炎の騎士伝
降臨せしモノ
帝歴403年 7月18日
端末から通信が入る。校長からの連絡だ。突然の電話に少し緊張するが冷静に対応する。
「どうかなさいましたか、校長。こんな夜分遅くに」
「ああ、明日の試合について助言をとね。」
「助言ですか……。」
「彼女、シファ殿との試合だが……。」
「はい。」
「全力を尽くせ。それが助言だ……。」
「全力ですか?しかし、私の実力はご存知でしょう、学院一では無いにしろ上位にいる私です。彼女がいかに強かろうが私程には……。」
「正直に言うと、君では彼女に勝てない。」
「っ……!」
私はその言葉に絶句するが、校長の言葉が嘘とは思えない。
「……。分かりました、全力を尽くします。」
「それでいい、健闘を祈っている。」
通信が切れる。一息つき、精神を落ち着かせる。
「君では彼女に勝てないか……。」
言葉が漏れる、明日の試合……覚悟しなければならないな……。
7月19日
盛大な歓声が巻き起こっている。そして……
「我がオキデンス最強!学位序列五位、ラノワ・ブルーム!」
「「ーーーーーー!!!」」
自分の名が呼ばれた、いつもの黒い甲冑を纏うと自然と緊張感が無い。しかし何故か、自分に流れる時間がゆっくりと流れているように感じる。恐らく調子がいいのだろう、これ程優れている時は生涯に数回あるか無いかだろうと……。
闘技場に私が姿を表すと、更に歓声が上がる。歓声が上がる方向に手を振る、私達の試合を見る為に来てくれた……それに応える為に……。
そして対戦相手の名が呼ばれた。
「学院に突如として現れた美し過ぎる剣姫!シファ・ラーニル!!」
「「ーーーーーー!!!」」
盛大な歓声が再び巻き起こり、向こうから現れる。
銀髪の髪を揺らす女性、これ程までの美貌を持つ存在がこの世にいると私はまだ信じられない。そして彼女が私より強い存在だということを……。
彼女は腰には剣を帯びている、細身の剣だ。しかしかなりの業物……世で言う魔剣と呼ばれる物に近い存在だということを感じさせている。抜かずとも、その存在感が伝わる。
なるほど……確かに只者では無い……。
「今日はよろしくお願いね、ラノワ。」
「……全力を尽くします」
そして、戦いの場を囲うように結界が構成されていく。
「それでは始めましょう!!!試合開始!!」
合図と共に剣を引き抜き構える。戦いが始まったのだ……。
●
「すごい……ラノワと互角なんて……。」
ルーシャは思わず声を漏らしていた。観客達も騒然と試合を観戦している。
目の前で繰り広げられているのは、高速で織りなされる剣技……。ラノワは甲冑を纏っているにも関わらず、凄まじい速さで剣を振るっていた。
対する姉さんは剣を完全に引き抜かず、少し出した刃でラノワの高速の剣技を防いでいた。普通なら剣を抜ききれずに押されていると思うだろう、しかし違う……あれはまだ様子見なのだ……。
高速の剣技がぶつかり合っていると、押しているはずのラノワが距離を取り姉さんに話し掛ける。
「何故、剣を抜かない。」
「あなたが本気出して無いからかな。」
「そうか……失礼をしていたのは私の方か……。」
「あなたの力、見せてよ。」
姉さんが剣を引き抜いた。そして対するラノワは剣を再び構え直すと、全身から黒い魔力が流れ出ていた。
「魔王と呼ばれる我が力、とくとご覧あれ!」
ラノワが叫ぶと、その全身を黒い魔力が包み込み弾けた。
魔力から現れたのは、灰色の肌をのぞかせ黒い悪魔的な羽が生えた男……。鎧はその姿を変え、禍禍しさを漂わせていた。
観客席から歓声が巻き起こる。魔王が降臨したなどと声は後を絶たない。
「悪魔憑きか……なるほどね……。」
「だが私に憑いているのはそこらの低位とは格が違う……。」
「意識は保てる……なら私も応えないといけないね。」
姉さんは剣を構えると、その目付きが変わり真剣そのものになる。
「来なさい……。」
これまでの優しい雰囲気からガラリと変わった冷淡なその口調。姉さんの魔力が上昇していることは離れている俺からも肌で感じていた。
そして両者が再び動く。両者の剣がぶつかり合うと凄まじい衝撃が闘技場に響き渡った。
●
戦いは更に激しさを増し、会場内では更に歓声が高まる。
しかしそれは私の耳には届いていない。
《速い……この力でも彼女には届かないというのか……。聞いているなら私にもっと力を寄こせ。》
頭の中でそれに話し掛ける。
《力か……。くれてやってもいいがお前の体が持たないぞ……。既にあの者に勝てるだけの力を貸しているのだがな……。》
《どうゆう事だ?》
《あの女は強い……恐ろしくな……。そして何処か懐かしい感じがする……。》
《懐かしいだと?》
《少し体を借りていいか?》
《何が目的だ?》
《あの女に野暮用だ。》
そして私の意識が途切れた。
●
突然、二人の動きが止まる。剣がぶつかり力の押し合いと化している状態。両者の動きが止まり、緊張がはしる……。
「さて、本番といこうか……。」
「っ……!」
姉さんが突然後ろに飛び退き距離を取る。
「彼に憑いている悪魔と言えばいいだろうか。名は言えない。」
「悪魔が出るとは、彼はどうしたの?」
「諸事情あって私が体を借りている。無理はしないつもりだがここからは私が相手をする。お前もその力を使え……。」
「…………。」
「お前もなのだろう……いや高位の存在と見受けするが。」
「どこから分かったの?」
「戦っている内に薄々とな。」
「そう、それじゃあ私も力を使わせてもらうかな……。」
二人の会話はこちらまで聞こえない。何を話しているのかが気になる。
この時ラノワさんは姉さんを見据えていた。それに対する姉さんは目を閉じ精神を落ち着かせている。すると突然、空が荒れ始めた。
観客達は、突然の事態騒然としているが……。目の前のそれが
「なんだよあれ……。」
思わず声が出る。
姉さんの体からも同じく黒い魔力が溢れていた。ラノワさんも同じく放ったそれと酷似しているがそれとは比較にならない……。
見た限り、ラノワさんの放ったそれと次元が違う。先程のあれの百倍はあろう……。その別次元の魔力が姉さんを包み込むと……天候は更に荒れていく……雷が暴れるように鳴り響き、雲は凄まじい速さで流れている。それはこの世の終わりを告げるかのようであった……。
震えている……。本能がアレと関わるなと告げていた。不意にあの男の一言が脳裏をかすめる。
「シファ・ラーニル。彼女は危険な存在だと私達は見ている。」
姉さんを包み込んでいた魔力が融解し弾けると、その姿を表す。先程の白を基調とした鎧が藍色に染まっていた。特徴的な銀の髪は漆黒の黒へと変わり果てている。
それは明らかに別人と化していた。顔はやはり溢れんばかりの美貌をのぞかせるが以前の優しさは既に無く冷酷な表情が浮かんでいる。そして、その背にはやはり悪魔のような羽が広げられていた。
「これでいいかな?」
姉さんがラノワさんに話し掛ける。しかし……。
「っ……まさか……あなた様は……。」
目の前の魔王は震えていた。驚愕と恐怖、それが混ざり言葉がままならなくなっていた。あまりの事なのかラノワさんは後退る
●
「何よあれ……シファ様なの……。」
「姉さんだよ……。姿は違う……でも……。」
俺の手が震えている。生物としての本能だろうか……目の前のソレに体が警告を鳴らしている。
「シラフ、大丈夫なの?」
クレシアが俺の様子を心配するが、
「大丈夫だよ、今は試合を見届けよう。」
そう見届け無ければならない。俺にはその義務がある……。
そして戦いは終盤へと向かっていた。既に実力差は歴然としている。震えている者が魔王なら、それを平然と見ている彼女は一体なんと言えるだろう。
姉さんがラノワさんに近づいていく、それに彼は怯えている様子であった。
「どうしたの、あなたの言う通りにしたのに?」
「っ…………。私より上位の存在であるあなた様に刃を向けるなど私には出来ない。」
「そう……。でも私にわざわざ力を使わせたのに?」
「っ……それは……。」
「とりあえず、彼には後で話を合わせるように伝えて。それで許してあげるから。」
姉さんは周りを見渡し、ラノワに話し掛ける。
「それで試合はどうするの?」
「私の負けだ。剣を向けた所で私はあなた様には及ばない事は百も承知……。」
「そう、つまらないな。あと、彼に体そろそろ返してあげたら。限界近いんでしょう?」
「仰せのままに……、我が王の子よ……。」
何かをつぶやいたラノワは、その姿が徐々に元の姿へと戻っていく。膝を着き、体力のほとんどをラノワは使い果たしている様子であった。
「意識はまだあるかな?」
「っ……。何が起こって……。」
「あなたの悪魔と少し色々とね……。」
「その姿は一体……。」
「まあ後で話すから、今は置いて……。それで試合続ける?」
「いや、もう充分です。」
ラノワは剣を鞘へ戻すと両手を上げる。降参の意を伝えるそれに試合終了の鐘が鳴り響く。悪魔と化している姉さんからは、それに似合わない無垢な笑顔を見せ、立ち上がれないラノワに手を伸ばす。
観客席からは盛大な歓声が巻き起こり、荒れた空が徐々に晴れていく……。
帝歴403年7月19日 午後3時28分47秒 試合時間28分34秒
ラノワ・ブルーム対シファ・ラーニルの戦いは彼女の勝利で幕を閉じた。前代未聞の八席を見事打ち破ったシファの登場はオキデンスに関わらず、学院全体に衝撃をもたらす。
外部である三都市の学院においてもその戦いぶりは端末からの中継により瞬く間に広がりを見せその名は瞬く間に知れ渡った。
その影響により、もう一つの記録的事態の情報は表向きに大きく出る事は無かった。
無名の編入生が戦力値を大幅な更新を達成。
八席を大幅に上回る数値を記録。
推定戦力4000万、オキデンスに新たな英雄の誕生か……。
無名の編入生、それが何者なのかそれを知る者はごく限られた者しかいない。
端末から通信が入る。校長からの連絡だ。突然の電話に少し緊張するが冷静に対応する。
「どうかなさいましたか、校長。こんな夜分遅くに」
「ああ、明日の試合について助言をとね。」
「助言ですか……。」
「彼女、シファ殿との試合だが……。」
「はい。」
「全力を尽くせ。それが助言だ……。」
「全力ですか?しかし、私の実力はご存知でしょう、学院一では無いにしろ上位にいる私です。彼女がいかに強かろうが私程には……。」
「正直に言うと、君では彼女に勝てない。」
「っ……!」
私はその言葉に絶句するが、校長の言葉が嘘とは思えない。
「……。分かりました、全力を尽くします。」
「それでいい、健闘を祈っている。」
通信が切れる。一息つき、精神を落ち着かせる。
「君では彼女に勝てないか……。」
言葉が漏れる、明日の試合……覚悟しなければならないな……。
7月19日
盛大な歓声が巻き起こっている。そして……
「我がオキデンス最強!学位序列五位、ラノワ・ブルーム!」
「「ーーーーーー!!!」」
自分の名が呼ばれた、いつもの黒い甲冑を纏うと自然と緊張感が無い。しかし何故か、自分に流れる時間がゆっくりと流れているように感じる。恐らく調子がいいのだろう、これ程優れている時は生涯に数回あるか無いかだろうと……。
闘技場に私が姿を表すと、更に歓声が上がる。歓声が上がる方向に手を振る、私達の試合を見る為に来てくれた……それに応える為に……。
そして対戦相手の名が呼ばれた。
「学院に突如として現れた美し過ぎる剣姫!シファ・ラーニル!!」
「「ーーーーーー!!!」」
盛大な歓声が再び巻き起こり、向こうから現れる。
銀髪の髪を揺らす女性、これ程までの美貌を持つ存在がこの世にいると私はまだ信じられない。そして彼女が私より強い存在だということを……。
彼女は腰には剣を帯びている、細身の剣だ。しかしかなりの業物……世で言う魔剣と呼ばれる物に近い存在だということを感じさせている。抜かずとも、その存在感が伝わる。
なるほど……確かに只者では無い……。
「今日はよろしくお願いね、ラノワ。」
「……全力を尽くします」
そして、戦いの場を囲うように結界が構成されていく。
「それでは始めましょう!!!試合開始!!」
合図と共に剣を引き抜き構える。戦いが始まったのだ……。
●
「すごい……ラノワと互角なんて……。」
ルーシャは思わず声を漏らしていた。観客達も騒然と試合を観戦している。
目の前で繰り広げられているのは、高速で織りなされる剣技……。ラノワは甲冑を纏っているにも関わらず、凄まじい速さで剣を振るっていた。
対する姉さんは剣を完全に引き抜かず、少し出した刃でラノワの高速の剣技を防いでいた。普通なら剣を抜ききれずに押されていると思うだろう、しかし違う……あれはまだ様子見なのだ……。
高速の剣技がぶつかり合っていると、押しているはずのラノワが距離を取り姉さんに話し掛ける。
「何故、剣を抜かない。」
「あなたが本気出して無いからかな。」
「そうか……失礼をしていたのは私の方か……。」
「あなたの力、見せてよ。」
姉さんが剣を引き抜いた。そして対するラノワは剣を再び構え直すと、全身から黒い魔力が流れ出ていた。
「魔王と呼ばれる我が力、とくとご覧あれ!」
ラノワが叫ぶと、その全身を黒い魔力が包み込み弾けた。
魔力から現れたのは、灰色の肌をのぞかせ黒い悪魔的な羽が生えた男……。鎧はその姿を変え、禍禍しさを漂わせていた。
観客席から歓声が巻き起こる。魔王が降臨したなどと声は後を絶たない。
「悪魔憑きか……なるほどね……。」
「だが私に憑いているのはそこらの低位とは格が違う……。」
「意識は保てる……なら私も応えないといけないね。」
姉さんは剣を構えると、その目付きが変わり真剣そのものになる。
「来なさい……。」
これまでの優しい雰囲気からガラリと変わった冷淡なその口調。姉さんの魔力が上昇していることは離れている俺からも肌で感じていた。
そして両者が再び動く。両者の剣がぶつかり合うと凄まじい衝撃が闘技場に響き渡った。
●
戦いは更に激しさを増し、会場内では更に歓声が高まる。
しかしそれは私の耳には届いていない。
《速い……この力でも彼女には届かないというのか……。聞いているなら私にもっと力を寄こせ。》
頭の中でそれに話し掛ける。
《力か……。くれてやってもいいがお前の体が持たないぞ……。既にあの者に勝てるだけの力を貸しているのだがな……。》
《どうゆう事だ?》
《あの女は強い……恐ろしくな……。そして何処か懐かしい感じがする……。》
《懐かしいだと?》
《少し体を借りていいか?》
《何が目的だ?》
《あの女に野暮用だ。》
そして私の意識が途切れた。
●
突然、二人の動きが止まる。剣がぶつかり力の押し合いと化している状態。両者の動きが止まり、緊張がはしる……。
「さて、本番といこうか……。」
「っ……!」
姉さんが突然後ろに飛び退き距離を取る。
「彼に憑いている悪魔と言えばいいだろうか。名は言えない。」
「悪魔が出るとは、彼はどうしたの?」
「諸事情あって私が体を借りている。無理はしないつもりだがここからは私が相手をする。お前もその力を使え……。」
「…………。」
「お前もなのだろう……いや高位の存在と見受けするが。」
「どこから分かったの?」
「戦っている内に薄々とな。」
「そう、それじゃあ私も力を使わせてもらうかな……。」
二人の会話はこちらまで聞こえない。何を話しているのかが気になる。
この時ラノワさんは姉さんを見据えていた。それに対する姉さんは目を閉じ精神を落ち着かせている。すると突然、空が荒れ始めた。
観客達は、突然の事態騒然としているが……。目の前のそれが
「なんだよあれ……。」
思わず声が出る。
姉さんの体からも同じく黒い魔力が溢れていた。ラノワさんも同じく放ったそれと酷似しているがそれとは比較にならない……。
見た限り、ラノワさんの放ったそれと次元が違う。先程のあれの百倍はあろう……。その別次元の魔力が姉さんを包み込むと……天候は更に荒れていく……雷が暴れるように鳴り響き、雲は凄まじい速さで流れている。それはこの世の終わりを告げるかのようであった……。
震えている……。本能がアレと関わるなと告げていた。不意にあの男の一言が脳裏をかすめる。
「シファ・ラーニル。彼女は危険な存在だと私達は見ている。」
姉さんを包み込んでいた魔力が融解し弾けると、その姿を表す。先程の白を基調とした鎧が藍色に染まっていた。特徴的な銀の髪は漆黒の黒へと変わり果てている。
それは明らかに別人と化していた。顔はやはり溢れんばかりの美貌をのぞかせるが以前の優しさは既に無く冷酷な表情が浮かんでいる。そして、その背にはやはり悪魔のような羽が広げられていた。
「これでいいかな?」
姉さんがラノワさんに話し掛ける。しかし……。
「っ……まさか……あなた様は……。」
目の前の魔王は震えていた。驚愕と恐怖、それが混ざり言葉がままならなくなっていた。あまりの事なのかラノワさんは後退る
●
「何よあれ……シファ様なの……。」
「姉さんだよ……。姿は違う……でも……。」
俺の手が震えている。生物としての本能だろうか……目の前のソレに体が警告を鳴らしている。
「シラフ、大丈夫なの?」
クレシアが俺の様子を心配するが、
「大丈夫だよ、今は試合を見届けよう。」
そう見届け無ければならない。俺にはその義務がある……。
そして戦いは終盤へと向かっていた。既に実力差は歴然としている。震えている者が魔王なら、それを平然と見ている彼女は一体なんと言えるだろう。
姉さんがラノワさんに近づいていく、それに彼は怯えている様子であった。
「どうしたの、あなたの言う通りにしたのに?」
「っ…………。私より上位の存在であるあなた様に刃を向けるなど私には出来ない。」
「そう……。でも私にわざわざ力を使わせたのに?」
「っ……それは……。」
「とりあえず、彼には後で話を合わせるように伝えて。それで許してあげるから。」
姉さんは周りを見渡し、ラノワに話し掛ける。
「それで試合はどうするの?」
「私の負けだ。剣を向けた所で私はあなた様には及ばない事は百も承知……。」
「そう、つまらないな。あと、彼に体そろそろ返してあげたら。限界近いんでしょう?」
「仰せのままに……、我が王の子よ……。」
何かをつぶやいたラノワは、その姿が徐々に元の姿へと戻っていく。膝を着き、体力のほとんどをラノワは使い果たしている様子であった。
「意識はまだあるかな?」
「っ……。何が起こって……。」
「あなたの悪魔と少し色々とね……。」
「その姿は一体……。」
「まあ後で話すから、今は置いて……。それで試合続ける?」
「いや、もう充分です。」
ラノワは剣を鞘へ戻すと両手を上げる。降参の意を伝えるそれに試合終了の鐘が鳴り響く。悪魔と化している姉さんからは、それに似合わない無垢な笑顔を見せ、立ち上がれないラノワに手を伸ばす。
観客席からは盛大な歓声が巻き起こり、荒れた空が徐々に晴れていく……。
帝歴403年7月19日 午後3時28分47秒 試合時間28分34秒
ラノワ・ブルーム対シファ・ラーニルの戦いは彼女の勝利で幕を閉じた。前代未聞の八席を見事打ち破ったシファの登場はオキデンスに関わらず、学院全体に衝撃をもたらす。
外部である三都市の学院においてもその戦いぶりは端末からの中継により瞬く間に広がりを見せその名は瞬く間に知れ渡った。
その影響により、もう一つの記録的事態の情報は表向きに大きく出る事は無かった。
無名の編入生が戦力値を大幅な更新を達成。
八席を大幅に上回る数値を記録。
推定戦力4000万、オキデンスに新たな英雄の誕生か……。
無名の編入生、それが何者なのかそれを知る者はごく限られた者しかいない。
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