」

「ガイツ達のは長いの?」

「そうね、本格的な教会とかでは2〜3分祈るらしいわ。私たちも祈りの言葉の後30秒くらいは祈るわね。」

「へー?そういうものなんだ?ちょっとやってみて?」

「いいけど簡単にね。」

そういうと3人は祈りを捧げ始める。

「イリーナの豊穣の神エリスよ。私たちの血肉となる今日の恵みに感謝します。」

言葉と共に少しずつ3人が薄く光る。

ガイツがパッと顔を上げ食べ始めると光が消え3人は顔を見合わせて溜息をついた。

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