転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

33話

 難しい顔をしてどうかしたのかしら?Fランクなのが気に入らないとか?まあいっか。

「こちらがカイトさんの冒険者ギルドカードです。冒険者にはランクがあります。ランクは下からFEDCBAと上がっていき、ごくまれに功績が認められSランクを賜る方がいます。ランクはその人の実績や人柄、強さや知識の基準となり、FからDの低ランクの方の場合、基本的にはこなした仕事次第でランクアップが可能です。C以上の高ランクに上がるにはランクごとに試験があります。とはいえ総合判断ですので試験結果が基準値以上の場合合格になります。カイトさんはまだ登録したばかりですのでFランクからのスタートです。ランク毎に受けられる仕事は違い、基本的に自分の1つ上のランク、カイトさんならEランク以下の仕事が受けられます。依頼を失敗した場合、依頼の1割の違約金が課せられます。注意してください。その他の規約などはこちらの冊子をご覧ください。」

「はい、わかりました。」

 あれ?素直に聞いてる?

 引き出しから用紙を取り出し、必要事項を記入し、指の形に溝が彫られ、金属の針が出ている木製の魔道具とギルドカードその3つをカイトに差し出す。

「こちらの紙とギルドカードにこの針で指を指し血を1滴ずつ垂らしてください。針台は消毒と痛み止めの魔道具となっております。どうぞ。」

「は、はい」

 カイトは恐る恐る手を伸ばす。溝に指を沈めると、痛みはない様だ。

 そのまま針から指を抜き、ギルドカードと用紙に血を垂らす。

「これでこの用紙とギルドカードにパスが繋がりました。ギルドカードまたはカイトさんの方に何かありましたら、この用紙が光ります。継続して光る場合は冒険者の死亡時。点滅の場合は冒険者が大怪我をしたなどの緊急時です。ギルドは冒険者に見合った依頼を提供出来るよう尽力していますが、その精度を上げる為にご協力をお願いします。以上で登録は完了です。お疲れ様でした。何かありましたら気軽にお声かけください。」

「いえいえ、丁寧に対応や説明をして頂きありがとうございました。これからよろしくお願いします。」

カイトはニコッと笑いギルドカードを仕舞い席を立つ。

 案外できた人なのかしら?冒険者には珍しいタイプね。ガイツ達と仲よさそうにしてたけれど悪い人じゃなさそうで安心したわ。

 ホッとした様にニコッと笑って新人冒険者を送り出す。

「あっ!杖忘れたっ!」

 そう言うとカイトは解体所の方へ走り去る。

ビッグマンバやホーンボアを狩れる腕もある美男子なのに抜けてるところがあるのが残念な子ね。それも愛嬌かしら?他の受付の子達がはしゃぎそうね。人が少ない時間で良かったわ。対応したのが私で嫉妬されたらたまらないもの。ガイツは面倒見いいからなかなか2人では飲みに行けなくなりそうね。とりあえず破産させない程度ならって言質は取ったしまあいっか。

空もだんだん色付き始め、夜が間近に迫っている。帰ってきた冒険者が徐々に増え始める時間帯。



何故かメルヴィルさんのセリフと心情が声優の新井里美さんの声で流れてくる。何故だ!…。
読者はどんな声をイメージするんだろう?

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