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魔法士は不遇らしい。それでも生活のために成り上がります

サァモン

58話 作戦を知る

 彼らがしりとりを初めてかれこれ三十分が過ぎようとしていた。
 カズトは楽しそうな笑みを浮かべているが、それに対してリディアは眉をしかめて頭の中で必死に言葉を探している。
 そんな彼女の様子を見ながらカズトは口を開いた。


「つり。はい次リディアさん」
「……リゾット」
「それじゃあ、とり」
「…………リーフパイ」
「あー、美味しいよね、それ。いかり」
「………………リーフレタス」
「さっきから食べ物ばっかりだね。すいり」
「……………………」


 カズトが執拗に"り"攻めをしてしりとりを続けていると、とうとう"り"から始まる言葉が思いつかなくなったのか、リディアは黙ってしまった。
 ちなみに"り"で始まる彼女の名前である"リディア"は早々に使ってしまっている。
 するとリディアはやや不機嫌そうに口を開いた。


「り、ばっかり。ずるい」
「これも作戦だからね。それで"り"から始まる言葉は何かあった?」
「無い」
「それじゃあ僕の勝ちだね」
「むぅ。もう一回。次は勝つ」
「お、いいよ」
「でも、さっきみたいに"り"で攻めるのは無し」
「ええ……。まあ、良いけど」


 初めてとはいえリディアはしりとりで負けたのが悔しかったのか、カズトに再戦を申し込む。
 しかし先ほどのしりとりでカズトが行った"り"攻めが余程効いたのか、リディアは理不尽な事を言い出した。
 普通ならそのようなルールは却下するところだが、生憎カズトには"り"攻め以外にも手は残っている。
 そのためカズトはその申し出を了承し、しりとりを始めた。
 リディアが口を開く。


「次は私から。あかり」
「いいよ。リアカー」
「狩り」
「お、次はリディアさんが"り"攻め? いいねえ。それなら、理科」
「……係り」
「じゃあ、理数科」
「…………管理」
「へー、やるね。緑化」
「………………香り」
「んー、立夏」
「……………………むぅ」


 今度はリディアがカズトにやられたように"り"攻めを始めたが、それは全て返されて逆に"か"攻めで追い詰められる。
 リディアは再び頭を悩ませる事になるのだった。
 ちなみにこのカズト達のやりとりを聞いていた冒険者達もしりとりを始めており、存外好評であったようだ。
 そこかしこから頭を悩ます声が上がっている。
 こうしてこの場にいた冒険者達によって後々世界中にしりとりという遊びが広がっていくのだが、それはまた別の話しである。






 バッセルの街を出発して数時間経った頃。
 一行はようやくダンジョン都市が見える場所までやってきた。
 今日はここで一晩を過ごし、明日の朝からダンジョン都市奪還作戦を本格的に実行することになっている。
 そんな中、一行の中でも最高戦力であるカズトとリディア、そして他十数名がブランドン達司令部の会議用テントに呼び出されていた。
 ブランドンがテントの中に用意された席に座っている者達たちを一通り見て口を開く。


「皆集まったな。ではこれから重要事項を告げる。まず分かっていると思うが、ここに集まって貰ったのは今回の作戦で要となる者達だ」


 ブランドンがそう告げるとテントの中にいる者達は互いの顔を見る。
 そこには早く戦いたくて仕方ないといった野蛮で好戦的な笑みを浮かべた男や一切緊張していない涼しげな顔をした優男など様々な者達がいる。


(全員一癖も二癖もありそうだな)


 周りを見てそんなことを思うカズト。
 もっとも癖があるからといっても彼らは冒険者ギルドに実力だけでなく人柄の面でも問題なしと判断されているため、ブランドンの話しを聞かないような問題のある者はいないのだが。
 すると再びブランドンが口を開いた。


「君達にはランクAの魔物であるマシンガンビートルにアングリースパイダー、サンダーグリスリーにマーレジャイアント。さらにランクSのアンファントアントとそのしもべであるランクAのキングアントの相手をしてもらう。そして誰がどの魔物を倒してもらうのかもこちらで全て決めさせて貰った」


 ブランドンは持っていた紙を皆に見えるように机の上に広げる。
 そこにはダンジョン都市の略地図が書かれており、ランクA以上の魔物がいる位置とその名前がかかれてあった。


「だがお前たちにどの相手をしてもらうか教える前に、まずはこの作戦の大まかな概要を説明する。まず第一目標は都市の南区を制圧し、新たな拠点を設けることだ。そうすれば例え今回の作戦が失敗しても次からは南門から物資を供給しつつそこを中心に攻められるからな。そして次の第二目標はランクSのアンファングアントの討伐だ。やつがいれば時間が経つにつれて配下の魔物が増えていくからだ。だからここまでは今回の奪還作戦でなんとしてもやり遂げたい。それで第三目標は残ったランクA魔物の殲滅、そして第四目標が都市にいる全ての魔物の殲滅だ」


 そう言ってブランドンはここまでで何か意見は無いかと思い、皆の顔を見回す。
 だが皆ブランドンの作戦に意義は無いようで、彼の口から話しの続きが出るのを待っている。
 それを確認したブランドンは再び口を開いた。


「質問は……無いようだな。ではこれから詳細な説明に入る。まず今ダンジョン都市にはランクSのアンファングアントとキングアントを除いて、他のランクAの魔物はそれぞれ別の場所で縄張りを作っている。そのため一度にそいつらを複数相手にすることはないだろう」


 そう言ってブランドンは広げた紙の上に、目印のためにチェスの駒と似たような駒を四つ載せた。
 それらはランクA以上の魔物たちを表した駒だ。
 それからブランドンはその目印を指差しながら説明を始める。


「まずダンジョン都市の南区を縄張りとしているマーレジャイアントを潰す。そしてそのまま周りの雑魚魔物共を殲滅し、そこを占拠仕返す」


 そう言ってブランドンは地図上からマーレジャイアントの目印を取り除き、代わりに自軍の駒を置いた。


「このマーレジャイアントの討伐に関しては雷霊のパーティーに任せる。そして他の者達はマーレジャイアントと雷霊達との戦いに巻き込まれないようにすることと、他のランクB以下の魔物がその戦いの邪魔をしないように遠巻きにその魔物達を狩っていてくれ」
「ちょっとよろしいですかい?」


 そこまでブランドンが話すとつい先ほどまで好戦的な笑顔を浮かべていた男が、いかにも不満げな顔をして手を挙げてそう言った。
 ランクAパーティー、暴風の宴のリーダーであるカルロスだ。


「なんだ?」
「何故マーレジャイアントの相手をするのは雷霊のパーティーだけなんですかね? 俺達暴風の宴やそこの大地の目覚めも一緒にマーレジャイアントと戦った方が確実に討伐できると思うんですが」


 するとカルロスに名前を出された同じランクAパーティーの大地の目覚めのリーダーである優男のダニーも口を開く。


「自分もカルロスと同じくここにいる皆でマーレジャイアントの相手をした方が確実だと思います。それにランクA以上の魔物を複数相手にする可能性は低いんでしょう? ならなおさらそうするべきかと。なにより、リディアちゃんみたいな可愛い子に凶暴な魔物と戦わせるなんてことはしたくない!」


 後半は明らかに私情が入っていたが、ダニーもまたカルロスと同じ意見らしい。
 だがブランドンはその意見に賛成しつつも、このような作戦を取った理由を話し始めた。

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