エデン・ガーデン ~終わりのない願い~
2
竜の父の力によってティエル・エデンとリン・トラストはエデン城へと戻ってきた。
振り返ると大きなゲートがあり、そこは竜の森と繋がっている。
「急げ。間に合わなくなる前に」
未だに動けず立ち尽くしているティエルに対して竜の父は静かに告げた。
「我の娘を頼む」
最後にそれだけを残して静かにゲートが閉じられる。
ゲートがあった場所を睨みつけるように見据え、リンがそっと口を開く。
「……今の話が本当なら、ゆっくりしている暇はありませんね」
対して同じようにゲートを見ていたティエルは沈痛な面持ちをしていた。
そして弱々しく口が動く。
「リン、俺は……」
「今は報告が先です」
それをリンは厳しい口調で遮る。
「……わかった」
だからティエルはそれ以上何も言わず、体を翻した。
そこには変わらない正門がある。静かに迎えるもの全てを迎え入れるために開かれた厳かな門。決して破れられることのない強固さを誇る。
だか、そこでティエルは違和感を覚えた。
何がおかしいのか。
「門番はどこへ?」
その違和感の正体に気付いたのはリンだった。
「門番なら、そこに……」
咄嗟にティエルはそう答える。しかし、示したに門番は居なかった。
「……いない?」
正門には必ず門兵がいる。一日の内、交代は三回。一回の人数は二人。計六人が警護を担当。それが定められた正門の警備だ。
しかし、誰一人としてそこに立っていない。
さっと、全身から血の気が引く。背筋に悪寒が走った。
「急ぎましょう」
リンの言葉に顔を見合わせる。二人は同時に走り出した。
普段ならばありえない、開いたままの正門から敷地の中へ入る。
「『謁見の間』から強い魔力を感じます」
舗装された道を走りながら歯噛みするリン。噛み締められた唇が一層赤く染まる。
その表情が物語る事実にティエルは沈痛な面持ちを浮かべた。
「つまり……」
「そこに犯人がいます」
そして二人は玄関扉に壊さんばかりの勢いでぶつかると、同時に開け放ち中に飛び込んだ。
長い大理石の床を全力で駆けていく。
その間に誰かに遭うことはなかった。
掃除をするメイドにも、警護をする兵士にも、誰にも。
そして普段は閉じているはずの『謁見の間』に続く扉が開いているのが遠くに見えた。その扉が徐々に近付く。
扉のすぐ近く、床が誰かの血によって赤く染まった場所で二人は足を止めた。
血はそこで『謁見の間』と廊下の双方に分かれ、廊下側に続く方が濃く床を染め上げている。
「この血は……」
「犯人のものではないと思います。ただ、中まで続いているようですね」
足を止めると同時にリンは腰に差していた大剣を抜いて右手に構えた。
そしてゆっくりとした足取りで歩き出す。
握り締めた柄から炎が溢れ、やがて剣全体を包み込む。
燃え盛る剣はまるでリンの心を表しているようだった。
そして、その炎が一段と大きく燃え上がったとき、リンは『謁見の間』に向かって突進した。
中で固い物同士がぶつかる鈍い音が響く。
「どうして、あなたが――」
リンのように中に突入することが出来なかったティエル。
「どうして、こんなことを……」
彼はようやく部屋の入口に辿り着くと、拳を固く握りしめ、震える声で叫んだ。
「フェリカ様!!」
ティエルの目の前で、リンと相対する相手。
フェリカ・Rel。
彼女は泣きそうな顔で叫んだティエルを一瞥すると、何を語るでもなく、口の端を歪めて見たこともないような凄惨な笑みを浮かべた。
振り返ると大きなゲートがあり、そこは竜の森と繋がっている。
「急げ。間に合わなくなる前に」
未だに動けず立ち尽くしているティエルに対して竜の父は静かに告げた。
「我の娘を頼む」
最後にそれだけを残して静かにゲートが閉じられる。
ゲートがあった場所を睨みつけるように見据え、リンがそっと口を開く。
「……今の話が本当なら、ゆっくりしている暇はありませんね」
対して同じようにゲートを見ていたティエルは沈痛な面持ちをしていた。
そして弱々しく口が動く。
「リン、俺は……」
「今は報告が先です」
それをリンは厳しい口調で遮る。
「……わかった」
だからティエルはそれ以上何も言わず、体を翻した。
そこには変わらない正門がある。静かに迎えるもの全てを迎え入れるために開かれた厳かな門。決して破れられることのない強固さを誇る。
だか、そこでティエルは違和感を覚えた。
何がおかしいのか。
「門番はどこへ?」
その違和感の正体に気付いたのはリンだった。
「門番なら、そこに……」
咄嗟にティエルはそう答える。しかし、示したに門番は居なかった。
「……いない?」
正門には必ず門兵がいる。一日の内、交代は三回。一回の人数は二人。計六人が警護を担当。それが定められた正門の警備だ。
しかし、誰一人としてそこに立っていない。
さっと、全身から血の気が引く。背筋に悪寒が走った。
「急ぎましょう」
リンの言葉に顔を見合わせる。二人は同時に走り出した。
普段ならばありえない、開いたままの正門から敷地の中へ入る。
「『謁見の間』から強い魔力を感じます」
舗装された道を走りながら歯噛みするリン。噛み締められた唇が一層赤く染まる。
その表情が物語る事実にティエルは沈痛な面持ちを浮かべた。
「つまり……」
「そこに犯人がいます」
そして二人は玄関扉に壊さんばかりの勢いでぶつかると、同時に開け放ち中に飛び込んだ。
長い大理石の床を全力で駆けていく。
その間に誰かに遭うことはなかった。
掃除をするメイドにも、警護をする兵士にも、誰にも。
そして普段は閉じているはずの『謁見の間』に続く扉が開いているのが遠くに見えた。その扉が徐々に近付く。
扉のすぐ近く、床が誰かの血によって赤く染まった場所で二人は足を止めた。
血はそこで『謁見の間』と廊下の双方に分かれ、廊下側に続く方が濃く床を染め上げている。
「この血は……」
「犯人のものではないと思います。ただ、中まで続いているようですね」
足を止めると同時にリンは腰に差していた大剣を抜いて右手に構えた。
そしてゆっくりとした足取りで歩き出す。
握り締めた柄から炎が溢れ、やがて剣全体を包み込む。
燃え盛る剣はまるでリンの心を表しているようだった。
そして、その炎が一段と大きく燃え上がったとき、リンは『謁見の間』に向かって突進した。
中で固い物同士がぶつかる鈍い音が響く。
「どうして、あなたが――」
リンのように中に突入することが出来なかったティエル。
「どうして、こんなことを……」
彼はようやく部屋の入口に辿り着くと、拳を固く握りしめ、震える声で叫んだ。
「フェリカ様!!」
ティエルの目の前で、リンと相対する相手。
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彼女は泣きそうな顔で叫んだティエルを一瞥すると、何を語るでもなく、口の端を歪めて見たこともないような凄惨な笑みを浮かべた。
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