エデン・ガーデン ~終わりのない願い~
5
ティエルとエヴィはトラスト軍の到着を待つために負傷者達を商店街の人々に任せてその場にとどまることにした。爆発現場を見ないように現場の近くで兵が来るのを待つ。
壁に寄りかかって体を支えながらティエルは横を見た。
「大丈夫か、エヴィ?」
そこにはもともと白い肌をより白くさせて震えるエヴィがいた。俯いているせいで顔がよく見えない。
エヴィは問いかけに力なく「うん」と頷いた。
しかし、重そうな袋を強く抱きしめて小刻みに震える姿のせいで、全く大丈夫そうに見えない。
その姿にティエルは思わず視線を逸らす。
「別に俺と一緒に待たなくてもいいんだぞ。ロエルのところに行くんだったらそっちに行っても……」
「良いの」
ティエルが言うとエヴィは頑なに首を横に振った。
今にも倒れてしまいそうなのに、その言葉だけはしっかりとしている。強い言葉にティエルはそれ以上何も言えなかった。
しかしやはりエヴィをこのままこの場に留めて良いとは思えない。
「エヴィ」
ティエルは再びエヴィに顔を向けると、
「事件の時、何をしてた?」
と尋ねた。
詰問するような声にエヴィが少し顔を上げる。
それから少しだけ考えるように首を傾けて遥か上を見る。
「すぐじゃないけど、ティエルの後を追いかけたの。そしてたら悲鳴、というか叫び声、みたいなのが聞こえて……そこに向かったの」
「それを証明できる人は?」
「商店街の人達がうしろにいたから、その人達にきいてみて」
その答えにティエルは深く息を吐いた。良かった、と。
それから少し口調を柔らかくして問いかける。
「エヴィの指って、誰でも出来るのか?」
その突拍子のない質問にエヴィは一瞬何を聞かれているのかわからないようで、不思議そうに首を傾げた。しかしそれが魔法のことを聞いているのだと理解するのにそう時間はかからなかった。
「ううん。出来ないと思う。なんでそんなこときくの?」
しかし聞かれた理由の方がわからず、傾けた首はそのまま戻ることがなかった。
その答えをティエルが話そうと「実は――」と口を開く。
そのとき、
「ティエル様」
トラスト軍の兵士達が到着した。
「よく来た」
ティエルは言いかけた言葉を途中で切ると、ぱっと壁から背を離して兵を事件現場まで案内する。
現場の惨状を見た兵士達はわずかに慄いて数歩後ろに下がった。
状況を軽く説明する。すると指揮官と思しき兵が
「状況をより詳しく知るためにティエル様に城の方でお話を伺いと思います。ご同行願えますか?」
と言った。
「わかった」
ティエルはあまり間を空けることなく頷く。
「では、そちらの方も一緒に……」
そして兵はちらりとティエルより少し離れた位置で様子を伺っていたエヴィを見た。
それにエヴィも間を空けずに頷く。
「わかったの」
しかし
「いや、大丈夫だ。エヴィは駆け付けてくれただけで、犯人については何も知らないし」
ティエルは兵とエヴィの間に割り込むとそう言った。
「ティエル?」
それにエヴィが珍しくしかめ面をする。
兵は少し怪訝そうな顔をした。
「悲鳴が聞こえたとき、そこに駆け付けたのは俺だけで他の人達はこの状況になった後にきてくれたんだ。だから話を聞いても仕方がない」
エヴィには答えず兵に向けてそう言うと、兵は納得したように何度か頷いた。
「左様ですか。ではティエル様のみ、城にご同行願います」
「ああ」
ティエルは深く頷くと、エヴィを見遣る。
エヴィは不安げな顔でティエルを見ていた。
「じゃあな、エヴィ。ロエルのところに行くんだったらちょっと報告頼んだ」
笑って軽く手を上げる。エヴィはそこで何かに気付いたように小さくこくんと頷いた。
壁に寄りかかって体を支えながらティエルは横を見た。
「大丈夫か、エヴィ?」
そこにはもともと白い肌をより白くさせて震えるエヴィがいた。俯いているせいで顔がよく見えない。
エヴィは問いかけに力なく「うん」と頷いた。
しかし、重そうな袋を強く抱きしめて小刻みに震える姿のせいで、全く大丈夫そうに見えない。
その姿にティエルは思わず視線を逸らす。
「別に俺と一緒に待たなくてもいいんだぞ。ロエルのところに行くんだったらそっちに行っても……」
「良いの」
ティエルが言うとエヴィは頑なに首を横に振った。
今にも倒れてしまいそうなのに、その言葉だけはしっかりとしている。強い言葉にティエルはそれ以上何も言えなかった。
しかしやはりエヴィをこのままこの場に留めて良いとは思えない。
「エヴィ」
ティエルは再びエヴィに顔を向けると、
「事件の時、何をしてた?」
と尋ねた。
詰問するような声にエヴィが少し顔を上げる。
それから少しだけ考えるように首を傾けて遥か上を見る。
「すぐじゃないけど、ティエルの後を追いかけたの。そしてたら悲鳴、というか叫び声、みたいなのが聞こえて……そこに向かったの」
「それを証明できる人は?」
「商店街の人達がうしろにいたから、その人達にきいてみて」
その答えにティエルは深く息を吐いた。良かった、と。
それから少し口調を柔らかくして問いかける。
「エヴィの指って、誰でも出来るのか?」
その突拍子のない質問にエヴィは一瞬何を聞かれているのかわからないようで、不思議そうに首を傾げた。しかしそれが魔法のことを聞いているのだと理解するのにそう時間はかからなかった。
「ううん。出来ないと思う。なんでそんなこときくの?」
しかし聞かれた理由の方がわからず、傾けた首はそのまま戻ることがなかった。
その答えをティエルが話そうと「実は――」と口を開く。
そのとき、
「ティエル様」
トラスト軍の兵士達が到着した。
「よく来た」
ティエルは言いかけた言葉を途中で切ると、ぱっと壁から背を離して兵を事件現場まで案内する。
現場の惨状を見た兵士達はわずかに慄いて数歩後ろに下がった。
状況を軽く説明する。すると指揮官と思しき兵が
「状況をより詳しく知るためにティエル様に城の方でお話を伺いと思います。ご同行願えますか?」
と言った。
「わかった」
ティエルはあまり間を空けることなく頷く。
「では、そちらの方も一緒に……」
そして兵はちらりとティエルより少し離れた位置で様子を伺っていたエヴィを見た。
それにエヴィも間を空けずに頷く。
「わかったの」
しかし
「いや、大丈夫だ。エヴィは駆け付けてくれただけで、犯人については何も知らないし」
ティエルは兵とエヴィの間に割り込むとそう言った。
「ティエル?」
それにエヴィが珍しくしかめ面をする。
兵は少し怪訝そうな顔をした。
「悲鳴が聞こえたとき、そこに駆け付けたのは俺だけで他の人達はこの状況になった後にきてくれたんだ。だから話を聞いても仕方がない」
エヴィには答えず兵に向けてそう言うと、兵は納得したように何度か頷いた。
「左様ですか。ではティエル様のみ、城にご同行願います」
「ああ」
ティエルは深く頷くと、エヴィを見遣る。
エヴィは不安げな顔でティエルを見ていた。
「じゃあな、エヴィ。ロエルのところに行くんだったらちょっと報告頼んだ」
笑って軽く手を上げる。エヴィはそこで何かに気付いたように小さくこくんと頷いた。
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