隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~
96話 自己紹介と住宅
教壇の前に立ってこれからのクラスメイトの顔を一通り見ながら僕は自己紹介をする。
「ご紹介に預かりましたラインです。これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて、短く自己紹介を終わらせる。
そしてパチパチという九人からの拍手を受けながら、僕は自分の席に戻った。
そして僕が席に着席すると同時にブレソウル先生は再び手に持っている紙に目を落とす。
「次、ネイ」
「はぇ!?」
おお! ネイが次席か! これはネイの家族に良い土産話になるぞ!
驚きつつも席を立って、教壇の前に立つネイ。
「ネイ、です。よろしくお願いします」
僕と同様に短く自己紹介を終えたネイはそそくさと席に戻ってきて即座に椅子に座った。こういう場に慣れていないんだろう。少し顔が赤く染まっている。
「この二人の成績は僅差だった。だがこの二人とそれ以降の生徒の成績とは圧倒的な差がある。皆、この二人のように努力を怠らないように」
そうブレソウル先生が言ったとたん教室中がざわめいた。そして向けられる敵意にも似た視線。うわー、皆ピリピリしてるなー。
そんなことを思っているとブレソウル先生が口を開いた。
「次、ジョゼット」
「はい!」
次の子は僕達みたいにあたふたすることなく、ブレソウル先生の言葉にすぐさま返事をした。あれ? あの金髪に碧眼の子は、確か筆記試験の時に黄金色のマントを身に着けていた子じゃん。合格してたんだ。
「俺はジョゼット。皆は知っていると思うが俺はこのマギスエス王国の第一王子だ。だがブレソウル先生が言ったように、ここではそんな立場など関係ない。同じ立場の者として接してほしい。以上だ」
なんと、驚いたことにジョゼット君はこの国の第一王子らしい。まさかあの黄金マント君がねぇ……。まぁ、悪い子ではなさそうだから話しかけられたら気軽に接してみるか。
「次、フレンダ」
「はい」
今度は紫色の髪を長く伸ばした、優雅な立ち振る舞いをしている女の子だ。そのような教育を受けてきたからだろうが、なかなか様になっている。
「私はフレンダ。これから一年間よろしくお願いしますわ」
これまた優雅に礼をしたフレンダさんはそう言って自分の席に戻って行った。
それから残り六人の自己紹介を終えた僕らは、再び教壇の前に立ったブレソウル先生の話しを聞く。
「これから二つ程説明をするからよく聞いておけ。まずは迷宮探索権についてだ」
お、いきなり気になる話題が出てきたな。これは集中して聞かなければ。
「まず、この学園は迷宮探索権を生徒に与えることが国から許可されている。つまりこの学園の生徒ならば誰でもその権利を手に入れるチャンスがあるというわけだ」
だが、とブレソウル先生は続ける。
「迷宮探索権を手に入れるには数ある実技の試験で実戦の経験が十分にあると判断されなければならない。現時点でそう判断されているのはこのクラスで四人。ライン、ネイ、ジョゼット、フレンダの四人だ。この者達には後日迷宮探索権についての手続きを行ってもらう」
おお! いきなり迷宮探索権が手に入るってことですか! 最高じゃないっすか!
そしてブレソウル先生の話しの続きを聞いた限りでは僕ら四人は学園で実技の授業がある時間、その授業を受けるかわりに地下迷宮に潜って魔物を狩ってこなければならないらしい。
ただし、ただゴブリン一匹だけ狩って終わりというわけではなく、入学試験の時と同様にそれぞれの魔物に設定されたポイントを合計で一定以上稼がなければならないらしい。ちなみに狩ってきた魔物や宝物は全て学園に買い取られる。
「これで迷宮探索権についての説明は終わりだ。何か質問はあるか?」
「はい!」
ここで僕は勢いよく手を上げた。どうしても聞かなければならないことがあるからだ。
「なんだ、ライン?」
「地下迷宮で狩った魔物は全て学園が買い取るとのことですが、その買い取りを拒否することは可能ですか? また、学園が所持している魔物の素材などは僕達生徒が買い取ることができるのでしょうか?」
地下迷宮にはこの王都の近くには存在しない魔物がたくさん存在している。そのため僕はそれらの魔物の素材を使って様々な魔道具を作りたいのだ。
「買取を拒否することも、学園が所持している魔物の素材を買い取ることも可能だ。ただし素材の買取については一定期間が過ぎるとそれらは全て冒険者ギルドに売られる。そのためそれまでの間ならば、という条件がつく」
「なるほど、分かりました」
どうやら強制的に全てを学園に買い取られるというわけではないようだ。その点は安心した……のだが、ここでブレソウル先生が心臓に悪いことを言ってきた。
「だがライン。それと他の者にも言っておくが、このような要望が通るのはこのゴールドクラスにいる間だけだ。本来ならば全ての魔物の素材は学園に強制的に買い取られ、それらの素材を生徒に売ることも禁止されている。ゴールドクラスを除いた全てのクラスはそのルールに縛られる。分かったな?」
「はい」
本当に油断できない学校だな、ここは。一瞬でも気を抜くと足下を掬われ、シルバークラス以下に落ちる危険がある。そしてシルバークラス以下はルールに縛られる。殆ど自由に過ごせるのはゴールドクラスだけってことか。
「他には何か質問はあるか?」
ブレソウル先生はそう言って教室を見回したが誰からも手が挙がることは無かった。
「では、次の話に移る。住居についてだ」
住居? ここの学園には巨大な学生寮があるのは入学試験の時に見たけど……。
「まずはこれを見てくれ。[ストレージ]」
そう言ってブレソウル先生は[ストレージ]から薄い冊子を何冊か取り出した。先生が[ストレージ]を使った瞬間にこのクラスの殆どの生徒が感嘆の声を上げた。そういえば収納魔法を使える人は少ないんだっけ。
ブレソウル先生はそんな生徒達の声に大した反応を見せることなくその冊子を皆に配りだした。
受け取った冊子の中を見てみると、そこには幾つかの寮の部屋と一戸建ての住宅が何種類か載っていた。
「ゴールドクラスの生徒はこの冊子に載っている寮や家を借りることができる。例え一戸建て住宅にすむことになっても、この冊子に載っている住宅であれば、家事は全て学園から派遣されてくる者が行うことになるからその点は安心しろ。これもゴールドクラスの特権だな。シルバークラス以下はこの学園にある寮に止まることになるが、ゴールドクラスの場合、寮に住むか学園区域内にある一戸建て住宅に住むことが可能になる」
おお! ゴールドクラス最高じゃないっすか!
「ただし、ゴールドクラスからシルバークラス以下に落ちた場合は強制的にその住宅から追い出され、この学園の寮に住むことになる」
ですよねー。予想していたけど、実際に言われるとプレッシャーが凄いかかるな。
そのプレッシャーを半ば紛らわすように僕は冊子をペラペラと捲る。
へー。寮には幾つか種類があるんだな。あ、これはシルバークラス以下が使うことになる寮なのか。なるほど、シルバークラスは一人一部屋でカッパークラスは二人共用の部屋、アイアンクラスにもなると四人共用の部屋になるんだな。
まぁ当然のように寮生活は無しだ。僕は一戸建て住宅に住んで心置きなく魔道具を作りたいのだ。
というわけで僕は一戸建て住宅が載っているページを開いた。
「ご紹介に預かりましたラインです。これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて、短く自己紹介を終わらせる。
そしてパチパチという九人からの拍手を受けながら、僕は自分の席に戻った。
そして僕が席に着席すると同時にブレソウル先生は再び手に持っている紙に目を落とす。
「次、ネイ」
「はぇ!?」
おお! ネイが次席か! これはネイの家族に良い土産話になるぞ!
驚きつつも席を立って、教壇の前に立つネイ。
「ネイ、です。よろしくお願いします」
僕と同様に短く自己紹介を終えたネイはそそくさと席に戻ってきて即座に椅子に座った。こういう場に慣れていないんだろう。少し顔が赤く染まっている。
「この二人の成績は僅差だった。だがこの二人とそれ以降の生徒の成績とは圧倒的な差がある。皆、この二人のように努力を怠らないように」
そうブレソウル先生が言ったとたん教室中がざわめいた。そして向けられる敵意にも似た視線。うわー、皆ピリピリしてるなー。
そんなことを思っているとブレソウル先生が口を開いた。
「次、ジョゼット」
「はい!」
次の子は僕達みたいにあたふたすることなく、ブレソウル先生の言葉にすぐさま返事をした。あれ? あの金髪に碧眼の子は、確か筆記試験の時に黄金色のマントを身に着けていた子じゃん。合格してたんだ。
「俺はジョゼット。皆は知っていると思うが俺はこのマギスエス王国の第一王子だ。だがブレソウル先生が言ったように、ここではそんな立場など関係ない。同じ立場の者として接してほしい。以上だ」
なんと、驚いたことにジョゼット君はこの国の第一王子らしい。まさかあの黄金マント君がねぇ……。まぁ、悪い子ではなさそうだから話しかけられたら気軽に接してみるか。
「次、フレンダ」
「はい」
今度は紫色の髪を長く伸ばした、優雅な立ち振る舞いをしている女の子だ。そのような教育を受けてきたからだろうが、なかなか様になっている。
「私はフレンダ。これから一年間よろしくお願いしますわ」
これまた優雅に礼をしたフレンダさんはそう言って自分の席に戻って行った。
それから残り六人の自己紹介を終えた僕らは、再び教壇の前に立ったブレソウル先生の話しを聞く。
「これから二つ程説明をするからよく聞いておけ。まずは迷宮探索権についてだ」
お、いきなり気になる話題が出てきたな。これは集中して聞かなければ。
「まず、この学園は迷宮探索権を生徒に与えることが国から許可されている。つまりこの学園の生徒ならば誰でもその権利を手に入れるチャンスがあるというわけだ」
だが、とブレソウル先生は続ける。
「迷宮探索権を手に入れるには数ある実技の試験で実戦の経験が十分にあると判断されなければならない。現時点でそう判断されているのはこのクラスで四人。ライン、ネイ、ジョゼット、フレンダの四人だ。この者達には後日迷宮探索権についての手続きを行ってもらう」
おお! いきなり迷宮探索権が手に入るってことですか! 最高じゃないっすか!
そしてブレソウル先生の話しの続きを聞いた限りでは僕ら四人は学園で実技の授業がある時間、その授業を受けるかわりに地下迷宮に潜って魔物を狩ってこなければならないらしい。
ただし、ただゴブリン一匹だけ狩って終わりというわけではなく、入学試験の時と同様にそれぞれの魔物に設定されたポイントを合計で一定以上稼がなければならないらしい。ちなみに狩ってきた魔物や宝物は全て学園に買い取られる。
「これで迷宮探索権についての説明は終わりだ。何か質問はあるか?」
「はい!」
ここで僕は勢いよく手を上げた。どうしても聞かなければならないことがあるからだ。
「なんだ、ライン?」
「地下迷宮で狩った魔物は全て学園が買い取るとのことですが、その買い取りを拒否することは可能ですか? また、学園が所持している魔物の素材などは僕達生徒が買い取ることができるのでしょうか?」
地下迷宮にはこの王都の近くには存在しない魔物がたくさん存在している。そのため僕はそれらの魔物の素材を使って様々な魔道具を作りたいのだ。
「買取を拒否することも、学園が所持している魔物の素材を買い取ることも可能だ。ただし素材の買取については一定期間が過ぎるとそれらは全て冒険者ギルドに売られる。そのためそれまでの間ならば、という条件がつく」
「なるほど、分かりました」
どうやら強制的に全てを学園に買い取られるというわけではないようだ。その点は安心した……のだが、ここでブレソウル先生が心臓に悪いことを言ってきた。
「だがライン。それと他の者にも言っておくが、このような要望が通るのはこのゴールドクラスにいる間だけだ。本来ならば全ての魔物の素材は学園に強制的に買い取られ、それらの素材を生徒に売ることも禁止されている。ゴールドクラスを除いた全てのクラスはそのルールに縛られる。分かったな?」
「はい」
本当に油断できない学校だな、ここは。一瞬でも気を抜くと足下を掬われ、シルバークラス以下に落ちる危険がある。そしてシルバークラス以下はルールに縛られる。殆ど自由に過ごせるのはゴールドクラスだけってことか。
「他には何か質問はあるか?」
ブレソウル先生はそう言って教室を見回したが誰からも手が挙がることは無かった。
「では、次の話に移る。住居についてだ」
住居? ここの学園には巨大な学生寮があるのは入学試験の時に見たけど……。
「まずはこれを見てくれ。[ストレージ]」
そう言ってブレソウル先生は[ストレージ]から薄い冊子を何冊か取り出した。先生が[ストレージ]を使った瞬間にこのクラスの殆どの生徒が感嘆の声を上げた。そういえば収納魔法を使える人は少ないんだっけ。
ブレソウル先生はそんな生徒達の声に大した反応を見せることなくその冊子を皆に配りだした。
受け取った冊子の中を見てみると、そこには幾つかの寮の部屋と一戸建ての住宅が何種類か載っていた。
「ゴールドクラスの生徒はこの冊子に載っている寮や家を借りることができる。例え一戸建て住宅にすむことになっても、この冊子に載っている住宅であれば、家事は全て学園から派遣されてくる者が行うことになるからその点は安心しろ。これもゴールドクラスの特権だな。シルバークラス以下はこの学園にある寮に止まることになるが、ゴールドクラスの場合、寮に住むか学園区域内にある一戸建て住宅に住むことが可能になる」
おお! ゴールドクラス最高じゃないっすか!
「ただし、ゴールドクラスからシルバークラス以下に落ちた場合は強制的にその住宅から追い出され、この学園の寮に住むことになる」
ですよねー。予想していたけど、実際に言われるとプレッシャーが凄いかかるな。
そのプレッシャーを半ば紛らわすように僕は冊子をペラペラと捲る。
へー。寮には幾つか種類があるんだな。あ、これはシルバークラス以下が使うことになる寮なのか。なるほど、シルバークラスは一人一部屋でカッパークラスは二人共用の部屋、アイアンクラスにもなると四人共用の部屋になるんだな。
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