意志ある者達は戦う
意志ある者達の闘い
少女の体には無数の傷があり、所々から血が出ていた
さらに、腹部から下には無数の打ち身があり、赤黒くなっている
小窓の下で横向きに倒れたまま、動かない
頬に涙がつたっていた
「…………なぁ、月時。こいつ、あの絵の子じゃないか?」
「そうみたいね。……………何か下から物凄い足音がするわ、一途君、窓から下を覗いて見て」
一途は美玲にそう言われると、小窓の方へと向かう。そして、そこから首を出し、下を見て、思わず目をカッと開いた。百何十人もの剣か杖を携えた人達がこの小さな離れを囲んでいたのだ
「きゃっ!?………」
下の様子を伝えようと、一途が窓から首を引っ込めた時、美玲の悲鳴がする
「おい、どうした!?」
一途は振り向き、美玲のいた方へと目をやると軽鎧を纏った人達が美玲を押し退き、後ろにやる所を目にした
この人達の中心にはジョンがいて、全員剣を握りしめている
「一体、どうしたんですか?」
一途は異様な雰囲気のジョン達が部屋へと押し入って来て、戦き後ずさりしながらも体に力を入れ、はっきりとした口調で尋ねた
ジョンは質問にすぐには答えず、一途の足下にいる存在に目を向けた。それが傷だらけで力無く横たわっているのを目にすると、握っていた剣を鞘に納め、話し始める
「あぁ…………、すまないがその少女を保護したいんだ。身構えるのをやめて、どいてくれないか?」
先程までの異様な雰囲気が無くなり、ジョンは穏やかな口調で一途を諭す
諭された一途は違和感を覚えつつも窓辺から離れようとする
しかしその時、一途は自分の足に弱々しく触れ、掴もうとする存在に気付く
「……たす……け……て…………」
足下で横たわっていた少女が一途の足を掴み、か細い声をあげた
一途は声から少女が月であること、また、その行動、言葉から自分にここから立ち退いて欲しく無いことを悟った
そして、ここにいるジョン達、下にいる者達、百何十人から月を守らなくてはならないと悟った
「いや-……、どうやら……どくことは出来ないみたいです」
「…………では君が少し邪魔だが無視して、その少女を連れていかせて貰おう」
「すみません、それも出来ません」
「君、その子は早く手当てをしないと死んでしまうだろ?」
「本当に手当てをするんですか?」
「……あぁ、もちろん」
「…………本当のことを言ってませんよね?」
「いや、そんなことは無い」
「ジョンさん、嘘ついてますね。普段と喋り方が違います」
「!?…………、もういい。お前の了承は必要としていない!この少女は連れていく!!」
そう言うと、ジョン達は一途へと近づき、彼を押しのいて少女に近づこうとする
一途は必死にそれを止めようととっつく
しかし、未だ子供である一途は軽々と押しとばされ、床を転げた
ジョンは少女の脚に手をやると、傷口に気もかけず、まるで物を扱うように掴んだ
他の者達も四肢の何処かを掴もうと少女へと手を伸ばす
しかし、その時……
ドン!!
強く叩きつけるような音が響く
少女を囲む者達の一人、一番小柄な者が押し飛ばされたのだ
強い衝撃のせいで、押し飛ばされた者はピクリとも動かない。気絶したようだ
そして、少女を持って行こうとしたジョン達の前に、鏡面のように輝く銀色の刀身が姿を現す
押し飛ばされた者の鞘にあるはずの剣が無い
ジョンの前には眼前に剣を突きつける、一途がいた
「何が何でも、約束は守り通す。俺はそう決めている。…………もっといえば、卑怯者に譲歩することは絶対に無い。一切の迷い無く対立する者に隠しごとをし、その意志から目を背けることは卑怯だと思わないのか!?」
一途は強く問うた。これを受けて、ジョンは目を細め、一歩後ろに距離をとる。そして、剣の柄に手を添え、話し始めた
「……では、言おう。こいつは人に害を成すモノ。人の命を餌にしている。知っているか?こいつが人の口から魂を吸い取ることを」
これを聞き、一途は、ほんの一瞬だけ剣先を揺らがせた
「剣を下ろせ。俺にはこの偽りの存在を消す使命と意志がある。…………これを聞いて、なお、刃向かうのであれば、子供といえども斬る!!」
「…………そういうことだったのか……。理由は分かった。でも、約束は守る。そう決めた。約束を破り、求められた助けを無下にすることは出来ない。この小さな命を奪わせたりはしない!!」
「……そうか、なら斬るしかない。闘うしかない。…………決闘だ。俺と1対1での死闘だ」
ジョンは一途以外の者達に部屋から出るよう促し、鞘から剣を抜いた
剣はよく手入れされており、外から入る光で輝く
『神よ……、偽りの神を伐つため、どうかこの者を斬ることをお許し下さい』
とジョンは呟き、
「……こいつはすでに何人もの命を奪って、生きている。それを知ってなお、庇うということはお前もそれに加担しているのと同義!死をもって償え!!」
と言いうと、一途に斬り掛かる
キンッ!!
一途がジョンの刃を刃で受け止める
金属と金属がぶつかり、甲高い音がする
その音は頭の奥まで響くくらい大きい
そう、ジョンは本気で一途を殺そうというのだ
一途は刃と刃の競り合いに負けそうになり、とっさに間合いから出る
ジョンは間合いから出た一途を逃すつもりは全く無く、再び斬り掛かる
ジョンが一途に斬り掛かり、一途がそれを受け止め、逃げる。この流れが数回繰り返され、どんどん一途は追い詰められていく中、ついに一途は剣を弾かれ、転かされる
「もう終わりだな。反射神経は良かったが、非力で剣の腕もなかった。これからが楽しみであったが仕方が無い。これでさらばだ!!」
ジョンの剣が一途の脳天へと向かって振り下ろされる
部屋の外からは響めきと、美玲の悲鳴が上がる
一途はここで死ぬはずだっただろう
しかし、今まさに脳天をかち割ろうと剣が頭上の真上に来た時、
一途の頭の中に声が響いた
──ねぇ、もう終わり?
貴方の闘いはこれで終わり?
折角、命を賭して闘ったのに
結局、守りたかった者を守れず
貴方の命だけが無下に失われる
ねぇ、これでよかったの?
もしよかったら…………
貴方の中の“とっておき”を教えてあげる
カンッ!!!
剣は弾かれた
何かにあたるでも無く、一途の頭上すれすれで異様な程大きな反動で弾かれた
さらに、この一部始終、一途は全く身動きしていない
この予想外の事態にジョンは剣を持ったまま放心状態となる
その隙に一途が剣の刃を掴んだ
それに気づいたジョンだが剣を動かそうとしてもビクともしない
そして、一途は剣を掴んだまま、彼を蹴っ飛ばした
部屋の出口の方に向かって吹っ飛び、部屋の外で見ていた者達と衝突する
とても単なる子供がなせる技ではない
このことでジョンと、直で衝突した者達は衝撃ですぐには身動きがとれなくなり、それ以外の者達も状況を飲み込めず、混乱していた
一途はジョンを蹴っ飛ばすとすぐに、横たわっている少女へと近づき、その体を撫でた
少女の体から撫でられた所の傷や痣が消える
そして、少女の体から傷や痣が程々に消えると、一途は少女を抱え、小窓があった方の壁を突き破り、弾丸のような速さで飛んで行った
その様子を部屋の外にいた者達、離れを囲んでいた者達もただ呆然と、眺めることしか出来なかった
───────
「あ……、お城からだいぶ離れたよ」
一途の腕の中、少女が語りかける
「あれ、起きてたのか」
「うん……、一度下に降ろして」
少女がそういうと一途は空中で静止し、地に降りた
「ねぇ、貴方の名前を教えて?」
「……俺は一途だ」
「一途……ね。分かった。ねぇ、私と額を合わせて」
「どういうことだ?」
一途は怪訝な顔をした
「いいから、お願い。それから、私と両手を合わせて」
納得がいかず、警戒しながらも一途は少女に言われた通りにする
「これでいいのか?」
「うん。そして、祈って。……私のことを理解したい、知りたいって」
しばらく二人は手を握り、額をあわせた姿勢のままでいた。その後、少女はその姿勢をほどき、自分の母語で一途に話しかける
『ねぇ、何て言ってるか分かる?』
『ああ』
『私の名前は、月!よろしく!!』
少女『月』はそう言って、一途に微笑みかけた
さらに、腹部から下には無数の打ち身があり、赤黒くなっている
小窓の下で横向きに倒れたまま、動かない
頬に涙がつたっていた
「…………なぁ、月時。こいつ、あの絵の子じゃないか?」
「そうみたいね。……………何か下から物凄い足音がするわ、一途君、窓から下を覗いて見て」
一途は美玲にそう言われると、小窓の方へと向かう。そして、そこから首を出し、下を見て、思わず目をカッと開いた。百何十人もの剣か杖を携えた人達がこの小さな離れを囲んでいたのだ
「きゃっ!?………」
下の様子を伝えようと、一途が窓から首を引っ込めた時、美玲の悲鳴がする
「おい、どうした!?」
一途は振り向き、美玲のいた方へと目をやると軽鎧を纏った人達が美玲を押し退き、後ろにやる所を目にした
この人達の中心にはジョンがいて、全員剣を握りしめている
「一体、どうしたんですか?」
一途は異様な雰囲気のジョン達が部屋へと押し入って来て、戦き後ずさりしながらも体に力を入れ、はっきりとした口調で尋ねた
ジョンは質問にすぐには答えず、一途の足下にいる存在に目を向けた。それが傷だらけで力無く横たわっているのを目にすると、握っていた剣を鞘に納め、話し始める
「あぁ…………、すまないがその少女を保護したいんだ。身構えるのをやめて、どいてくれないか?」
先程までの異様な雰囲気が無くなり、ジョンは穏やかな口調で一途を諭す
諭された一途は違和感を覚えつつも窓辺から離れようとする
しかしその時、一途は自分の足に弱々しく触れ、掴もうとする存在に気付く
「……たす……け……て…………」
足下で横たわっていた少女が一途の足を掴み、か細い声をあげた
一途は声から少女が月であること、また、その行動、言葉から自分にここから立ち退いて欲しく無いことを悟った
そして、ここにいるジョン達、下にいる者達、百何十人から月を守らなくてはならないと悟った
「いや-……、どうやら……どくことは出来ないみたいです」
「…………では君が少し邪魔だが無視して、その少女を連れていかせて貰おう」
「すみません、それも出来ません」
「君、その子は早く手当てをしないと死んでしまうだろ?」
「本当に手当てをするんですか?」
「……あぁ、もちろん」
「…………本当のことを言ってませんよね?」
「いや、そんなことは無い」
「ジョンさん、嘘ついてますね。普段と喋り方が違います」
「!?…………、もういい。お前の了承は必要としていない!この少女は連れていく!!」
そう言うと、ジョン達は一途へと近づき、彼を押しのいて少女に近づこうとする
一途は必死にそれを止めようととっつく
しかし、未だ子供である一途は軽々と押しとばされ、床を転げた
ジョンは少女の脚に手をやると、傷口に気もかけず、まるで物を扱うように掴んだ
他の者達も四肢の何処かを掴もうと少女へと手を伸ばす
しかし、その時……
ドン!!
強く叩きつけるような音が響く
少女を囲む者達の一人、一番小柄な者が押し飛ばされたのだ
強い衝撃のせいで、押し飛ばされた者はピクリとも動かない。気絶したようだ
そして、少女を持って行こうとしたジョン達の前に、鏡面のように輝く銀色の刀身が姿を現す
押し飛ばされた者の鞘にあるはずの剣が無い
ジョンの前には眼前に剣を突きつける、一途がいた
「何が何でも、約束は守り通す。俺はそう決めている。…………もっといえば、卑怯者に譲歩することは絶対に無い。一切の迷い無く対立する者に隠しごとをし、その意志から目を背けることは卑怯だと思わないのか!?」
一途は強く問うた。これを受けて、ジョンは目を細め、一歩後ろに距離をとる。そして、剣の柄に手を添え、話し始めた
「……では、言おう。こいつは人に害を成すモノ。人の命を餌にしている。知っているか?こいつが人の口から魂を吸い取ることを」
これを聞き、一途は、ほんの一瞬だけ剣先を揺らがせた
「剣を下ろせ。俺にはこの偽りの存在を消す使命と意志がある。…………これを聞いて、なお、刃向かうのであれば、子供といえども斬る!!」
「…………そういうことだったのか……。理由は分かった。でも、約束は守る。そう決めた。約束を破り、求められた助けを無下にすることは出来ない。この小さな命を奪わせたりはしない!!」
「……そうか、なら斬るしかない。闘うしかない。…………決闘だ。俺と1対1での死闘だ」
ジョンは一途以外の者達に部屋から出るよう促し、鞘から剣を抜いた
剣はよく手入れされており、外から入る光で輝く
『神よ……、偽りの神を伐つため、どうかこの者を斬ることをお許し下さい』
とジョンは呟き、
「……こいつはすでに何人もの命を奪って、生きている。それを知ってなお、庇うということはお前もそれに加担しているのと同義!死をもって償え!!」
と言いうと、一途に斬り掛かる
キンッ!!
一途がジョンの刃を刃で受け止める
金属と金属がぶつかり、甲高い音がする
その音は頭の奥まで響くくらい大きい
そう、ジョンは本気で一途を殺そうというのだ
一途は刃と刃の競り合いに負けそうになり、とっさに間合いから出る
ジョンは間合いから出た一途を逃すつもりは全く無く、再び斬り掛かる
ジョンが一途に斬り掛かり、一途がそれを受け止め、逃げる。この流れが数回繰り返され、どんどん一途は追い詰められていく中、ついに一途は剣を弾かれ、転かされる
「もう終わりだな。反射神経は良かったが、非力で剣の腕もなかった。これからが楽しみであったが仕方が無い。これでさらばだ!!」
ジョンの剣が一途の脳天へと向かって振り下ろされる
部屋の外からは響めきと、美玲の悲鳴が上がる
一途はここで死ぬはずだっただろう
しかし、今まさに脳天をかち割ろうと剣が頭上の真上に来た時、
一途の頭の中に声が響いた
──ねぇ、もう終わり?
貴方の闘いはこれで終わり?
折角、命を賭して闘ったのに
結局、守りたかった者を守れず
貴方の命だけが無下に失われる
ねぇ、これでよかったの?
もしよかったら…………
貴方の中の“とっておき”を教えてあげる
カンッ!!!
剣は弾かれた
何かにあたるでも無く、一途の頭上すれすれで異様な程大きな反動で弾かれた
さらに、この一部始終、一途は全く身動きしていない
この予想外の事態にジョンは剣を持ったまま放心状態となる
その隙に一途が剣の刃を掴んだ
それに気づいたジョンだが剣を動かそうとしてもビクともしない
そして、一途は剣を掴んだまま、彼を蹴っ飛ばした
部屋の出口の方に向かって吹っ飛び、部屋の外で見ていた者達と衝突する
とても単なる子供がなせる技ではない
このことでジョンと、直で衝突した者達は衝撃ですぐには身動きがとれなくなり、それ以外の者達も状況を飲み込めず、混乱していた
一途はジョンを蹴っ飛ばすとすぐに、横たわっている少女へと近づき、その体を撫でた
少女の体から撫でられた所の傷や痣が消える
そして、少女の体から傷や痣が程々に消えると、一途は少女を抱え、小窓があった方の壁を突き破り、弾丸のような速さで飛んで行った
その様子を部屋の外にいた者達、離れを囲んでいた者達もただ呆然と、眺めることしか出来なかった
───────
「あ……、お城からだいぶ離れたよ」
一途の腕の中、少女が語りかける
「あれ、起きてたのか」
「うん……、一度下に降ろして」
少女がそういうと一途は空中で静止し、地に降りた
「ねぇ、貴方の名前を教えて?」
「……俺は一途だ」
「一途……ね。分かった。ねぇ、私と額を合わせて」
「どういうことだ?」
一途は怪訝な顔をした
「いいから、お願い。それから、私と両手を合わせて」
納得がいかず、警戒しながらも一途は少女に言われた通りにする
「これでいいのか?」
「うん。そして、祈って。……私のことを理解したい、知りたいって」
しばらく二人は手を握り、額をあわせた姿勢のままでいた。その後、少女はその姿勢をほどき、自分の母語で一途に話しかける
『ねぇ、何て言ってるか分かる?』
『ああ』
『私の名前は、月!よろしく!!』
少女『月』はそう言って、一途に微笑みかけた
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