絶対必中の一撃必殺!~パーティー追い出されましたが、居合いを極め最強になりました~

ノベルバユーザー343700

一撃目 「追放は辛いよ」

昼間の冒険者ギルドでの出来事だった。


「ジーク。お前は追放だ。」 


パーティーリーダーである勇者、ロイドから告げられる非情な宣告。
その勇者の顔は悲しそうでもなく、どちらかというと『やっと厄介者がいなくなる』とでも言いたげな表情だった。


「わかったよ…」


僕は「なんで」、「どうして」と訊くことができない。
実際、自分がパーティーの足を引っ張っていることは紛れもない事実であり、自分でもそんな風に感じることが多々あった。


「では、即刻立ち去れ。お前の顔を見るだけで不愉快だ。」


パーティに所属している戦士はその事を聞いても無表情。残りの二人の仲間たちもクスクス笑いながらこちらをみる。


あぁ、僕ってこんなにみんなから必要とされてなかったんだな。


このままパーティーに残っても、きっと、攻撃力のステータスが最低のEな僕は魔物に食われるか、パーティーから捨てられるかのどちらかしか道はないのだろう。


「うん。わかったよ、じゃあねロイド、それにみんな。」


かなり暗い表情でそう伝える。


すると、


「おい、ちょっと待て。」


ロイドに引き留められる。


まだ何かあるのだろうか。
追放というだけでも僕の心はズタズタだというのに。


「お前の持っている弓とマジックアイテム全部ここに置いていけ。」


僕は命中率ステータスが高いから弓を使っていた。


そしてロイドはその僕が使っていた弓を置いていけといった。


「そんなん無理に決まってるだろ!僕の武器はこれしかないんだぞ!」


これは打算や保身ではなく、偽らざる本心だ。
冒険者として必須である武器を奪われたら、それこそ主武装であるこの弓を奪われたら、明日からの冒険者生活が危うくなること間違いなしだ。


「は?そんなの知らねぇよ。その弓はこのパーティーの金で買ったもの。パーティーから追放された今、お前のものじゃなくてパーティーである俺たちのものだ。反論はあるか?」


「うっ…」


反論なんかできるはずがない。
ロイドのいっていることは間違ってなんかいないからだ。
この弓を買うのに使ったのは紛れもないパーティーの軍資金であるからだ。
そして僕の着けているマジックアイテムも例外ではない。


「わ、わかったよ…」


いやいや僕は弓と自分の着けていたマジックアイテムをテーブルの上にすべて置く。


「これで全部でしょ」


僕はパーティーに入ってから買ったすべてのアイテムをテーブルの上に置き、そう言う。


「まだあるじゃねぇか」


ロイドがそう言う。
おかしいな全部出したはずなんだが。


「なにとぼけてるんだ?それだよそれ。」


ロイドが僕が指につけた指輪を指差し言う。


「え?いやでもこれは、僕のお母さんの唯一の形見で」


「は?それがどうしたんだ?それは今までの迷惑料としていただく。さぁ早くこっちに出せ。」


僕の言葉を遮りロイドが言う。
でもこれは死んだお母さんの唯一の形見。
渡すわけにはいかない。


「無理だ!これだけは渡すわけにはいかない!」


「うるせぇ!この俺サマに口答えするんじゃねぇ!」


指輪を奪おうと襲いかかってくるロイド。
そして僕は指輪を守ろうと立ち向かおうとするが相手が悪かった。
相手は腐っても勇者。
力勝負で勝てるはずがない。


そしてついには指輪を捕られてしまう。


「へへへ、じゃあなジーク。」


テーブルにあったものを勇者の固有スキルであるアイテムボックスにすべていれて去ろうとするロイド。


「返せよ!それは僕の大事なお母さんの形見なんだっ!」


プライドを捨ててでも指輪を取り返すために勇者の足にしがみつく。


「チッ、足にしがみつきやがって!きしょいんだよ!このゴミ虫がっ!!」


ロイドは僕が掴んでいないもう片方の足で思い切り僕の腹を蹴る。


「グァッ」 


情けない声が出てしまう。
僕は掴んでいたロイドの片足から手を離してしまい、そしてそのまま部屋の壁に叩きつけられ、内臓を傷つけたからか壁に寄りかかったような状態で吐血してしまう。


壁に叩きつけられ、かなり大きな音が鳴ったからか他の冒険者からも注目を浴びてしまう。


ザワザワし出す冒険者ギルド内。


「おいおいあれ大丈夫かよ」


「てかあれ勇者じゃね?」


そんな話が聞こえるなか、ここでパーティーメンバーの一人である僧侶のリナがようやく口を開く。


その口から出た言葉は


「ふん。愚図にはちょうどいい最後ね。」


と自慢である長い金色の髪を後ろに払い上品な姿勢でそう言い放つ。


「はい。その通りです。」


リナの言葉に便乗してパーティーメンバーの一人、魔法使いのシエルが勇者と腕を絡ませながら言う。


そう、この僧侶と魔法使いは勇者と恋仲なのである。
この世界では勇者や貴族などの偉い人は妻を何人でも持てるからな。


「とにかく!お前みたいな無能は追放だ!わかったな!」


そう言い勇者は僧侶を空いていた片腕に絡ませ両腕に花を持ったまま去っていった。


けれど戦士のバッカスはそれについていかない。
どうしたのだろうか。


まあ、自分にはそれを考える余裕すらないのだけれど。


「用事を済ませてから行くから先行っててくれ。」


「わかった。先にいってるからな!」


わかった、と一言バッカスが返事をして僕の方にバッカスが近づいくる。


「すまない。今のこの状況には同情するが、今の俺にはどうすることもできん。」


そう言いポケットに手を突っ込みポケットから出した袋を渡してくる。


「これは餞別だ。受け取ってくれ。金貨が10枚入っている。これで1ヶ月はいつも通り生活できるだろう。では。俺はもう行く。怪しまれると困るからな。」


そう言い残し先にいった勇者パーティーの方に向かって歩き出す。


きっとバッカスにも何か事情なあるのだろう。


そして僕はというとその袋を手にしてそのまま気絶してしまった。

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