エデン・ガーデン ~終わりのない願い~
2
「ロエルー!」
がんがんと重厚な扉を数回叩く。しかし中からあの飄々とした男が出てくる気配はなかった。
「留守ですか?」
それにリンは納得がいかなそうに眉をひそめる。彼女はドアノブを握り、何度か引く。
鍵がかかっているのか、扉はガタガタと揺れるだけで開く気配はない。
「そうみたいだな」
ティエルは困ったように後ろ頭を掻くと「うーん」と唸った。
滅多なことでもない限り図書館からロエルは出ない。そんなロエルが今ここにはいない。
「もしかしたら城に居るのかもな」
それにティエルは空を見上げた。そこには遥か彼方に浮かぶエデン城がある。
「城に?」
「ああ、たぶん。」
はっきりそうと断言はできないが、ロエルが図書館に居ない場合は次に城に居る可能性が高い。それに、エヴィが捕まったこともある。親代わりであるというなら放っておくはずがないだろう。
「もしそうなら一回城に戻るしかありませんね」
言いながらリンもまた顔を上げて空を睨んだ。
二度手間ではあるが手掛かりがない以上はそうするより他ない。
それに城に戻れば殺された兵の体をリンに調べてもらい、同じ魔力が残っているかも確認が出来る。何も悪いことだけではない
「そうだな」
ティエルは空を見上げたままそう言った。
そして、視線を空から剥がすと、図書館の敷地から出ようと外に足を向ける。
「ティエル様、お待ちください」
その足をリンの声が止めた。
「ん?」
ティエルはその声につられて後ろを振り返る。
すると空に向かってリンが手を伸ばしていた。
その手に黄金色に輝く鳥が止まる。
「伝書魔法? どこから……」
「ロエル様です」
ティエルの戸惑いにリンは口早に答えた。それから歌を口ずさむ。
その瞬間、リンの手の上で毛を繕っていた鳥が霧状の物体となった。それから凝縮。ポンッという愛らしい音を立てて黄金色の封書の形になる。
「何だ、今の?」
「解除魔法です。ご存知ありませんか?」
封書を切って中身を取り出すリン。それをティエルに差し出しながら首を傾げた。
「握りつぶす以外に方法がないと思ってたんだが……」
それを受け取ったティエルは何かを堪えるような顔で呟く。
「そちらの方が早いですから、そうする方は多いですね。ましてティエル様は……。それが悪いとは思いませんが、私はあまり好みませんので」
そう言いながらリンは微かに表情を和らげる。しかし、すぐに固い顔に戻して「それで、手紙にはなんと?」と首を傾げた。
「ちょっと待ってくれ。前置きが長い」
項垂れながら手紙に目を通すティエル。文字を読むスピードが速いのは日頃の読書の成果だろう。
しかし読めば読むほどその顔がどんよりと曇っていく。
やがて、鋭い目線で手紙を睨みつけていたティエルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて顔を上げた。
「ヒントは『竜の父』。これ以上は自力で頑張れってさ」
そう呟いた声は少し息切れしていた。
「『竜の父』?」
するとリンが不思議そうに首を傾げた。
ティエルはふらつく頭を押さえると
「歩きながら説明する。とにかく竜の森だ。そこにきっと答えがある」
と言った。
がんがんと重厚な扉を数回叩く。しかし中からあの飄々とした男が出てくる気配はなかった。
「留守ですか?」
それにリンは納得がいかなそうに眉をひそめる。彼女はドアノブを握り、何度か引く。
鍵がかかっているのか、扉はガタガタと揺れるだけで開く気配はない。
「そうみたいだな」
ティエルは困ったように後ろ頭を掻くと「うーん」と唸った。
滅多なことでもない限り図書館からロエルは出ない。そんなロエルが今ここにはいない。
「もしかしたら城に居るのかもな」
それにティエルは空を見上げた。そこには遥か彼方に浮かぶエデン城がある。
「城に?」
「ああ、たぶん。」
はっきりそうと断言はできないが、ロエルが図書館に居ない場合は次に城に居る可能性が高い。それに、エヴィが捕まったこともある。親代わりであるというなら放っておくはずがないだろう。
「もしそうなら一回城に戻るしかありませんね」
言いながらリンもまた顔を上げて空を睨んだ。
二度手間ではあるが手掛かりがない以上はそうするより他ない。
それに城に戻れば殺された兵の体をリンに調べてもらい、同じ魔力が残っているかも確認が出来る。何も悪いことだけではない
「そうだな」
ティエルは空を見上げたままそう言った。
そして、視線を空から剥がすと、図書館の敷地から出ようと外に足を向ける。
「ティエル様、お待ちください」
その足をリンの声が止めた。
「ん?」
ティエルはその声につられて後ろを振り返る。
すると空に向かってリンが手を伸ばしていた。
その手に黄金色に輝く鳥が止まる。
「伝書魔法? どこから……」
「ロエル様です」
ティエルの戸惑いにリンは口早に答えた。それから歌を口ずさむ。
その瞬間、リンの手の上で毛を繕っていた鳥が霧状の物体となった。それから凝縮。ポンッという愛らしい音を立てて黄金色の封書の形になる。
「何だ、今の?」
「解除魔法です。ご存知ありませんか?」
封書を切って中身を取り出すリン。それをティエルに差し出しながら首を傾げた。
「握りつぶす以外に方法がないと思ってたんだが……」
それを受け取ったティエルは何かを堪えるような顔で呟く。
「そちらの方が早いですから、そうする方は多いですね。ましてティエル様は……。それが悪いとは思いませんが、私はあまり好みませんので」
そう言いながらリンは微かに表情を和らげる。しかし、すぐに固い顔に戻して「それで、手紙にはなんと?」と首を傾げた。
「ちょっと待ってくれ。前置きが長い」
項垂れながら手紙に目を通すティエル。文字を読むスピードが速いのは日頃の読書の成果だろう。
しかし読めば読むほどその顔がどんよりと曇っていく。
やがて、鋭い目線で手紙を睨みつけていたティエルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて顔を上げた。
「ヒントは『竜の父』。これ以上は自力で頑張れってさ」
そう呟いた声は少し息切れしていた。
「『竜の父』?」
するとリンが不思議そうに首を傾げた。
ティエルはふらつく頭を押さえると
「歩きながら説明する。とにかく竜の森だ。そこにきっと答えがある」
と言った。
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