魔法士は不遇らしい。それでも生活のために成り上がります
24話 魔人戦
「カズト、分かっていると思うが挑発に乗るなよ」
「ええ、もちろんです」
「ちっ。おもしろくねぇなぁ」
カズトの強さはダイアナ達に遠く及ばない。
そのため彼女達の攻撃を易々と防いで見せた魔人にいくら挑発されようとも攻撃する気はなかった。
だが何もせずただただ傍観する気もなかった。
彼は徹底的に魔人の魔法を分析することにしたのだ。
ダイアナ達が再び魔人に切りかかっていく。
カズトはその姿を視界に収めながら、頭を回転させ始める。
(この世界は化学や物理が発達していない。だからさっき魔人が使った魔法はただ完成イメージを思い浮かべて使った魔法のはず。それなら僕にもできるはずだ)
魔人の注意を引かないように指を鳴らさず先程魔人が使った薄い板の魔法を再現してみる。
するとカズトの目の前に魔人が発動したものと全く同じ半透明の板が現れた。
しかし。
(一見上手くできたように見えるけど、これは見た目だけだな)
カズトがそれを指で軽くつつくと、僅かな抵抗を感じた後、すぐに割れて霧散した。
しかしたったこれだけの行為でも、カズトにとっては十分な情報源となる。
(まず魔人の魔力制御の技量がどれだけの物なのか、大体把握することができた)
魔法は魔力制御の技量が高ければ高いほど一度の魔法に込められる魔力量が上がる。
そして魔力を込めれば込めるほど魔法の威力は上がる。
この半透明の板の場合は魔力を込めれば込めるほど硬さが上がるのだ。
そしてこれまでダイアナ達の戦闘を何度も間近で見てきたカズトは、彼女達がどれだけの力で魔人に攻撃したのかおおよその予想はつく。
そこから逆算すれば魔人が最低でもどれだけの強度の半透明の板を作り出したのかが分かるというわけだ。
(今の僕なら全力でこの魔法を使えばこの広間全体を半透明の板で覆うことができるな。……まあ、防御性能は紙以下だけど。それでも改良すれば十分使いようはあるはずだ)
そうして魔人の魔法を分析したカズトは再びダイアナ達と魔人の戦いに目を向ける。
するとそこではダイアナ達が魔人を囲み、一方的に攻撃していた状況が動き出していた。
剣と剣、そしてハルバードが絶妙な連携と共に次々と魔人に襲いかかる。
だが一方の魔人はそれらをドーム型に展開した半透明の板一枚で全て受けきって見せた。
その表情はまだ余裕があるのか未だににやついており、時折欠伸までする始末だ。
だが魔人はその状況に飽きたのか次の瞬間動き出した。
「ほらほらどうしたぁ! お前たちの実力はそんなもんかぁ!? 次はこっちからいくぞぉ!」
魔人がそう言った瞬間、防御のために展開していた半透明の板を消し去り、ダイアナ達の足下を瞬時に赤く染めた。
「!? 避けろ!」
ダイアナの頭の中に警鐘が鳴り響き、すぐさま叫ぶ。
そしてダイアナがそう叫ぶとほぼ同時、三人はその場から飛び退いた。
直後に下から上へと赤い火柱が勢い良く吹き上がる。
その炎は広場の天井にぶつかり次々と火の粉を辺りに散らした。
「へぇ、判断力はなかなかじゃねぇか。なら次のこれはどうだ?」
彼女達のその様子を見て、まるで子供がおもちゃを見つけたような物騒な笑みを浮かべた魔人は、手のひらをゆっくりとダイアナの方に向けた。
そしてその手のひらから炎の球が勢い良く射出される。
「!?」
それにたいしてダイアナは瞬時に反応し、その炎の球を余裕で避けて見せた。
その様を見てますます楽しそうな笑みを深める魔人。
そして次の瞬間には連続して炎の球を発射し始めた。
だが一度その攻撃を見たダイアナは、飛んでくる炎の球を右に左にと軽やかに移動して避け続ける。
それだけでなく攻撃しろという意味を込めたアイコンタクトを二人に送った。
しかしそのアイコンタクトは無駄に終わる。
既に二人は動いていたからだ。
「殿下に攻撃するのはそこまでにしてもらおうか」
「死ね」
魔人の背後から二人同時に襲いかかる。
するとそれを察知した魔人がすぐさま攻撃を止め、再び半透明の板を出現させた。
またもや二人の攻撃はそれにガキガキィン! という音とともに防がれる。
「ちっ。囲まれてるとめんどくせぇな。三人以上纏めて相手するのは苦手なんだよ」
一度板の向こうにいるセリオとメイベルの顔を見て心底めんどくさそうな顔をする魔人。
だが次の瞬間、その魔人から表情が消え失せ、心臓が凍るような冷たい声が発せられた。
「一人潰すか」
ゾクッ!
三人の背中にそんな悪寒が一斉に走る。
その感覚は三人が魔物と対峙したときに何度も味わったことがある。
単純に相手を殺そうとする殺気だ。
ただ、その強さが普通の魔物のものよりも遥かに大きい。
三人は咄嗟にその場から退く。
その直後に魔人は半透明の板を消し、素早くメイベルの背後に展開し直した。
後ろ向きにバックステップを刻んで後退していたメイベルは当然それに激突し、一瞬動きを止められる。
だが魔人にとってはその一瞬で十分だった。
「「メイベル!」」
ダイアナとセリオがそう叫ぶも、既に遅い。
半透明の板を解除した魔人がメイベルに手のひらを向け、魔法を発動させたからだ。
「まず一人」
魔人の手のひらから炎がほどばしる。
それはまるで蛇のように口を開け、あっという間にメイベルの喉元へとかぶりついた。
そしてその勢いのままに彼女を後ろに吹き飛ばす。
だがそれでも一度かぶりついた炎はメイベルの喉から離れない。
メイベルは咄嗟にハルバードを手放し、自身を焼く喉の火を消そうとする。
だがそんなことをしたぐらいでは魔人の炎を消すことはできない。
その炎は瞬く間に彼女の喉を焼き尽くしていく。
「あ"あ"!?」
ついにその熱さに耐えきれなくなったのか悲鳴が出る。
しかしその悲鳴は喉が焼かれたせいか、全く女性らしくない濁ったものだった。
その悲鳴が聞こえたのはほんの少しの間だけ。
すぐに悲鳴が途切れ、メイベルの体から力が抜ける。
「さて、続きをしようか」
喉が真っ黒に焦げるまで焼かれたメイベルを見て魔人は満足したのか、再びニタニタとした不気味な笑みを浮かべそう口にした。
だがダイアナとセリオは動かない。
治癒魔法を使っても助からないであろうメイベルの方を見て呆然としてしまっている。
その様子を見て魔人は呆れたように口を開いた。
「おいおい。なに一人殺られたくらいで動揺してんだ? この世は弱肉強食。弱いやつが強い奴に殺される。こんなの普通だろ? それくらいで動揺すんなよ」
その言葉が二人の意識を取り戻すきっかけとなったのか、二人は魔人に目を向ける。
だが彼らのその目には言い表せないほどの憎悪が宿っている。
「……だまれ」
ダイアナが口を開いた。
その声は憎悪と悔しさ、そして悲しさがない交ぜになっていたが、魔人はそんなことは気にしない。
むしろようやく楽しくなってきたとばかりにその笑みをますます深めた。
そして手のひらをダイアナに向ける。
「ええ、もちろんです」
「ちっ。おもしろくねぇなぁ」
カズトの強さはダイアナ達に遠く及ばない。
そのため彼女達の攻撃を易々と防いで見せた魔人にいくら挑発されようとも攻撃する気はなかった。
だが何もせずただただ傍観する気もなかった。
彼は徹底的に魔人の魔法を分析することにしたのだ。
ダイアナ達が再び魔人に切りかかっていく。
カズトはその姿を視界に収めながら、頭を回転させ始める。
(この世界は化学や物理が発達していない。だからさっき魔人が使った魔法はただ完成イメージを思い浮かべて使った魔法のはず。それなら僕にもできるはずだ)
魔人の注意を引かないように指を鳴らさず先程魔人が使った薄い板の魔法を再現してみる。
するとカズトの目の前に魔人が発動したものと全く同じ半透明の板が現れた。
しかし。
(一見上手くできたように見えるけど、これは見た目だけだな)
カズトがそれを指で軽くつつくと、僅かな抵抗を感じた後、すぐに割れて霧散した。
しかしたったこれだけの行為でも、カズトにとっては十分な情報源となる。
(まず魔人の魔力制御の技量がどれだけの物なのか、大体把握することができた)
魔法は魔力制御の技量が高ければ高いほど一度の魔法に込められる魔力量が上がる。
そして魔力を込めれば込めるほど魔法の威力は上がる。
この半透明の板の場合は魔力を込めれば込めるほど硬さが上がるのだ。
そしてこれまでダイアナ達の戦闘を何度も間近で見てきたカズトは、彼女達がどれだけの力で魔人に攻撃したのかおおよその予想はつく。
そこから逆算すれば魔人が最低でもどれだけの強度の半透明の板を作り出したのかが分かるというわけだ。
(今の僕なら全力でこの魔法を使えばこの広間全体を半透明の板で覆うことができるな。……まあ、防御性能は紙以下だけど。それでも改良すれば十分使いようはあるはずだ)
そうして魔人の魔法を分析したカズトは再びダイアナ達と魔人の戦いに目を向ける。
するとそこではダイアナ達が魔人を囲み、一方的に攻撃していた状況が動き出していた。
剣と剣、そしてハルバードが絶妙な連携と共に次々と魔人に襲いかかる。
だが一方の魔人はそれらをドーム型に展開した半透明の板一枚で全て受けきって見せた。
その表情はまだ余裕があるのか未だににやついており、時折欠伸までする始末だ。
だが魔人はその状況に飽きたのか次の瞬間動き出した。
「ほらほらどうしたぁ! お前たちの実力はそんなもんかぁ!? 次はこっちからいくぞぉ!」
魔人がそう言った瞬間、防御のために展開していた半透明の板を消し去り、ダイアナ達の足下を瞬時に赤く染めた。
「!? 避けろ!」
ダイアナの頭の中に警鐘が鳴り響き、すぐさま叫ぶ。
そしてダイアナがそう叫ぶとほぼ同時、三人はその場から飛び退いた。
直後に下から上へと赤い火柱が勢い良く吹き上がる。
その炎は広場の天井にぶつかり次々と火の粉を辺りに散らした。
「へぇ、判断力はなかなかじゃねぇか。なら次のこれはどうだ?」
彼女達のその様子を見て、まるで子供がおもちゃを見つけたような物騒な笑みを浮かべた魔人は、手のひらをゆっくりとダイアナの方に向けた。
そしてその手のひらから炎の球が勢い良く射出される。
「!?」
それにたいしてダイアナは瞬時に反応し、その炎の球を余裕で避けて見せた。
その様を見てますます楽しそうな笑みを深める魔人。
そして次の瞬間には連続して炎の球を発射し始めた。
だが一度その攻撃を見たダイアナは、飛んでくる炎の球を右に左にと軽やかに移動して避け続ける。
それだけでなく攻撃しろという意味を込めたアイコンタクトを二人に送った。
しかしそのアイコンタクトは無駄に終わる。
既に二人は動いていたからだ。
「殿下に攻撃するのはそこまでにしてもらおうか」
「死ね」
魔人の背後から二人同時に襲いかかる。
するとそれを察知した魔人がすぐさま攻撃を止め、再び半透明の板を出現させた。
またもや二人の攻撃はそれにガキガキィン! という音とともに防がれる。
「ちっ。囲まれてるとめんどくせぇな。三人以上纏めて相手するのは苦手なんだよ」
一度板の向こうにいるセリオとメイベルの顔を見て心底めんどくさそうな顔をする魔人。
だが次の瞬間、その魔人から表情が消え失せ、心臓が凍るような冷たい声が発せられた。
「一人潰すか」
ゾクッ!
三人の背中にそんな悪寒が一斉に走る。
その感覚は三人が魔物と対峙したときに何度も味わったことがある。
単純に相手を殺そうとする殺気だ。
ただ、その強さが普通の魔物のものよりも遥かに大きい。
三人は咄嗟にその場から退く。
その直後に魔人は半透明の板を消し、素早くメイベルの背後に展開し直した。
後ろ向きにバックステップを刻んで後退していたメイベルは当然それに激突し、一瞬動きを止められる。
だが魔人にとってはその一瞬で十分だった。
「「メイベル!」」
ダイアナとセリオがそう叫ぶも、既に遅い。
半透明の板を解除した魔人がメイベルに手のひらを向け、魔法を発動させたからだ。
「まず一人」
魔人の手のひらから炎がほどばしる。
それはまるで蛇のように口を開け、あっという間にメイベルの喉元へとかぶりついた。
そしてその勢いのままに彼女を後ろに吹き飛ばす。
だがそれでも一度かぶりついた炎はメイベルの喉から離れない。
メイベルは咄嗟にハルバードを手放し、自身を焼く喉の火を消そうとする。
だがそんなことをしたぐらいでは魔人の炎を消すことはできない。
その炎は瞬く間に彼女の喉を焼き尽くしていく。
「あ"あ"!?」
ついにその熱さに耐えきれなくなったのか悲鳴が出る。
しかしその悲鳴は喉が焼かれたせいか、全く女性らしくない濁ったものだった。
その悲鳴が聞こえたのはほんの少しの間だけ。
すぐに悲鳴が途切れ、メイベルの体から力が抜ける。
「さて、続きをしようか」
喉が真っ黒に焦げるまで焼かれたメイベルを見て魔人は満足したのか、再びニタニタとした不気味な笑みを浮かべそう口にした。
だがダイアナとセリオは動かない。
治癒魔法を使っても助からないであろうメイベルの方を見て呆然としてしまっている。
その様子を見て魔人は呆れたように口を開いた。
「おいおい。なに一人殺られたくらいで動揺してんだ? この世は弱肉強食。弱いやつが強い奴に殺される。こんなの普通だろ? それくらいで動揺すんなよ」
その言葉が二人の意識を取り戻すきっかけとなったのか、二人は魔人に目を向ける。
だが彼らのその目には言い表せないほどの憎悪が宿っている。
「……だまれ」
ダイアナが口を開いた。
その声は憎悪と悔しさ、そして悲しさがない交ぜになっていたが、魔人はそんなことは気にしない。
むしろようやく楽しくなってきたとばかりにその笑みをますます深めた。
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