意志ある者達は戦う

形の無い悪魔

絵の少女

東の空の朝陽が地平線から顔を出す
大地の草花の朝露が輝く
鳥の鳴き声の響きが透き通る

「おはよ~。………」

一途の挨拶にからの返事は無かった
同じ部屋で寝たはずのの姿はベッドの上には無い。一途は昨日と同じように・・・・・・・・部屋をグルッと見て、ベッドの下を探したがやはり姿は見当たら無い

「はぁー、なんで“匿って”って言っていたのにどっかにいくんだ?昨日の朝も起きた頃にはいなかった。……………一体どこに?あいつは何者なんだ?」

──────

相変わらずの粗食な朝食後、20人の異邦人達がジョンに率いられ、昨日と同じ草原へと向かって走っている

「あのおっさん…………昨日、たらふく食った後に走らせに来やがった。マジでありえねぇ」

「戸部、君は終わったことをつべこべ言うヘッタクレな奴でもあるようだな」

「おい!柳!!………………、いや、あいつのせいで途中ずっと吐きそうだったんだぜ」

「そうか……で?もう終わったことだろ?ヘッタクレ野郎」


「……けっ……お前なんて吐いてた癖に……。
吐いた後、泣きじゃくってたじゃねぇか。背中擦ったり、押したりしてやったのに……、あんときゃ可愛げ・・・があったのによ!今はこれかよ!!」

戸部が絶叫するかのように立華を怒鳴りつける。が、しかしなぜか立華は嬉しそうにしだした

「そっ、そっか可愛いかったか……」

「?おい、柳?どうした?話し通じてねぇのか?」

戸部にそう言われ、話の流れがやっと理解出来たのか……

「うぅ、……期待させんな!!このヘタレ、ヘッタクレ野郎!!」

と言うと、

  ドスッ!!

立華は戸部のお腹を思いっ切り殴って、全速力で先へと走って行った

「うぇ、いってぇー……………柳の奴、頭おかしいんじゃないか?」

──────

昨日と同じ内容のトレーニングの後、ジョンは神妙な面持ちで場の全員に聞こえる声で話し始めた

「君達の中で、女の子を知らないか?この絵の子だ」

そう言うと丸めて腰に吊してあった切り取られた・・・・・・絵を取り出した。そこには銀髪の美少女が描かれていた。絵の少女は幸せそうに微笑んでいる

ジョンは絵を高く掲げ、二十人全員にじっくり見させる。

「あの、その少女がどうしたんですか?」

この質問の後、第一声をあげたのは一途であった

「あぁ、この少女はな……………………保護が必要なんだ」

「えっと、どうして保護が?何かこの少女の身に良くないことが迫っているんですか!?」

「いや、そういう訳では…………いや、そういうことだ。確かに、この少女の身に危険が迫っている!」

ジョンが言い切ると暫く沈黙が続いた
コホンっと咳き払いをし、

「どうだ?見覚えはあるか?」

と、再度問いかけたが返事は無い。また、暫く沈黙が続く



「………そうか、一応聞いてみたんだが知らないか。……分かった、ありがとな!お前ら!!」

ジョンは雰囲気を良くするように締めくくると、二十人を連れて城の方に向かった

──────

城の門を越え、王宮本殿へと向かう中、テオドルの従者が一人、ジョンと二十人の異邦人達の元へ駆け寄って来た

「今、少しテオドル様は多忙の様子。勇者様方には申し訳ない無いのですが、一度、離れの方に戻って下さい」

「ついに現れたのか?」

ジョンは従者に問いかける

「はい、そのようです」

従者は話し終えるとジョンに変わって二十人を離れへと連れて行った

─────

「……うーん、やっぱりあの絵の少女は…………なのかな?」

一途は離れにつくと、二階の一番奥の部屋に行った。そして、立ち歩きながら考え込んで、ぶつぶつと独り言を言っていた

「……とは夜になってからしか会って無いから顔とかよく分かんないんだよなぁ……」


「ねぇ、一途君。って誰?」

「いや、俺にも分からない。あいつは一体何者何だろうか……………ってえぇ!?」

一途はいつの間にか部屋にいる美玲を見て驚いた

「あら、一途君、気づいてなかったの?」

「月時、お前は一体どこから入って来たんだ!?」

「え?ドアからよ」

「え!……あ、そっか鍵閉めて無かったわ……」


「……ねぇ、一途君、もう一度聞くけどって誰?」

「いや、それが分からないんだって。なんか、夜に“匿って”頼まれたんだよなぁ………。“匿って”ってなんかやらかしたのかって思うけど。あ、のことは他の奴らに絶対に言うなよ。約束は絶対に破りたくないんだよ!」

「あら、もう私が彼女の存在を知っちゃたから、約束守れて無いじゃない?」

「いや、まだ月時はを見てないからセーフ!」

「じゃあ、皆に言っても問題無いでしょ?」

「いや、出来る限り約束を破りかねないことはしたく無いんだよ」




暫く一途と月時が他愛も無いことも含め喋っていると、突然

 ガッシャーン!!!

と音がし、二人は驚いた

音のした方向にあった小窓のガラスは完全に砕け、無くなっていた

そして、その下にはあの絵の少女・・・・・・が横たわっていた

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