隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~
74話 戦闘と分析
顔を空に向け、エビ反りで再び宙を舞う魔人。
顎を強く蹴ることによって脳震盪を起こさせたから、ここからは一方的にマウントを取ってそのまま僕が勝つ……というプランを頭の中で描いていたが、突如魔人はどういうわけか頭を中心に縦に回転し、そのまま地面に足を付けて着地した。
「ガアアアア!」
激昂している。
それはこの魔人がどのようなことを言いたいのかさっぱり分からない僕でも理解できた。
魔人の真っ赤な目が怪しく光る。
瞬間。
魔人は地を蹴り、一息に僕の懐まで入ってきた。
「ごふぁ……!?」
パワードスーツ越しから腹に伝わる衝撃。
そして両足が宙に浮いている。
この時になって初めて僕は魔人に腹を殴られたのだと気付いた。
ゆっくりと宙を舞う。
そして着地点に目を向ければそこには魔人が。
左足を軸にして、上半身を捻り、右足の力を貯めている。
マズい!
「[ブースト]! がはぁ!?」
間一髪で間に合った[ブースト]。
しかしそれで防御力を上げても、僕の体はミシミシと嫌な音をたてて吹き飛んだ。
再び宙を舞う。
すると耳に風切り音に混じって足音が聞こえてきた。
嫌な予感を感じ、そちらに目を向ける。
するとそこには、やはり魔人が。
落下地点で僕を待ち構えていた。
ニタリと魔人の顔が歪む。
すると魔人は頭を下にして両手を地に付け始めた。
あれは……まさか!?
「[ブースト]! [アイアンボディ]! [剛体]!」
僕の全魔力の半分をこれらのアーツに注ぎ込む。
直後。
凄まじいの一言では表せない衝撃が僕の顎から脳天にかけて突き抜けた。
「が……は……」
一瞬の暗転。
その後、空が見えた。
そしてそこに浮かぶ赤い水玉も。
それが自分の口から出た血だと理解した瞬間、体中を電流が駆け巡るように記憶が蘇った。
当然、今の状況も理解した。
手は動く。
足も動く。
体も……動く!
限られた視界の中で素早く魔人の姿を探し出す。
いた。
奴は両手を地に付き、体を縦に伸ばした倒立の状態でいる。
攻撃した直後の体勢だ。
「ふっ!」
肺の中の空気を吐き出しながら体を捻り足を下に。
そして着地。
「くっ……」
口端から血が零れ出る。が、それに構っている暇はない。
魔人は既にこちらを向いて走ってきているからだ。
「……[風撃]」
試しに殺傷力を最大にまで高めた[風撃]を放つ。が、それに被弾しても魔人は顔色一つ変えず走ってきている。
やはり堅いな……。
再び拳を構え、魔人が目の前まで走り寄ってくるのを見ながら頭を回転させる。
(この前倒した魔人を解体した経験から言えば、堅いのは今僕が着ている魔人の外骨格のような皮膚と骨だけだ)
「ガア!」
左手で魔人の右パンチをいなし、右半身を下げる事によって左手のパンチを躱す。
(肉は他の魔物や獣と比べれば遥かに堅かったけど、ナイフで切れない程の固さではなかった)
「ガア!!」
左足を出して繰り出してきた前蹴りを横にステップを踏むことで避ける。
そして風切り音を鳴らしながら迫り来る乱暴な上段蹴りをかがむことによって躱す。
(そしてそれは内臓も同じ。ただ他があるとすれば……関節か)
上段蹴りを放ったことによりがら空きになった魔人の軸足をすかさず刈る。
「ガ!?」
(だけど関節技を仕掛けて例えそれが上手く極まったとしても……僕の力じゃアーツを使っても恐らくすぐに振りほどかれる)
背中から落ちる魔人。
その魔人に向かって僕は足を振り上げ、そして振り下ろす。かかと落としだ。
だがそれを喰らった魔人は声一つ上げること無く、地に背中をつけた。
(やっぱりいくら外骨格のような皮膚の上から攻撃したところで意味はないな)
魔人が僕の足を掴もうとしてきたので、素早くその場から退く。
そして立ち上がりながら再びニタリと顔を歪ませる魔人。
「ガァ!」
直後こちらに走り寄り、パンチを連続して繰り出してきた。
それらの猛攻をいなし、払い、躱すことでやり過ごす。
(関節技もダメ。皮膚を攻撃してもだめ。となると残りは……内臓、か。見様見真似の産物しかできないけど大丈夫だろ)
するとパンチの中に蹴りが混ざるようになってきた。
だけど、甘い。
そんな雑なパンチや蹴りを正面からいくら繰り出したところでアンナに鍛えられた僕には通用しない。
こうやって攻撃をやり過ごしている間も隙だらけだ。
パンチとパンチの間。パンチと蹴りの間。蹴りと蹴りの間……ここ!
手のひらを開き、手首に近い部分で力一杯撃つ。狙いは鳩尾だ!
「ガハァ!?」
目を見開き、口を大きく開ける魔人。
そいつはヨロヨロと数歩下がりながら両手で鳩尾を押さえた。
よほど防御力に自信があったのだろうか。
その顔には痛みによる歪みと何故という困惑が、ない混ぜになって浮かんでいるように見える。
(できたな)
掌底打ち。
それは衝撃を外部ではなく内部、つまり内臓に直接ダメージを与えることができる技だ。
これまで使っていた掌底打ちは見様見真似、聞きかじった知識のみでやっていたのだが、まさかこうも上手くいくとは。
まぁその殆どは発動し続けていた[ブースト]とこのパワードスーツのおかげだろうが。
力でごり押しすれば何とかなるものなんだな。
「ウゥ……」
ともかく今鳩尾を抑えて苦しんでいる魔人は隙だらけなので、その間に一つ攻撃をさせてもらおう。
左フックで顎を側面から殴る。
もう一度脳震盪を起こさせて、それが魔人に対して効くのかどうかの検証だ。
すると魔人は数歩よそめいた後、すぐに体勢を立て直した。
どうやら効くには効くがそれは一瞬だけで、それほど効果が無いらしい。
なるほど。
ならばやはり掌底のような衝撃を内部に直接与える技の方が良いみたいだ。
「ガァ!」
両手を広げて僕を捕まえんと跳んできた魔人。
その脇を右にすり抜けざまに、鳩尾に左掌底を撃つ。
しかし今度は上手くいかなかったようだ。
「ガア!!」
苛ただしげに、背後に回った僕に対して回し蹴りとも言えないような蹴りを放つ魔人。
それをしゃがむことで躱し、そのままの体勢で再びこいつの軸足を刈る。
今度はさっきのかかと落としのような生ぬるい攻撃はしない。
宙に浮かんでいる魔人の足のつま先とかかとを両手で掴み、無理やり曲がらない方向に回す。
「ガ!?」
回す際に魔力を[ブースト]に使ったからか比較的に楽に魔人の足を捻ることができた。
やはり関節は皮膚と違ってそこまで堅くない。
こうやって抵抗できない間に関節技を極めていくのもいいな。
魔人の皮膚という素材に傷が付かないからなおよし。
「ガァ!」
しかし魔人は背中から落ちた直後に、後ろに下がり、素早く立ち上がった。
それも僕が捻ったはずの足が元に戻った状態で。
……なんだその異常な回復速度は。
化け物だな。
「ガアアアアア!」
すると魔人は叫び声を上げながら僕に飛びかかってきた。
顎を強く蹴ることによって脳震盪を起こさせたから、ここからは一方的にマウントを取ってそのまま僕が勝つ……というプランを頭の中で描いていたが、突如魔人はどういうわけか頭を中心に縦に回転し、そのまま地面に足を付けて着地した。
「ガアアアア!」
激昂している。
それはこの魔人がどのようなことを言いたいのかさっぱり分からない僕でも理解できた。
魔人の真っ赤な目が怪しく光る。
瞬間。
魔人は地を蹴り、一息に僕の懐まで入ってきた。
「ごふぁ……!?」
パワードスーツ越しから腹に伝わる衝撃。
そして両足が宙に浮いている。
この時になって初めて僕は魔人に腹を殴られたのだと気付いた。
ゆっくりと宙を舞う。
そして着地点に目を向ければそこには魔人が。
左足を軸にして、上半身を捻り、右足の力を貯めている。
マズい!
「[ブースト]! がはぁ!?」
間一髪で間に合った[ブースト]。
しかしそれで防御力を上げても、僕の体はミシミシと嫌な音をたてて吹き飛んだ。
再び宙を舞う。
すると耳に風切り音に混じって足音が聞こえてきた。
嫌な予感を感じ、そちらに目を向ける。
するとそこには、やはり魔人が。
落下地点で僕を待ち構えていた。
ニタリと魔人の顔が歪む。
すると魔人は頭を下にして両手を地に付け始めた。
あれは……まさか!?
「[ブースト]! [アイアンボディ]! [剛体]!」
僕の全魔力の半分をこれらのアーツに注ぎ込む。
直後。
凄まじいの一言では表せない衝撃が僕の顎から脳天にかけて突き抜けた。
「が……は……」
一瞬の暗転。
その後、空が見えた。
そしてそこに浮かぶ赤い水玉も。
それが自分の口から出た血だと理解した瞬間、体中を電流が駆け巡るように記憶が蘇った。
当然、今の状況も理解した。
手は動く。
足も動く。
体も……動く!
限られた視界の中で素早く魔人の姿を探し出す。
いた。
奴は両手を地に付き、体を縦に伸ばした倒立の状態でいる。
攻撃した直後の体勢だ。
「ふっ!」
肺の中の空気を吐き出しながら体を捻り足を下に。
そして着地。
「くっ……」
口端から血が零れ出る。が、それに構っている暇はない。
魔人は既にこちらを向いて走ってきているからだ。
「……[風撃]」
試しに殺傷力を最大にまで高めた[風撃]を放つ。が、それに被弾しても魔人は顔色一つ変えず走ってきている。
やはり堅いな……。
再び拳を構え、魔人が目の前まで走り寄ってくるのを見ながら頭を回転させる。
(この前倒した魔人を解体した経験から言えば、堅いのは今僕が着ている魔人の外骨格のような皮膚と骨だけだ)
「ガア!」
左手で魔人の右パンチをいなし、右半身を下げる事によって左手のパンチを躱す。
(肉は他の魔物や獣と比べれば遥かに堅かったけど、ナイフで切れない程の固さではなかった)
「ガア!!」
左足を出して繰り出してきた前蹴りを横にステップを踏むことで避ける。
そして風切り音を鳴らしながら迫り来る乱暴な上段蹴りをかがむことによって躱す。
(そしてそれは内臓も同じ。ただ他があるとすれば……関節か)
上段蹴りを放ったことによりがら空きになった魔人の軸足をすかさず刈る。
「ガ!?」
(だけど関節技を仕掛けて例えそれが上手く極まったとしても……僕の力じゃアーツを使っても恐らくすぐに振りほどかれる)
背中から落ちる魔人。
その魔人に向かって僕は足を振り上げ、そして振り下ろす。かかと落としだ。
だがそれを喰らった魔人は声一つ上げること無く、地に背中をつけた。
(やっぱりいくら外骨格のような皮膚の上から攻撃したところで意味はないな)
魔人が僕の足を掴もうとしてきたので、素早くその場から退く。
そして立ち上がりながら再びニタリと顔を歪ませる魔人。
「ガァ!」
直後こちらに走り寄り、パンチを連続して繰り出してきた。
それらの猛攻をいなし、払い、躱すことでやり過ごす。
(関節技もダメ。皮膚を攻撃してもだめ。となると残りは……内臓、か。見様見真似の産物しかできないけど大丈夫だろ)
するとパンチの中に蹴りが混ざるようになってきた。
だけど、甘い。
そんな雑なパンチや蹴りを正面からいくら繰り出したところでアンナに鍛えられた僕には通用しない。
こうやって攻撃をやり過ごしている間も隙だらけだ。
パンチとパンチの間。パンチと蹴りの間。蹴りと蹴りの間……ここ!
手のひらを開き、手首に近い部分で力一杯撃つ。狙いは鳩尾だ!
「ガハァ!?」
目を見開き、口を大きく開ける魔人。
そいつはヨロヨロと数歩下がりながら両手で鳩尾を押さえた。
よほど防御力に自信があったのだろうか。
その顔には痛みによる歪みと何故という困惑が、ない混ぜになって浮かんでいるように見える。
(できたな)
掌底打ち。
それは衝撃を外部ではなく内部、つまり内臓に直接ダメージを与えることができる技だ。
これまで使っていた掌底打ちは見様見真似、聞きかじった知識のみでやっていたのだが、まさかこうも上手くいくとは。
まぁその殆どは発動し続けていた[ブースト]とこのパワードスーツのおかげだろうが。
力でごり押しすれば何とかなるものなんだな。
「ウゥ……」
ともかく今鳩尾を抑えて苦しんでいる魔人は隙だらけなので、その間に一つ攻撃をさせてもらおう。
左フックで顎を側面から殴る。
もう一度脳震盪を起こさせて、それが魔人に対して効くのかどうかの検証だ。
すると魔人は数歩よそめいた後、すぐに体勢を立て直した。
どうやら効くには効くがそれは一瞬だけで、それほど効果が無いらしい。
なるほど。
ならばやはり掌底のような衝撃を内部に直接与える技の方が良いみたいだ。
「ガァ!」
両手を広げて僕を捕まえんと跳んできた魔人。
その脇を右にすり抜けざまに、鳩尾に左掌底を撃つ。
しかし今度は上手くいかなかったようだ。
「ガア!!」
苛ただしげに、背後に回った僕に対して回し蹴りとも言えないような蹴りを放つ魔人。
それをしゃがむことで躱し、そのままの体勢で再びこいつの軸足を刈る。
今度はさっきのかかと落としのような生ぬるい攻撃はしない。
宙に浮かんでいる魔人の足のつま先とかかとを両手で掴み、無理やり曲がらない方向に回す。
「ガ!?」
回す際に魔力を[ブースト]に使ったからか比較的に楽に魔人の足を捻ることができた。
やはり関節は皮膚と違ってそこまで堅くない。
こうやって抵抗できない間に関節技を極めていくのもいいな。
魔人の皮膚という素材に傷が付かないからなおよし。
「ガァ!」
しかし魔人は背中から落ちた直後に、後ろに下がり、素早く立ち上がった。
それも僕が捻ったはずの足が元に戻った状態で。
……なんだその異常な回復速度は。
化け物だな。
「ガアアアアア!」
すると魔人は叫び声を上げながら僕に飛びかかってきた。
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