隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~
4話 転生と心機一転
言葉を発した瞬間、頭のてっぺんから足のつま先までの感覚がゾワゾワッと戻ったのを感じた。
「おぉぅ……」
気持ち悪くて思わず声に出てしまった。
それよりも目の前の赤髪の美人さんはどうしたんだろう?
(涙と鼻水で美人さんが台無しですよ)と心の中で呟きつつ、口からは別の言葉を出す日本人の特技を使う。
「あの……。だいじょ「坊ちゃま!!」うへぇぇい!?」
「頭から血が出てるのでじっとしてください!!」
後ろから急に叫ばれたから、変な声が出たわ!
後、明らかに僕の事坊ちゃまって言ったよね!?どういうことなのさ!?
「あの、なんで坊ちゃ「坊ちゃま!!動かないで下さい!!」まぁぁいぃ!?」
(だから叫ばないでくれよ!!)と思いつつも、また叫ばれるのは嫌なので大人しくしておこう。
それよりも何故先程から僕の事を坊ちゃまって呼んでるの?心当たりが全く無いんですけど!!
混乱し始めた頭の中をゆっくりと整理していると、一度つむじの辺りがじんわりと温かくなった。その温かさが引くと、
「これで大丈夫でしょう」
先程から僕の後ろで叫んでいた女性の声が聞こえてきた。
「坊ちゃま、他に何か体に異常はありませんか?」
んー……特に、体に異常は…………ありますねー!
それも、一目みてすぐに分かるやつが!!
「何か……つま先が殆ど見えないくらいお腹が出てる……」
それを言った瞬間、空気がピキーンと凍る音が聞こえた気がした。
「えっと……その……なんといいますか……坊ちゃまのお腹に関しては……今すぐには治すことはできません……」
うわー。凄い気まずいそうな声が後ろから聞こえてきた。何か地雷を踏み抜いたみたい……。
この空気どうしよう……。
「あの……坊ちゃま。私の名前分かりますか……?」
すると、先ほどまで泣いていた赤い髪のメイドさんがおずおずとそんなことを聞いてきた。
「いや、分かるもなにもーー」
初めてあった人の名前なんか分かるわけないじゃないですか。ははは。
と続けて言おうとした時、急に頭の中であるテレビドラマの内容が鮮明に浮かんできた。
その内容は、周りの人々に愛されて育った主人公が他人の気持ちを考えずに我が儘ばかり言う問題児になっていく、という話。
そして最期は、ベッドから転がり落ちてそばの棚に激突し、棚に置いてあった物が主人公の上に降り注いでおしまい。という全然面白くない内容。
そして、そのドラマの中に出てくる人物にそっくりな人が目の前に……。
「……アンナ?」
ポツリと呟くように言うと
「そうです!! アンナです!! 良かったぁぁぁ!! 『誰?』とか言われたので、記憶喪失になってしまわれたのかと心配しましたー!!」
いや、少し待ってくれ。じゃあ、さっきから僕の後ろで叫んでいた水色の髪のメイドさんは……
「……サーシャ?」
「ええ、そうです。私の名前はサーシャですよ、坊ちゃま。」
サーシャは可笑しそうにクスクスと笑っている。
じゃあ僕はあのテレビドラマの世界に……!?
いや、今も頭の中で鮮明に浮かんでいる光景の中には、一つの物語として明らかに必要ないであろう部分までも浮かび上がってくる。例えば、トイレで用を足す場面や、嫌いな食べ物を食べた直後に吐いた場面などなど……。
つまり、これはテレビドラマなどではなく……。
「……『記憶』?」
「どうされました? 坊ちゃま。まだどこか痛みがありますか?」
「い、いや、大丈夫。心配かけてごめん。もう大丈夫だから。後は、僕一人でやるよ」
「!? ……承知しました。ですが、身体に何か異変がおきたらすぐに呼んで下さい」
一瞬驚いたような顔をした後、そう言って、サーシャとアンナは部屋から出て行った。
◇◆◇◆◇◆
とりあえず、床に散らばっている本とガラクタを片付けながら、自分の身に何が起こったのか考える。
今はっきりと分かっていることは、僕はこの間までのもやし体形の体から今のまん丸な体に僕の魂が宿ったんじゃないか、ということだ。
しかし、それならこの体の元の持ち主の魂がどうなったのか分からない。
と、そこまで考えたとき脳裏に先程の暗い空間での出来事が浮かんできた。
あそこで最初に聞いた音は、この体の『記憶』にある棚にしまってあった物が降ってくる音と一致しているじゃんか!!
それに、『記憶』では物が降り注いできた所で終わっているが、あの空間ではその後に何かが僕の横を通り過ぎて行ったような音が聞こえたのを覚えている。
もしかしたらあの時、僕の横を通り過ぎたのはこの体の元の持ち主、ライン=ノルド君の魂ではなかろうか?
ということは、あの真っ暗な空間は、やはりあの世と呼ばれるところだったのだろうか?
いや、僕が、おそらく前の世界と全く異なる世界とはいえ、この世に戻ってきているので、あそこはあの世の入り口的なものだったのだろう。
ということは今の僕は疑似転生した状態ということか?
そこまで考えたとき丁度片付けが終わった。
「ふぅ……。少し動いただけなのに、汗が凄いな……」
前世のもやしのような体と違い、まん丸なこの体は凄く動かしにくい。足下が見えないから歩きにくいし、お腹がつっかえて上手くしゃがめないし、運動不足と脂肪のせいか胸が暑いし……。
「あぁーー……疲れた!!」
とりあえずベッドにゴロンと寝ころんで休憩する。
……ギシィ。
……このベッド大丈夫? 急に脚が折れたりしない?
一応足は外に出しておこう。……棚の反対側に。また転んで召天とか嫌だからね。
◇◆◇◆◇◆
見慣れない白に塗装された木製の天井をボーッと眺めていると、『記憶』が頭の中で再生される。
『サーシャ。どうやったら魔法を使えるようになるの?』
これは……4歳の時の『記憶』か。
子供ならではの質問だな。微笑ましさについつい頬が緩んでしまう。
『そうですね……まずは、毎日魔力を感じる練習をがんばることですね。それができれば魔法を使うことが出来ると思いますよ』
ははは。サーシャも上手いこと言うね。向こうの世界で言う、《毎日いいことをしていたら、サンタさんがクリスマスにプレゼントを持ってきてくれると思うよ》ってやつと同じような感じか。なら、怪しまれないようにしばらくは、魔法は存在するって信じているように立ち回るか。
『えー。なんかめんどくさそうだからやだ』
おいおい。その歳で面倒くさがってたら大人になったとき苦労するよ?
『そうですか……。ですが、せめて魔力は扱えるようになった方がいいと思いますよ』
ん?どういうことだ……?
何故かサーシャが真剣な顔をしてライン君に言っている。まるで、サーシャもサンタさん……じゃなくて、魔法を信じているみたいな顔をしているぞ?
『坊ちゃまもご存知の通り、私達の身の回りには魔導具で溢れています』
『え? そうなの?』
『……ご存知無かったのですね。そうなのでございます。魔導具は人間の魔力や魔石の中に蓄えられている魔力を使って動いています。なので、魔力を扱えなければこれから先、ずっと不便な思いをしながら生きていくことになるでしょう』
『んー。だいじょうぶだよ。なにかあったらサーシャとアンナがやるし、とうさんとかあさんにいえばいろいろやってくれるからねー』
なんか色々と重大な事実が発覚したがそれよりも言いたいことがある。
よくこんな生活で今まで生きてこれたな!! 僕がサーシャだったらこの家から出て行くか、後ろから刺してるよ!!
それに、この子の他の記憶の殆どが食べ物と夢の内容なんだけど!! どれだけ不健康な生活を続けてきたんだよ!! しかも、この世界の情報が殆どないんですけど!!
はぁ……。それでも『記憶』のおかげか、こちらの言葉が理解できるようになっただけでも僥倖か。後は、この子の不健康な体は僕が引き継いでしまったから何とかしないとなぁ……。
閑話休題
他にも『記憶』の中のサーシャとアンナの言からこの世界には魔法が存在するという情報を得たので、早速魔力を感じるところから始めてみようと思う。
んーー……魔力魔力魔力魔力魔力魔力……。
「さっぱりわからん!!」
何だよ魔力を感じるって!! 何も感じないんですけど!!
なんとか魔力を感じようと四苦八苦していると、ドアがコンコンとなった。
「坊ちゃま、どうかなさいましたか!? 坊ちゃまの声が聞こえたので、何かお体に異変が起きたのかと思って来たのですが!」
この声は……。
「アンナか。ごめん。何でもないよ」
そう言いつつ、ドアを開けてアンナを部屋の中に入れ、ベッドに座るように促す。その隣に僕もすわ……ものすごい慎重に座る。
…………ギシィィ。
ねぇ、このベッド本当に大丈夫?結構怖いんだけど。急に脚が折れたりしないでね?
◇◆◇◆◇◆
「アンナは魔法って使える?」
魔力を感じる過程でいきなり躓いたので、疑問をぶつけてみる。するとアンナは訝しげにしつつ
「はぁ……魔法ならば人並み以上には使えますが……。と言いますか、全ての人が魔法を使えると思いますよ」
と言った。
「え、そうなの?」
「はい、そうですよ」
おぉ! マジか! なら僕も使えると言うことか!
「じゃあ、魔法の使い方を教えてよ! 全然魔力を感じとれないんだ!」
「えぇ、別にそれぐらいならば構いませんが……」
そして今度は、アンナが恐る恐ると質問をしてくる。
「あの……坊ちゃま。やはりどこか具合が悪いのでは?」
「え?そんなことないけど。何で?」
「いえ、これまで坊ちゃまが食べることと寝ること以外に興味を持たれたことが御座いませんから。それにサーシャさんから坊ちゃまは魔法に余り興味を示さないとお聞きしていたので……」
うーん……。どう答えようか……。
中身が入れ替わるなんて普通は考えないから心機一転したって言えば誤魔化せるはず。せいぜい、まるで別人のようになったと考えるのが関の山だろう。なら、後は勢いで乗り切る!
「あぁ。あれだよ。これまでの行いを省みて心機一転したんだよ!! 今まで周りの人に迷惑を書けてきたから、その分今度は皆が笑顔になれるように努力しよう!! 的な?」
「は、はぁ。なるほど……」
んー。あんまり信じてなさそうだけど大丈夫でしょう! そりゃあ、今まで食っちゃ寝を繰り返していた人が急にこんなこと言っても説得力無いからねぇ。ま、今はこれでいいさ。大事なのはこれからだからね。
「ちなみに、坊ちゃまはどのような魔法を使いたいのですか?」
「うーん……。どのような魔法、か……。やっぱり炎を飛ばして遠くの敵を攻撃したり、物を触れずに動かしたりするような魔法かな」
「なるほど……。では、私ではなくサーシャさんに教わってはどうでしょうか?」
ん? なんでここでいきなりサーシャが出てくるの? 皆が魔法を使えるなら、誰でもいいのでは?
「おぉぅ……」
気持ち悪くて思わず声に出てしまった。
それよりも目の前の赤髪の美人さんはどうしたんだろう?
(涙と鼻水で美人さんが台無しですよ)と心の中で呟きつつ、口からは別の言葉を出す日本人の特技を使う。
「あの……。だいじょ「坊ちゃま!!」うへぇぇい!?」
「頭から血が出てるのでじっとしてください!!」
後ろから急に叫ばれたから、変な声が出たわ!
後、明らかに僕の事坊ちゃまって言ったよね!?どういうことなのさ!?
「あの、なんで坊ちゃ「坊ちゃま!!動かないで下さい!!」まぁぁいぃ!?」
(だから叫ばないでくれよ!!)と思いつつも、また叫ばれるのは嫌なので大人しくしておこう。
それよりも何故先程から僕の事を坊ちゃまって呼んでるの?心当たりが全く無いんですけど!!
混乱し始めた頭の中をゆっくりと整理していると、一度つむじの辺りがじんわりと温かくなった。その温かさが引くと、
「これで大丈夫でしょう」
先程から僕の後ろで叫んでいた女性の声が聞こえてきた。
「坊ちゃま、他に何か体に異常はありませんか?」
んー……特に、体に異常は…………ありますねー!
それも、一目みてすぐに分かるやつが!!
「何か……つま先が殆ど見えないくらいお腹が出てる……」
それを言った瞬間、空気がピキーンと凍る音が聞こえた気がした。
「えっと……その……なんといいますか……坊ちゃまのお腹に関しては……今すぐには治すことはできません……」
うわー。凄い気まずいそうな声が後ろから聞こえてきた。何か地雷を踏み抜いたみたい……。
この空気どうしよう……。
「あの……坊ちゃま。私の名前分かりますか……?」
すると、先ほどまで泣いていた赤い髪のメイドさんがおずおずとそんなことを聞いてきた。
「いや、分かるもなにもーー」
初めてあった人の名前なんか分かるわけないじゃないですか。ははは。
と続けて言おうとした時、急に頭の中であるテレビドラマの内容が鮮明に浮かんできた。
その内容は、周りの人々に愛されて育った主人公が他人の気持ちを考えずに我が儘ばかり言う問題児になっていく、という話。
そして最期は、ベッドから転がり落ちてそばの棚に激突し、棚に置いてあった物が主人公の上に降り注いでおしまい。という全然面白くない内容。
そして、そのドラマの中に出てくる人物にそっくりな人が目の前に……。
「……アンナ?」
ポツリと呟くように言うと
「そうです!! アンナです!! 良かったぁぁぁ!! 『誰?』とか言われたので、記憶喪失になってしまわれたのかと心配しましたー!!」
いや、少し待ってくれ。じゃあ、さっきから僕の後ろで叫んでいた水色の髪のメイドさんは……
「……サーシャ?」
「ええ、そうです。私の名前はサーシャですよ、坊ちゃま。」
サーシャは可笑しそうにクスクスと笑っている。
じゃあ僕はあのテレビドラマの世界に……!?
いや、今も頭の中で鮮明に浮かんでいる光景の中には、一つの物語として明らかに必要ないであろう部分までも浮かび上がってくる。例えば、トイレで用を足す場面や、嫌いな食べ物を食べた直後に吐いた場面などなど……。
つまり、これはテレビドラマなどではなく……。
「……『記憶』?」
「どうされました? 坊ちゃま。まだどこか痛みがありますか?」
「い、いや、大丈夫。心配かけてごめん。もう大丈夫だから。後は、僕一人でやるよ」
「!? ……承知しました。ですが、身体に何か異変がおきたらすぐに呼んで下さい」
一瞬驚いたような顔をした後、そう言って、サーシャとアンナは部屋から出て行った。
◇◆◇◆◇◆
とりあえず、床に散らばっている本とガラクタを片付けながら、自分の身に何が起こったのか考える。
今はっきりと分かっていることは、僕はこの間までのもやし体形の体から今のまん丸な体に僕の魂が宿ったんじゃないか、ということだ。
しかし、それならこの体の元の持ち主の魂がどうなったのか分からない。
と、そこまで考えたとき脳裏に先程の暗い空間での出来事が浮かんできた。
あそこで最初に聞いた音は、この体の『記憶』にある棚にしまってあった物が降ってくる音と一致しているじゃんか!!
それに、『記憶』では物が降り注いできた所で終わっているが、あの空間ではその後に何かが僕の横を通り過ぎて行ったような音が聞こえたのを覚えている。
もしかしたらあの時、僕の横を通り過ぎたのはこの体の元の持ち主、ライン=ノルド君の魂ではなかろうか?
ということは、あの真っ暗な空間は、やはりあの世と呼ばれるところだったのだろうか?
いや、僕が、おそらく前の世界と全く異なる世界とはいえ、この世に戻ってきているので、あそこはあの世の入り口的なものだったのだろう。
ということは今の僕は疑似転生した状態ということか?
そこまで考えたとき丁度片付けが終わった。
「ふぅ……。少し動いただけなのに、汗が凄いな……」
前世のもやしのような体と違い、まん丸なこの体は凄く動かしにくい。足下が見えないから歩きにくいし、お腹がつっかえて上手くしゃがめないし、運動不足と脂肪のせいか胸が暑いし……。
「あぁーー……疲れた!!」
とりあえずベッドにゴロンと寝ころんで休憩する。
……ギシィ。
……このベッド大丈夫? 急に脚が折れたりしない?
一応足は外に出しておこう。……棚の反対側に。また転んで召天とか嫌だからね。
◇◆◇◆◇◆
見慣れない白に塗装された木製の天井をボーッと眺めていると、『記憶』が頭の中で再生される。
『サーシャ。どうやったら魔法を使えるようになるの?』
これは……4歳の時の『記憶』か。
子供ならではの質問だな。微笑ましさについつい頬が緩んでしまう。
『そうですね……まずは、毎日魔力を感じる練習をがんばることですね。それができれば魔法を使うことが出来ると思いますよ』
ははは。サーシャも上手いこと言うね。向こうの世界で言う、《毎日いいことをしていたら、サンタさんがクリスマスにプレゼントを持ってきてくれると思うよ》ってやつと同じような感じか。なら、怪しまれないようにしばらくは、魔法は存在するって信じているように立ち回るか。
『えー。なんかめんどくさそうだからやだ』
おいおい。その歳で面倒くさがってたら大人になったとき苦労するよ?
『そうですか……。ですが、せめて魔力は扱えるようになった方がいいと思いますよ』
ん?どういうことだ……?
何故かサーシャが真剣な顔をしてライン君に言っている。まるで、サーシャもサンタさん……じゃなくて、魔法を信じているみたいな顔をしているぞ?
『坊ちゃまもご存知の通り、私達の身の回りには魔導具で溢れています』
『え? そうなの?』
『……ご存知無かったのですね。そうなのでございます。魔導具は人間の魔力や魔石の中に蓄えられている魔力を使って動いています。なので、魔力を扱えなければこれから先、ずっと不便な思いをしながら生きていくことになるでしょう』
『んー。だいじょうぶだよ。なにかあったらサーシャとアンナがやるし、とうさんとかあさんにいえばいろいろやってくれるからねー』
なんか色々と重大な事実が発覚したがそれよりも言いたいことがある。
よくこんな生活で今まで生きてこれたな!! 僕がサーシャだったらこの家から出て行くか、後ろから刺してるよ!!
それに、この子の他の記憶の殆どが食べ物と夢の内容なんだけど!! どれだけ不健康な生活を続けてきたんだよ!! しかも、この世界の情報が殆どないんですけど!!
はぁ……。それでも『記憶』のおかげか、こちらの言葉が理解できるようになっただけでも僥倖か。後は、この子の不健康な体は僕が引き継いでしまったから何とかしないとなぁ……。
閑話休題
他にも『記憶』の中のサーシャとアンナの言からこの世界には魔法が存在するという情報を得たので、早速魔力を感じるところから始めてみようと思う。
んーー……魔力魔力魔力魔力魔力魔力……。
「さっぱりわからん!!」
何だよ魔力を感じるって!! 何も感じないんですけど!!
なんとか魔力を感じようと四苦八苦していると、ドアがコンコンとなった。
「坊ちゃま、どうかなさいましたか!? 坊ちゃまの声が聞こえたので、何かお体に異変が起きたのかと思って来たのですが!」
この声は……。
「アンナか。ごめん。何でもないよ」
そう言いつつ、ドアを開けてアンナを部屋の中に入れ、ベッドに座るように促す。その隣に僕もすわ……ものすごい慎重に座る。
…………ギシィィ。
ねぇ、このベッド本当に大丈夫?結構怖いんだけど。急に脚が折れたりしないでね?
◇◆◇◆◇◆
「アンナは魔法って使える?」
魔力を感じる過程でいきなり躓いたので、疑問をぶつけてみる。するとアンナは訝しげにしつつ
「はぁ……魔法ならば人並み以上には使えますが……。と言いますか、全ての人が魔法を使えると思いますよ」
と言った。
「え、そうなの?」
「はい、そうですよ」
おぉ! マジか! なら僕も使えると言うことか!
「じゃあ、魔法の使い方を教えてよ! 全然魔力を感じとれないんだ!」
「えぇ、別にそれぐらいならば構いませんが……」
そして今度は、アンナが恐る恐ると質問をしてくる。
「あの……坊ちゃま。やはりどこか具合が悪いのでは?」
「え?そんなことないけど。何で?」
「いえ、これまで坊ちゃまが食べることと寝ること以外に興味を持たれたことが御座いませんから。それにサーシャさんから坊ちゃまは魔法に余り興味を示さないとお聞きしていたので……」
うーん……。どう答えようか……。
中身が入れ替わるなんて普通は考えないから心機一転したって言えば誤魔化せるはず。せいぜい、まるで別人のようになったと考えるのが関の山だろう。なら、後は勢いで乗り切る!
「あぁ。あれだよ。これまでの行いを省みて心機一転したんだよ!! 今まで周りの人に迷惑を書けてきたから、その分今度は皆が笑顔になれるように努力しよう!! 的な?」
「は、はぁ。なるほど……」
んー。あんまり信じてなさそうだけど大丈夫でしょう! そりゃあ、今まで食っちゃ寝を繰り返していた人が急にこんなこと言っても説得力無いからねぇ。ま、今はこれでいいさ。大事なのはこれからだからね。
「ちなみに、坊ちゃまはどのような魔法を使いたいのですか?」
「うーん……。どのような魔法、か……。やっぱり炎を飛ばして遠くの敵を攻撃したり、物を触れずに動かしたりするような魔法かな」
「なるほど……。では、私ではなくサーシャさんに教わってはどうでしょうか?」
ん? なんでここでいきなりサーシャが出てくるの? 皆が魔法を使えるなら、誰でもいいのでは?
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