スキルメイカー

にこ

その3 冒険者登録

ギルドの前につくと入り口にはすでに正太がいた。
「あっ! 竜馬君こっちだよ!」
正太が俺に気づいたようだ大きく手を振っている。
「すまん、待たせたか?」
「ううん、僕もさっき着いたところだよ」
「そうか、とりあえずさっさと冒険者登録をするか」
「あーうん。えっと、ところで竜馬君後ろの方は?」
「あ、やっぱり説明要る?」
ククルをなんて説明すればいいか考えていなかった俺は聞かれないようどんどん話を進めようとしたが無駄だったようだ。


俺がどう話そうか悩んでいるとククルが前に出た。
「私はククリって言います。先ほどリョウマさんと出会って、パーティメンバーを探しているとお伺いしましたのでぜひ私もパーティに入れてほしいと頼んだんです」
「わぁ、そうだったんですね。僕、正太って言います。ククリさんよろしくお願いします」
正太はククルの正体に気づくこともなくパーティが増えたことを喜んでいた。


「リョウマさん、どうしましたか? ギルドに入りますよ」
「ああ、うん。今行く」
ククルと正太に追いつくとギルドの扉を開けた。


ギルド内は想像どおりの建物であったが思っていたより人は居なかった。
俺は冒険者登録をするために正面のカウンターにいる男性に話しかけた。
「すみません、冒険者登録をしたいんですけど」
「おう、坊主たちも登録か。今日は本当に多いな、お前さんたちは午前中の奴らの知り合いか?」
職員さんの言っている“奴ら”とは、おそらく他のクラスメイトだろう。
「あ〜多分知り合いだと思います。知り合いがご迷惑をおかけしました」
よく見ると周りにいる職員の方々の顔には疲労が見える気がした。


「いや、俺たちの仕事の1つだからな。それより冒険者登録だろ、3人全員か?」
「あ、いえ。私は既に登録をしていますのでお2人の登録をお願いします」
ククルは既に登録をしていたようだ。
王女様が冒険者になっていることがこの世界の常識なのか少し気になった。


「それじゃあ2人には名前と年、職業を教えてくれ」
「職業とは?」
「職業はなんでもいいぞ。剣が得意なら剣士、魔法が得意なら魔法使い、めんどくさいならそのまま冒険者でもいい。あくまで自己紹介のようなもんだからな」
「そうですか……俺はリョウマです。年は18歳で職業は刀剣士にして下さい」
刀も剣の分類に入ると思うので剣士でもよかったが、なんとなく自分が刀を使うことを明言しておきたかった。まだ刀に触ってもいないが。


「刀剣士? 剣士とは違うのか? まあいいか。それでお前さんも教えてくれるか?」
「竜馬君、刀が使えるの⁈」
職員さんの言葉など無視して正太が刀に食いついてきた。
「ま、まあ今は持ってないけど午前中に作ってもらえるように頼んだんだ」
「へぇ、いいな〜やっぱり刀は憧れだよね!」
正太も立派な日本男子だったようだ。


「そろそろいいか?」
職業さんやククルが少し呆れたように見つめていた。
「すみません! 僕、正太って言います。竜馬君と同じ18歳で職業は……結界師です!」
「ショウタで結界師だな……よし! そしたら2人ともこのカードに触ってくれ」
そう言うと、俺たちの前にそれぞれ茶色のカードが置かれた。
触ってみると少し光った後、カードにはさっき伝えた名前、年齢、職業のほかにランクなども書かれていた。


「これで冒険者登録は完了だ。街に出入りするときや国境を越えるときに身分を証明してくれるから決してなくすんじゃねえぞ」
再発行には1万ニールかかるらしい。この値段は冒険者カードを大事にしてもらうために割高に設定されているとか。
「あの、パーティ登録も一緒にお願いできますか?」
ククルが職員さんに尋ねた。
冒険者カードの主な機能の1つにパーティ登録というものがあるらしい。
これは依頼の報酬の自動分配やパーティで依頼を受けるときに、自分が依頼のランク以下でもパーティの約3割がランクに達していれば受けれるといったことができる。


「分かった。それでリーダーは誰にするんだ?」
「それはランクが高いクク「「リョウマさん(君)で!」」……だそうだ」
「あっはっは、そうかそうか、坊主は慕われてるな。パーティっ登録をするから1回カードを貸してくれ」
数分後、カードが返されると俺のカードだけ左下に赤い印が追加されていた。
「その印がリーダーの証だ。これで終わりか?」
「はい。ありがとうございました。ええっと……」
「リールだ」
「はい、リールさん」
そういうとリールさんは少し考えるそぶりを見せてからわざとらしくせきをすると、
「え~あ~、ようこそ冒険者の世界へ。まぁ、なんだ。死なない程度にがんばれ」
と恥ずかしそうに言った。

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