転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

17話

やっぱりどう見ても毒ある蛇だよな…。

2本の牙は太さ1cmほど。内側に折りたたまれるように生えており、その手を広げたほどのサイズの頭は菱形。切り口からは黒い宝石のようなものが覗き、ポロっと取れそうだ。ほじくり出し軽く洗うと3cm大の黒い宝石だった。

ツノの生えたウサギの時も同じようなものが出てきたな。まあ売れそうだし取っておこう。

頭は隅に放置し、宝石は鞄の中に放り込む。そしておもむろに焼けた蛇肉に手を伸ばす。

そろそろ良いだろう。まずは素焼きの方から。

「いただきます。」

肋と背骨は付いたままのその背中の肉にかぶりつく。筋張った歯ごたえはなく、ただただ普通に美味しい肉だ。歯ごたえはウサギよりも鶏肉に似ている。焚き火の香りが肉汁と相まってなかなか美味しい。そしてほんのり塩味がする。もともと塩分を貯めているのかありがたい塩味だ。もうコレ素焼き正解かもと思いながら食べる。

だが途中で手が止まる。アレを試してない。おもむろに切ったライムに手を伸ばし、軽く果汁を絞りかける。塩レモンが美味いなら塩ライムもうまいんじゃね?とやってみたがかぶりついて感じる。

酸味がきつくない分俺はこっちの方が好みだ!

あっという間に素焼きの串がなくなる。

こんなに美味いとは。もちろんそれは久々の塩分のせいもあるのだろうが、肉自体も食べやすい。例えるなら塩蒸した鶏胸肉を炙った感じだろうか。多少独特の風味はあるが多少だ。気になる程はない。

でかい色ヤバイ蛇は美味いのか…。石投げて倒せるのなら次も…。

考えながらも気になる次の串に手が伸びる。手に取ったそれは香ばしい中にも爽やかな香りがあり、もう我慢できはしない。かぶりつくだけだ。

さっきの素焼きに比べさっぱりしているとはいえ果汁を絞りかけたものに比べると酸味があるわけではないが美味い。皮の苦味が大人の味だ。ビールがあれば ︎なんでないんだ!食べながらもうわ言のように

「ビール…ビール…。」

と繰り返す。

コレは毒だ。ビールが欲しくなる毒だ。ウサギの肋も酒欲しくなるがそこまでじゃなかった。はじめは無理して飲んでたビールがこんなに恋しくなるなんて。銀色のやつが足りない!

そう思いながらも口は止まらない。半分まで食べ進めたところで果樹を絞りかけ食べる。また味が変わる。この肉には本当に酸味が、いや、ライムがよく合う。燻製干し肉にするのがもったいない。生肉を保存できないのが悔しいが腐らせるのはもっとダメだ。採れたて限定の美味だと割り切り食べ尽くす。骨だけ綺麗に残し

「ごちそうさまでした。こんなにビールが飲みたくなるとは。やっぱり毒だな美味いけど。」

食べ終えた骨と串を片付け、焚き火に時間差で燃えるよう薪を加え配置してから歯を磨き、横になる。

明日はいよいよ道具作り。日中は大変だったが夕飯が豪華になった実りある1日だった。心地よい満腹感と疲労ですぐに意識が遠のいていく。

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