スキルメイカー

にこ

プロローグ

あの日、俺の人生は大きく変わった。
いや、正しくはクラス全員だ。
-------------------------------------


夏の暑さも引き風に冷たさを感じるようになった頃、俺は夏休みが終わり気だるさを感じながらも何処にでもいる普通の高校生と同じく学校に通っていた。
趣味がゲームと異世界ものの小説で普段から人と関わらないため彼女はもちろん、友達も数える程しかいない。
いつものように登校するなり自分の席で小説を読んでいると、


「みんなっ、おはよう!」
「「「勇也君おはよう!」」」


クラスのリーダー的存在であり、女子からの人気ナンバーワンである高橋勇也たかはしゆうやが毎度の如く元気に入ってきた。
みんなから慕われ人一倍正義感が強い、異世界に行ったら勇者に選ばれそうな奴だ。


「おおっ勇也! 丁度いいところに来てくれた。すまねぇ、今日の英語の宿題見してくれ。俺今日当たるんだよ」
「またか悠二。お前先週も忘れてただろ!」
「悠二君、宿題はちゃんとやらないと身につかないよ!」


勇也の登場に合わせて2人の男女が近づいた。男子が鈴木悠二すずきゆうじ、女子が日高栞里ひだかしおりだ。
2人とも幼稚園からの幼馴染でいつも勇也と一緒にいるいわゆるいつメンってやつだ。
ちなみに、俺もあいつらとは幼稚園から同じだが仲が良かったのは小学生の低学年ぐらいまでで小3の時に同学区内の反対側に引っ越したため、遊ぶ機会が減り離れていった。
あくまでも引っ越しが原因でありはぶられただけではない、断じて無い。
と、紹介をしている間に勇也達の会話が終わったのかなぜか栞里が俺の方にやってきた。


竜馬りょうま君、おはよう! なんの本を読んでるの?」
「ん? ああ、おはよう日高さん。え〜っと、これはファンタジーの小説かな」
「へ〜竜馬君ファンタジーとか好きなんだ! 妖精とかお姫様が出てくるお話、私も憧れちゃうな〜」
「あ、ああ。うん、そうだね」
(とっさに異世界ものの小説を
ファンタジーって言っちゃったけどきっと想像してるものが違うんだろうな。)


「あっそうだ! 今日放課後にみんなで新しく駅前に出来たケーキ屋さんに行くんだけど竜馬君も行こう!」
「いや、俺は遠慮しておくよ。今日は用事もあるしね」
「そっか〜、じゃあいつだったら空いてる? みんなで遊びに行かない?」
「あ、うん。え〜っとね……」
(今日はやけに誘われるな。うわっ! クラスの男子達が睨んでやがる。なんだよ! どうすれば良いんだよ。)
「栞里っ、竜馬が困ってるぞ。あまり無理に誘うな」
「えっ! ごめんね竜馬君」
「いや、大丈夫だよ。また予定が空いたらこっちから言うね」
「うん! 待ってるね!」


と、俺にとってはいつもと少し違う日常だが良くある高校の1日が始まるかと思えた時、丁度部屋の中心近くにいた勇也の足元からクラス全体にまるで魔法陣のような模様が一瞬にして現れた。
それは円周に沿うように見たこともない文字が記され、中心に行くにつれて複雑な模様が描かれていた。
何故そんなに詳しく説明できるのかといえば、既に現れてから5分が経過しているからである。
最初は驚いていたクラスの連中も落ち着き、興味津々に魔法陣らしきものを観察している。


「おいっ、みんな! ドアが開かないぞ!」
「そんな訳あるか! 
     ……あれ?本当に開かない!」
「窓も開かないよ!」


一時的に落ち着いていたクラスが、外に出れないことを知りまた慌て始めた。
一部の男子達がニヤニヤしながら魔法陣を見続けているのは、恐らく俺と同じくこれが異世界召喚か何かだと察したからだろう。
とか言う俺も異世界に行けると思いニヤニヤしてしまう人の1人だが。


(だがおかしいな。何故魔法陣が現れてるのに何も無いんだ? しかも魔法陣は勇也の真下から現れた。つまり勇也が勇者的存在ってことか。お約束だな。)


「みんなっ、落ち着いて! 取り敢えずドアも窓も開かないみたいだ。だけど外からならば開けれるかもしれない。それに時間的にもうすぐホームルームの時間だ! もしドアが開かないって先生達が分かったら何かしら行動してくれるだろう」


勇也の言葉に慌てていた奴らが少し落ち着いて中央に戻ってきた。
と、その時教室前方のドアが急に開いた。


「皆さん、なんで教室の真ん中に集まっているんですか〜。ホームルームの時間ですよ、席についてください」


それはうちのクラスの担任である鈴木恵実すずきえみ先生だった。
現在のクラスの状況を知らない先生は、教室に入ってくるとドアをすぐに閉めてしまった。


「あっ、恵実ちゃん! ドア閉めないで!」


クラスの女子の誰かがそう叫んだ。
だが、ドアは既に閉められてしまった。
その瞬間、なんの変化もなかった魔法陣が急にまばゆい光を放ちあたりを真っ白に染め上げた。


(そうか! 転移する人の中に先生も入ってたのか!)


そう考えて俺の意識は無くなった……


真っ白な世界が急に真っ暗になった時、俺は意識がなくなったのだと悟った。


---≪異世界転移≫の効果により対象者に合ったスキルを付与します---


突然頭の中に声が響き少し焦ったが、スキルの付与と聞き俺はテンションが上がった。


(キター!これはどっかのスライムさんみたいに能力の強奪とかレベル最大値が2になる代わりに最強の力が手に入るパターンか?!いや、普通に成長速度増加系とか固有の魔法とかでも良いな!)


そんなことを考えている俺に脳内に響く声は淡々と話し始める。


---対象者にユニークスキル≪製作者メイカーlv.1≫を付与
ハイスキル≪成長速度増加lv.1≫を付与……付与失敗
スキル≪剣術lv.1≫を付与……失敗
スキル≪身体強化lv1≫を付与……失敗
スキル≪物質鑑定lv.1≫を付与……失敗
スキル≪火魔法lv.1≫を付与……失敗
スキル≪水魔法lv.1≫を付与……失敗
スキル≪闇魔法lv.1≫を付与……失敗
称号≪異世界からの呼ばれし者≫を獲得
≪異世界からの呼ばれし者≫により
ハイスキル≪異世界言語≫を付与……失敗
称号≪作りし者≫を獲得
≪作りし者≫により
ユニークスキル≪昇華≫を付与……付与に成功。


対象者のステータスを更新します。
……更新完了。転送します。


(???なんか色々分かんないんだけど取り敢えずなんかスキル消えてない?)


そんなことを考えているとまた意識が途絶えた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品