どうやら主人公はお節介が過ぎるようだ

ミルクプリン

1章 眷属

    試験結果の紙をカウンターの人に渡すと営業笑顔スマイルで手続きが終了した。

「こちらが冒険者カードと義務教育免除証明カードになります。一応規則ですのでご説明いたしますが、義務教育免除試験に受かったとしても学舎で教育を受けることは権利として可能ですので、ぜひ、入学だけでもすることを推奨します。」

「行っていいことありますか?」

「人脈の拡張ができますし、免除証明カードを持っていますと学舎の売店での買い物時に半額にになります。購入時に提示してください。なお、どちらのカードも通常、再発行は致せませんのでご注意下さい。」
 
「わかりました。気を付けます。」

「その他の説明はこちらのガイドブックにのっていますので目を通しておいてください。では、今日から貴方はFランク冒険者です。活躍とご健闘をお祈りいたします。」

    ありがとうと礼をいい、クエストボードまで足を運ぶ。

    冒険者がクエストを受けるにはクエストボードから依頼を剥がして受付で受理してもらわなければならない。Fランクのボードに行くと依頼は六種類しかなかった。



F 薬草採取
ヒール草10本
1000トロ
ポイント=2

F 薬草採取
マジック草10本
10000トロ
ポイント=2

F 町の清掃
町の掃除
1時間900トロ
ポイント=1

F ペットの散歩
ペットの散歩をする
30分900トロ
ポイント=1

F 公衆トイレ汲み出し 
公衆トイレに溜まった排泄物の汲み出し及び清掃。(汲み出した汚物は堆厩肥にします。)
1箇所5000トロ
ポイント=2

F 鉄の採掘
場所=龍山
鉄鉱石を鉄10キロ分以上採掘
基本2500トロ+キロ250トロ
ポイント=1




    はっきり言っていいものがない。薬草類は直接売ればもっといい値段(倍)で売れる。その差額は半々でギルドの仲介料と税金らしい。

    仕方ないので常時依頼となっていた【ヒール草十本】と【マジック草十本の】薬草採取の依頼を受け町の外に出る。向かったのは草原だ。いつも母上様が薬草採取をしている場所だ。スライムがちらほら草を食べている。そよ風が心地いい。

    母上様が使えるスキルは俺も解析し終わっているから全て使える。前の人生では他人の人生の努力を盗んでいるようで自重していたがそれももうやめた。

「【テイム】」

    母上様のスキルであるテイムを使う。草原に点々といるスライム達にだ。スライムはテイマーがテイムの練習に使う魔物だ。ここの草原にいるのなら容易くテイムできる。合計五十匹テイムした。そのスライム達に今度は付与魔法で色々付与していく。

    元々スライムは本能で生きている生物であり、考えたり話したりしない。母上様のアヲイが異常なのだ。

    だから、俺は幾つか二人に付けたものに合わせて追加で幾つか付与をした。【経験値中上昇】【経験値大上昇】【経験値超上昇】【知力上昇】【進化促進】【念話】【思考】の7つだ。

    今までの人生で俺は一つの定説にたどり着いた。スライムは神秘だ。俺の解析魔法でも全てを見通せない。故に可能性を秘めているということだ。誰も彼もが最弱と言うが、母上様のアヲイのようにそうとは限らないとしった。だからこそ、大賢者として調べたい。

    かつて絶望した俺が求めていた答えがそこにある気がした。

    ともかく付与し終わり、50匹に名前を付けなければならないようだ。面倒臭いので適当に近くにいた奴から1号、2号と付けて行き、50号までつけた。我ながら安直だ。

    一匹、一匹を鑑定魔法で詳しく調べると全ての個体に1つずつ固有スキルが宿っていた。スライムはやはりチート生物だった。

「「「「ボス、これからよろしくお願いします!」」」」

「よし。お前ら先ずは薬草採取だ。この二本を採取な。」

「「「「了解です!」」」」

    俺が適当に生えていたヒール草とマジック草をスライム達に見せると元気よく返事した後にのそのそと移動し始めた。

まだレベルが1だから動きが遅い。ここは彼らに任せていいだろう。

     さらさらと風が吹く。

     緑の草原がふわりと踊る。

     薬草を取る人は疎らだ。

何もない丘に立つ。腰を軽く落とした。脚を肩幅に開ける。ゆっくりと確かめるように一呼吸で右の拳を突き出し、引くと同時にもう一呼吸で左の拳を同じように突く。

【解析魔法】で分析し、最適化した動きを身に染み込ませていく。上が終わったら下半身。そして、連動させていく。粗方終わったらスピードを上げる。だが、雑にならない。

一度拳を突く度に風を裂き、空気が震えた。子供の体とは凄いもので吸収が早い。実際体術だののレベル・・・というのはただ単に技の鋭さが増すだけであり、技術は身に付かない。だから、発勁やら縮地やらの修練が必要な体系化された物は練習しなければ身に付かないと言うことであり、今のうちにトレースしているわけだ。

粗方、素でのトレースが終了したため俺の動きは、次の体系の動きに変更される。体の動きに魔力を付け足す。いや、同伴させるんだ。

一般的に魔闘術と呼ばれる、魔力を纏い戦う技術に発展していく。魔力を纏わない戦い方を初心者向けとすれば、この技術は中級者向けと言えよう。この技術の真髄は魔力と動きを同調させ魔力に方向性を与えることにあるだろう。

この技術は謂わば武の1つの極致とも言える。俺は何人もの熟練した技術者を解析した上でその幾つかの法則性すらも読み解いた。今俺に出来るのはここまでだ。穿つ性質の方向性を持たせ、龍の体を貫く程度の物理攻撃は出来る。

まだ体が未熟なためこれ以上は危険だ。せめて十を越えなければ体が内側から崩壊する。そんな終わり方は彼女が言うような幸せな人生を送ったとは言えない。だから俺はより高みを目指して自らに解析魔法をかけ、クオリティを上げていく。

一息ついていると「ボス、ワタクシめにも御身の御技をご伝授戴けないでしょうか!」と、スライムの1匹が俺に話しかけてくる。こいつは確か、24号だ。固有スキルを見てみると【建御雷之男神タケミカヅチノオノカミ】と言うスキルで【雷支配】【白鹿召喚】【十握の剣召喚】【武術上達促進】【軍団士気向上】【剛力】【破邪】【地動支配】の9つの力があった。

このスライムの顔?は真剣その者のように見えた。ここで手を差しのべられなければ俺が嫌っている人種と同じになってしまう。それは嫌だ。

「俺の指導はきついぞ。」

「はい。ありがたき幸せ!」

スキルの素質は十二分。才能の素質は判定不能・・・・。しかし……。24号はキラキラした目?でこちらを見ている。

「んー。どうしたものか。」

「ボス、どうされたのですか?」

また、別のスライム12号が訊ねてくる。

「体系化された技は人体の構造に沿って形作られた物だ。だから、スライムの不定形な性質の体では人と同じように教えることはできない。」

「つまり、人と同じ仕組みの体があれば宜しいのですか?」

「ああ。」

「でしたら不肖12号にお任せください。」

12号を鑑定魔法と解析魔法で調べ直すが24 号を人間にするようなスキルはなかったはずだ。程よいタイミングだから全部のスライムを集める。山のような薬草は俺が二人の分のついでに作ったアイテムバックに消えた。

「この12号の固有スキルは【導師ミチシメスモノ】つまり、辿るべき道筋を見つけ、示すものです。自分が出来る出来ないに関わらず方法を提示する者。とでも言えば分かりやすいかと。」

「成る程。」

よくわからんが納得しておく。


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