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魔法士は不遇らしい。それでも生活のために成り上がります

サァモン

88話 宴会

 カズトとリディアが南区に戻った時には既に魔物との戦いは終わっていた。
 結果はブランドンが率いる冒険者と騎士達の勝利である。
 ダンジョン都市奪還作戦は成功だ。
 それもこれもカルロス率いる暴風の宴と精鋭騎士達がランクS魔物であるアンファングアントとその取り巻きであるランクA魔物のキングアアントを、そしてダニー率いる大地の目覚めがランクA魔物のアングリースパイダーを、最後にカズトとリディアのパーティーが他三体のランクA魔物を倒したことが大きい。

 そしてこの作戦が成功したため、拠点となっている南区はお祭り状態であった。
 今も拠点の中央で開かれている宴会場でカルロスとダニーが互いに酒を飲みかわしている。


「うははははは! おらおらダニー! こんなもんかあ!?」
「うっさいな! 僕は君みたいに酒に強くないんだよ! てかなんで僕を誘った!? 他にもっと別のやつがいるだろう!? 僕は女の子と飲みたいんだよ!」
「んなこと気にするなよ! ほら、もう一杯いっとけ!」
「近づくな! 酒臭いんだよ! あとまだ酒は残ってるから注ぐな! だから注ぐなって、ああああああ! ズボンの上に溢れたじゃないか!? どうしてくれるんだよ! これ高かったんだぞ!?」


 ギャーギャーと騒ぎながら宴会は賑やかに進む。
 そんな彼らから少し離れた場所に亜空の大箱があり、そこの中にカズトとリディアはいた。
 ベッドに入っているリディアに向けてカズトが治癒魔法を使っている。


「外、賑やかだね」
「うん。カズト君も行ってきたら? きっと楽しいと思う」


 リディアがそう言うとカズトは治癒魔法を使ったまま首を横に振った。
 どうやら外の宴会に混ざるという選択肢は彼の中に存在しないらしい。


「そんな訳には行かないよ。リディアさんはまだ療養中で歩けないし、リディアさんを置いて一人楽しむ訳にはいかないからね」
「私のことは別にいい。痛みも殆ど無いし、もう動ける。ほら」
「あ、ちょっと!」


 リディアはそう言うと上体を起こして起き上がり、自然な動きで立ってみせる。
 すると体の調子を今一度確認するように軽く動かして見せた。
 そしてカズトに向かって笑顔を向ける。


「痛みはもう無くなった。自由に動ける」
「本当に? 念の為にもう少し治癒魔法をしたほうが」
「カズト君は心配しすぎ。動けるって言ったら動ける。さ、私達も宴会に行こう。きっと楽しい」
「ちょっ、待ってよ」


 そういうとリディアはさっさと亜空の大箱から出て行ってしまった。
 その背中を慌てて追いかけるようにカズトもまた亜空の大箱の外に出る。
 するとカズトが出てくるのを待っていたリディアは、彼の姿を確認するとゆっくりと歩き始めた。
 その横に並んでカズトも歩く。
 やがてすぐに宴会場へとたどり着いた。


「おお! カズトと雷霊じゃねえか! 体はもう治ったのか!」
「わあああああああ! リディアちゅわあああああん! 治ったんだねえええええ!」
「うるさい。あと臭い」
「ぐぼへぇ!」
「うわぁ、これまた綺麗に入ったな」


 カズトとリディアを見つけたカルロスは酒が入ったカップを掲げた。
 そして同じく彼らを、いやリディアを見つけたダニーはズボンが酒で汚れていることなど構わずに彼女に近づいた。
 そのおかげでダニーはこの宴会から強制退場することになったが、彼の性格を考えれば仕方の無いことなのかもしれない。
 するとダニーのパーティーメンバーがまるでいつもの事だと言わんばかりに手馴れた様子で彼をどこかへ運んで行くのを横目に、顔を赤くしたカルロスが笑いながらやってきた。


「はっはっはっ! その動きを見る限りじゃあ元気そうだな!」
「うん。カズト君が治してくれたから」
「そうかそうか。 昨日、一昨日は最愛の人に命を救われ、一夜を共にすごし、そして今日は2人っきりの空間で治療された、と。随分幸せそうじゃねえか! はっはっはっは!」
「し、幸せなのは否定しない、けど……そう言われると恥ずかしい……」
「はっはっはっは! ウブだなぁおい! 万年恋人も作らずにダンジョンばっか潜り続けてた小娘とは思えねえぜ!」
「あう……そ、それは……今までそういうことに興味がなかったというか……」


 カルロスは相当酔っているのかまるで若いカップルをからかうおじさんのようになっている。
 そのことにカズトは苦笑しながらも、顔を赤くしてしどろもどろになっているリディアに助け舟を出した。


「カルロスさん。この辺り一帯に色々な屋台が出てるけど、なにかお勧めとかある?」


 カズトが言った通りこの辺り一帯にはたくさんの屋台が並んでいる。
 パッと見ただけでもステーキにサンドイッチ、スープに酒とたくさんの種類があり、よりどりみどりだ。
 これだけ種類があればどれから手をつけようか迷うのは当然である。
 そう解釈したのかカルロスは話の矛先をリディアからカズトに変えた。


「おう、もちろんあるぜ! まずは何といっても酒だな! これがなくちゃ始まらねぇ!」
「あー、僕ってお酒は飲めないんだよねぇ」
「おいおいそうなのかよ! そりゃあ人生損してるぜ! 他にはソーセージだな! オークの肉を使ってるから酒のツマミには最高だぜ!」
「だから僕はお酒飲めないんだって。まあソーセージは好きだから買ってみるよ」
「あ、屋台に出てる分の食い物は全部領主様が金を出してくれるから金はいらねぇぞ」
「ほんとに!? それを早く言ってよ! 早く食べないと無くなるじゃん!」


 屋台に出されている食べ物が無料だと知った途端、カズトは血相を変えてすぐさま走り出し、ソーセージを貰いに行った。
 そんな彼の豹変した態度を見てカルロスは目を白黒させる。


「な、なんだぁ? タダってことを知った途端に人が変わったように走っていきやがったぞ?」
「カズト君、金欠だから」
「そ、そうだったのか。なるほどな。それならタダ飯にがっつく気持ちもわからねえでもねぇ」


 リディアがカズトの行動を見て苦笑しながらそう説明すると、カルロスは納得したように頷く。
 すると無事にソーセージを手に入れたカズトが満面の笑みで戻って来た。
 その手には三本ものソーセージが握られている。
 それを見てカルロスが呆れたような顔をした。


「おいおい。いくら金欠だからって普通一人で三本も貰ってくるか? 食い意地汚い奴め」
「失礼な。全部一人で食べる訳じゃなくてリディアさんとカルロスさんの分も一本ずつ貰ってきたんだよ。はいこれ」
「お、そうだったのか。それは悪かったな。ありがとよ」
「カズトくん、ありがとう。カルロスはカズトくんのことを何一つ分かってない」
「はいはいそうだな。カズトに夢中な雷霊よりは知らねえよ。それじゃあ俺は他のところに行くからお前えらは仲良くイチャイチャしてな」
「ごふっ!」
「ちょ、リディアさん!? 大丈夫!?」
「……大丈夫。むせただけ」
「はっはっはっは! じゃあなお二人さん。今夜も精一杯愛を育めよ!」
「ごふっ!」
「リディアさん!?」
「……だ、大丈夫むせ」
「あ、子供が出来たら教えろよなー!」
「ごふっ!」
「リディアさあああああん!」

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