どうやら主人公はお節介が過ぎるようだ

ミルクプリン

1章 夢中になるということ

「坊主、好きな穴を選びな。」

    ボビーに連れられ採掘できる穴までやって来た。下けら見上げると穴の空いた山にしかみえない。不規則に穴が空いている。

「じゃあ、左側の少し小さい入口の穴で。」

    何となくそこがいいように感じた。僕だって不思議なくらいそこに目が行ったんだ。

「おう。足元暗いから気ぃーつけろよ。」

「わかりました。」

    無料で貸し出される魔石灯をもって気の向くままに進む。何となくここだと思ったところで止まる。

「さて、ここでいいんだな。」

「はい。何となくですが。」

「さっきの続きを話すわぁ。あー、コツッつっても気になるところを掘るしかないんだわ。この、でっけー金槌とかツルハシ、スコップ、タガネなんかをつかってな。」

「ああ、ちょっと硬い石とかに当たったら道具に魔力を込めて叩いてみな。簡単に割れる。まあ、掘りすぎても崩落の可能性があるから気を付けてやれよ。」

    そういわれて道具一式を渡された。早速やれよ。みたいな顔してる。

    期待されているような感じがしたのでさっさとやることにした。ツルハシを持ち、軽く壁を削ってみる。表面だからか壁は土が多いようで石の間の土をほじれば簡単に崩れた。

    結構、キラキラした物が出てくる。まわりも崩して結構な量がてにはいった。手始めにこんなものでいいかな。ボビーの方を見ると凄い顔で鉱石を選別していた。

「おいおい。スゲーじゃねぇーか。こっちは金。お、これは魔鉄。あ、これは火の魔力水晶か?    お、土のもある。あれ、水まで……。それにこりゃー……。」

「あ、あのう。」

「ん、どうした?もっと喜べよ。」

    正直言って何を喜んでるのか分からない。

「僕、価値とか、種類とか、どれがどれなのか分からないんですけど。」

    そう。箱入り息子のように大事に大事に監禁さそだてられてきた僕にはそのような事情知りようがなかった。

「なにっ!    っち。しょうがねぇな。」

    ボビーはこんな凄いことしてるのになに言ってんだ。と小言を挟みつつ丁寧に教えてくれた。驚いたのは物の値段だ。魔鉄はグラム五万トロで取引されているらしいし、火の魔力水晶は魔法使いの火の魔法を補助する魔道具になって、三十グラムで十万トロは下らないらしい。今、僕が掘った分だけでも総額百二十万トロは下らないらしい。

「有り難うございました。お陰で大体わかりました。」

「お、おう。まだ、ここで堀続けるのか?」

「はい。まだ、行けそうな気がします。」

「そうか。じゃあ、少し続けていてくれ。俺の奴隷達・・・をつれてくる。流石にこの量を二人じゃあ運べねぇだろ。」

「はい、お願いします。」

    ボビーは僕の返事を聞くと去っていった。この国では奴隷制度が許されている。犯罪者や高額の借金をしたもの。口減らしや事情があるものが奴隷に落ちる。

    一歩間違えは妻も僕もそちら側に行ってしまうだろう。そうならないようにと気分に任せてツルハシを振るう。

    出てくる、出てくる。ザクザク出てくる。この坑道には僕しかいないみたいで掘ったらそのまま放置して、どんどんポイントを変えていく。

    もう、魔力を流しっぱなしにしてツルハシを振るった。途中で「運び出しとくぜー」というボビーの声がして「お願いしまーす」とツルハシをふりながら返した。

「よし、これで最後にしよう。」

    どれだけ時間が経ったか分からないが一番奥まで来てしまった。やり過ぎた感は否めないがやりきって清々した。掘れそうなところがあると体がムズムズするのだ。

    最後のポイントを堀終え、放置してあった一輪車で外に運んだ。驚いたことに道中の掘ったものは全て運び出されていた。

    坑道から出ると地べたにへばっている屈強な男が三人いた。奴隷の首輪をつけている。ボビーの奴隷だろう。

「よう、坊主。もう満足か?」

    主人であるボビーは木陰で涼しい顔して涼んでいた。

「はい。この坑道は粗方取り尽くしたと思います。」

「そりゃよかった。掘り出したものはこの現場で一番人の多い錬金術師の店に運んどいたからな。ソレも早く運んじまえよ。今もヒイヒイ言いながら治金してると思うぜ。」

「有難うございます。」

    一輪車を押して錬金術師の店にやって来たら店の外で加工していた。あんな量持ってくるの僕くらいだから僕のせいでしかない。恐る恐る作業している人に近づきこれもお願いしますと引き渡す。

「こんなふざけた量を掘り出したのは貴方ね!    新人だからって言うボビーの野郎に騙されたわ!」

    とても怒っているようだ。甘いものを取られたときの妻の癇癪より怖い。取り敢えず謝った方がいいか。

「はい、僕です。すみません。」

「あら、潔いこと。ま、いいわ。」

「ところで、進捗はどうですか?」

「どうもこうもないわ。みんな魔力切れよ。」

「魔力切れですか?」

「そうよ。金属を製錬、つまり、取り出すために魔力を使った分解を行うの。まあ、鍛冶の一環っていえば一環なのだけど……。貴方、やってみる?」

「え、僕ですか!?」

    僕魔法使ったことないのだが……。

「ええ、そうよ。簡単だしやってみない?」

「そこまで言うなら……。」

「今の時代の製錬っていうのはね、まあ、この方法は転移魔法陣を研究してる時に偶然見つかったんだけど、試作した魔方陣で鉱物を転送したら分解されて出てきたのを利用してるのよ。まあ、ソレから数年後、転移魔方陣は完成するんだけどね。副産物としてこれが生まれたって訳。」

    大きめの鉄の板に魔方陣が刻まれていた。

「使い方はどうやるんですか?」

「その辺の魔道具と変わらないわ。製錬したいものを乗っけて魔力を込めるだけよ。練金魔法でインゴットにしてあげるからやってみなさい。」

    これなら僕でも出来そうだ。

    適当に山になった採掘物を魔方陣に載せ、魔力を込める。直ぐに回復するからいいけど結構な量を取られた。一キロ辺りMP10くらいかな?

「いい感じじゃない!まだ行けそう?」

「はい。大丈夫です。」

    もう、回復したし次をやろう。僕は次々に魔方陣を起動させていく。ピカピカ光って少し楽しい。この魔力をゴリゴリとられる感覚も癖になる。気が付いたら日がの空に沈もうとしていた。いや、東の空から昇ろうとしていたの間違いだった。

    回りで起きている人は誰もいない。

    まあ、いいかと、【錬金魔法】の【溶接】と【変形】を発動させる。名も知らない錬金術師の人がやっているのをよーく見て習得した。練金魔法を発動させると僕が分解させた金属が一塊になっていく。

    数時間前に僕に取り合ってくれた錬金術師の女の人は魔力切れでダウンしていた。彼女よりもっと魔力使ってるはずの僕はピンピンしている。取り敢えず色々手にはいった。



金属
錫=632キロ。キロ450トロ
鉄=374キロ。キロ500トロ
銅=256キロ。キロ400トロ
銀=151キロ。グラム1,300トロ
金=195キロ。グラム3,000トロ
魔銅オリハルコン=1,200キロ。キロ25,000トロ(銅の十倍の重さ)
魔鉄まてつ=700キロ。グラム50,000トロ
魔銀まぎん=600キロ。グラム300,000トロ
聖銀ミスリル=6キロ。グラム3,000,000
竜鉄=21キロ。グラム90,000トロ
竜聖鉄=0.5キロ。グラム990,000トロ
蒼炎鉄=5キロ。キロ1,000,000トロ
その他
水晶クオーツの原石=イッパイ
金剛石ダイヤモンドの原石=イッパイ
ガーネットの原石=イッパイ
エメラルドの原石=イッパイ
サファイアの原石=イッパイ
ルビーの原石=イッパイ
翡翠の原石=イッパイ
アメシストの原石=イッパイ
爆発魔石の原石=500グラム。グラム3000トロ
竜の輝石の原石=少し。グラム20,000トロ
深海魔石の原石=20グラム
火の魔力水晶=25トロ。グラム3,400トロ
水の魔力水晶=25キロ。グラム3,400トロ
土の魔力水晶=20キロ。グラム3,400トロ
風の魔力水晶=23キロ。グラム3,400トロ
光の魔力水晶=17キロ。グラム3,400トロ
闇の魔力水晶=16キロ。グラム3,400トロ
無の魔力水晶=12キロ。グラム3,900トロ



    この瞬間、僕の借金返済が確定した。
宝石類と魔力水晶類を少し売るだけで完済できる。

    宝石ギルドの方にいけば適正価格以上で引き取ってくれるはずだ。朝帰りだかナニ帰りだかわからないけど、妻は許してくれるだろうか。

    ふう。目が覚めてしまってこれでは眠れない。久しぶりにステータスを見てみるか。



ハイネマン(・ヘリベルト) 15歳 人族 没落貴族当主・見習い鍛冶師

レベル1
HP   13→295
MP  10→12546
力    11→275
敏捷10→327
耐久10→348
魔力10→653

スキル
魔力操作 LV5
採掘         LV6
解体         LV2   
査定         LV4 
錬金魔法 LV4

称号
箱入り息子
没落貴族
天才採掘者
採掘狂い(採掘疲労軽減)
土の分解者(贈・練金魔法)
製錬狂い(製錬の質上昇)
宝物狩人ジュエリーハンター



    あれ、ナニコレ?    酷いことになってる。詳しく知らないけど中級冒険者くらいのステータスになってる。

    よし、時間が空いたときにトレーニングしよう。せめて、手の届く範囲は自分で守れるようになりたい。


「おーい。坊主ー。」


    ありきたりなことを考えているとボビーがやって来た。


「お早う?    ございます。ボビーさん。」


「おう坊主、まさか徹夜したとか言わねえよな。」


「いやー、楽しくなっちゃいまして……。」


「やったのかよ。スゲーな。しかもこの量!」


    僕が一晩かけて製錬、もはや精練したものが、軽く山のようになっていた。


「夢中になってたらこうなったと言いますか……。」


    はぁ。ボビーはもはや諦めたような顔になって溜め息をついた。


「ところで坊主、これをどうやって運ぶつもりだ?」


「あ、考えてませんでした。」


    店までは数キロある。確かに僕一人でなんて何日かかるのかわからない。「ったく、しょうがねぇな。」と言ってボビーがガンツの所まで馬車ではなく竜車を出してくれるらしい。


    竜車を牽くのは土竜の亜種でホースドラゴンと呼ばれている。馬系の魔物と土竜の交配種だ。たくさん食べるが、病気に強くパワーやスタミナ、スピードに優れている。卵の時から飼い慣らされてるため人に従順だったりする。


「まあ、一両増えるだけだから気にすんな。それに、ガンツの野郎の驚いた顔が見てみてぇーからな。」

    それでも僕は嬉しかった。






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