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魔法士は不遇らしい。それでも生活のために成り上がります

サァモン

46話 第四波来襲

「マシンガンビートルにアングリースパイダー、サンダーグリスリーにマーレジャイアントか。キマイラはいないようだが、慰めにもならんな」


 ダンジョンから出てきたランクAの魔物達を見て、ブランドンは苦々しい表情をする。

 マシンガンビートルは地球の昆虫で言うヘラクレスのような見た目をしており、その角は大砲のようになっている。体長三十メートル程もある巨大な魔物だ。
 そしてアングリースパイダーは腹の模様が悪魔の怒り顔に見える体長二十メートル程の巨大な蜘蛛だ。
 サンダーグリスリーは雷雲のような毛色をしている十五メートル程の熊。
 最後にマーレジャイアント。これは紺色の肌をしている四つ目の巨人だ。体長は約十メートルある。

 どれもランクに相応しい強大な姿をしており、ダンジョンの入り口から遠く離れているブランドン達にもはっきりと見える。
 だが、ダンジョンから出てきた魔物はこれで終わりではなかった。
 最後の一匹の魔物がダンジョンの入り口から悠々と姿を現す。


「くそっ。やはり出てきたか。ランクSの魔物が!」


 その魔物の姿を見て、ブランドンが思わずそう吐き出す。
 彼らが見る先にはランクSの魔物が姿を現した。
 その魔物の名はアンファングアント。

 アンファングアントは体の中に巣を持っており、そこで配下となるアリの魔物をたくさん育てるという特徴がある魔物だ。
 そのためその体は並みの魔物よりも遥かに大きく、五十メートル以上もある。
 そして体内で生み出し、育てた配下のアリは餌を求めてアンファングアントの体外に出てくるのだ。
 ただしアンファングアントは配下のアリを産み出すことに特化した魔物のため、強さ自体はランクB程度でしかない。
 しかし生み出せる配下のアリの中にはランクAの強さを誇るキングアントがいる他、ランクCのナイトアント、ランクEのノーブルアント、ランクGのコームアントなどがいる。
 そのためそれだけの戦力をたったの一匹で生み出せるアンファングアントはランクSの魔物として認定されたのだ。

 このアンファングアントが最後の魔物だったのか、ダンジョンの入り口から魔物が出てくることはもうない。
 それを見たゾアルが苦々しげな顔をしたブランドンに話しかける。


「ブランドン様、これ以上ダンジョンからは魔物が出てこないみたいです。早急にバッセルの街へと避難しましょう」
「……そうだな。それではこれから我々はバッセルの街へと避難する! 全員馬に乗り、速やかに移動するぞ!」
『はっ!』


 ゾアルの言葉を聞いたブランドンは、その場にいる他の者達にそう声をかける。
 すると全員素早く馬に乗り、バッセルの街へと向かって駆け出した。
 ブランドンもまた馬に乗り、騎士達に囲まれながらバッセルの街を目指す。
 その際、彼はチラリと後ろを見た。
 そこからはゴブリンのような弱い魔物達が悠々と外へ出て、ランクD以上の魔物は南門から外に出ることができずに引き返すといった魔物達の姿を見ることができた。


(まさかランクD以上の魔物から街を守るために設置した、超大型結界を生成するマジックアイテムが、街の中の魔物達を外に出さないための檻となるとはな。皮肉なもんだが、ランクD以上の魔物がこの辺りを跋扈するような事態に比べればありがたいことだ)


 それから彼は再び前を向き、一度も振り返ることなくバッセルの街へと向かった。



◆◇◆◇◆◇



「あー、暇だ」


 ボバッ! ボバッ! ボバッ! という爆音を辺りにまき散らしながらカズトはまっすぐにダンジョン都市に向かっていた。
 もしこれが地球なら騒音被害ですぐに数多の苦情が舞い込んできたことだろう。
 しかしここはオーランド。
 しかも街の中ではなく誰もいない草原だ。
 そのため誰にも迷惑をかけることなく、この世界で考えれば猛スピードと言って良い速度でダンジョン都市へと通ずる道を走っていた。
 ちなみに爆音の音源のそばにいるカズトは耳の回りに真空の膜をはっているため、この音によって難聴になる心配はない。
 もっとも荷台を通じて体を伝ってくる振動からの音は聞こえているので、爆音が全く聞こえないわけではないのだが。
 そんなカズトだが、あまりにも風景に変化がないためか退屈になってきたらしい。
 しかし今は猛スピードで文字通り爆走している途中だ。
 そのため何かをするなら荷台の上でできることでなければならない。
 とはいってもできることは一つしかないのだが。


「……魔力制御の練習でもするか。金属箱の中で水素爆発を起こさせながらになるから、いまいち集中できないけど」


 そうして彼は水素爆発を起こさせながら魔力制御の練習をするという器用なことをし始めた。

 それからしばらくの間爆走していると、カズトの目の前に分岐点が現れた。
 右に行く道と左に行く道に分かれているのだ。
 そこで前方に二つ設置した金属箱の中で水素爆発を起こし、荷車のスピードを徐々に落とす。


「えーっと、右と左、どっちにいくかだけど……あったあった」


 彼はバッグの中に手を突っ込んでゴソゴソとし、ニーナから貰ったダンジョン都市まで行くための手書きの略地図を取り出した。


「なになに? このまま右に行くとロットの街に着いて、左に行くとバッセルの街に着くのか。ロットの街ってのはダンジョン都市だから右だな」


 略地図で道を確認したカズトは、後方に設置した二つの金属箱の中でそれぞれ違う規模の水素爆発を起こす。
 右側の金属箱は少し弱めに、左側の金属箱は少し強めに水素爆発を起こしたのだ。
 それによって荷車は右に曲がる。


「これでよし、と。んじゃ、再度しゅっぱーつ!」


 そして再び金属箱の中で水素爆発を起こして荷車を発進させた。

 それからさらにしばらくすると、遠くの方に灰色の外壁が見えてきた。


「あれがダンジョン都市か。一応夜を過ごす方法は考えていたけど、そんなことにならなくて良かった」


 彼はホッと胸を撫で下ろした。
 というのも彼が考えていた夜を過ごす方法というのは、荷車で爆走して一晩中魔物から逃げ回るというものだったからだ。
 当然徹夜である。
 とはいえカズトは徹夜を何度かした経験があるため、そこまで問題ではない。
 だが徹夜は体力の消費と睡魔との戦いが激しいため、その方法は取りたくなかったのだ。
 ちなみにカズトは事前にニーナからダンジョン都市まで普通の馬車でどれくらいの時間がかかるかは聞いていたため、それを計算して一日で到着するように猛スピードで走っていた。
 しかしそれでも不安はあったため、こうしてダンジョン都市が見えてきたことにカズトは安堵したのだ。
 けれどもカズトは、今度はダンジョン都市に近づくにつれて変化していく周囲の状況に戸惑い始めた。


「なんか、魔物が多くなっていってる気がする」


 そう。ダンジョン都市に近づくにつれて明らかに魔物の数が多くなっているのである。
 とはいっても辺りにいるのは全て低級の魔物のため、いくら数が多くても今のカズトの実力ならば問題ない。
 それに魔物達は彼の荷車が発する爆音を警戒して、逃げるように道から外れていっているのでぶつかる心配もない。
 そのためカズトは周囲の変化に困惑しつつもダンジョン都市に向かって爆走するのであった。

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