意志ある者達は戦う

形の無い悪魔

始まり

 ──ねぇ、もう終わり?
   貴方の闘いはこれで終わり?
   折角、命を賭して闘ったのに
   結局、守りたかった者を守れず
   貴方の命だけが無下に失われる

   ねぇ、これでよかったの?
   もしよかったら…………



 貴方の中の“とっておき”を教えてあげる






この物語はここから始まる

「ついに……、ついに成し遂げたぞ!!」

数メートルに渡る魔方陣が描かれた部屋の中、自己心酔甚だしい様子の魔道士が、杖を片手に歓喜の声を高々にあげる
その男の従者達は拍手をあげる

魔方陣から勇者の召喚に成功したようだ

「勇者様方、ご到着おめでとうございます!!」

パチパチパチパチ

召喚された異邦人達は事態を掴めず、パニック状態であった。この異邦人達、皆齢十四の子共であった

魔道士は進みでて、

「つきましてはこの国の王でおられるアルサンドラ陛下よりご祝辞と勇者様方に召喚の経緯と要望についてのご説明を賜る。陛下が来られるまで勇者様方はその場で待機していて下さい」

と言い、従者に指示を出す

『おい、陛下が来られる。皆、定位置に』

従者達は土着の言葉・・・・・で受けた指示通り、大きな扉から一直線の道が出来るように並び、一人魔道士だけが扉の近くによる
 
暫くして、扉の叩く音がしてから魔道士が魔力をこめると、両開きの扉が一人でに開いた

部屋の外の扉の前では、王を先頭に様々な役職の付き人が後ろに続いて並んでいた。王は扉が開くと、魔道士の従者達でつくられた人垣の道をゆっくりと威厳ありげに歩く。その後ろに王と寸分狂いなく、列を乱さないように付き人達が続く

王は異邦人達の前に立つと大きく息を吸って、部屋全体に行き渡るくらいの大きな声で話し始めた

「勇者方、よくぞ参られた。まずは勝手に召喚したことを深く詫びよう。我々は今、魔族との抗争の只中にある。幸い、現在のところ小競り合いのみで奴らから大々的な攻撃はまだない。しかし、いつかは奴らは大軍を率いてここに攻め入るかもしれない。そこで、貴方達に協力を願いたい。どういう訳か異世界から来た貴方達には不思議な力があるようだ。その力を用いて奴らをどうか打ち負かしてくれ。」

それを聞き、異邦人達はさらに盛大にざわついた。意味不明な叫び声を上げてはしゃぐ者、混乱して泣く者、なんかのドッキリだと思ってるのか近くの友達にカメラを探させる者。
そして、興奮する者達を何人かの異邦人達が落ち着かせ、その中から一人の青年が王の前にでて、進言する

「勝手に話させて貰うけど、俺達は何でもないただの中学生。何の力も無いよ。俺達に期待してんなら多分、なんかの間違いだ」

青年、名前を山本秀一といい、容姿はその年と似ず大人びた様子だが、少し垢抜けたように見えるだけで威厳はない。単なる好青年といったところだろう。

この発言に王は少し気分を害したようだが、眉を少し曲げるだけにとどめ、続けてこう言った

「大丈夫だ。何も間違いは無い。貴方達にはちゃんと力がある」

そう言って王が手を叩くと、さっきの魔道士が後方から出て王の横につく

「これから、この者が貴方達の素養を推し量る。」

「勇者様方、私はテオドルと申します。これから貴方達の魔術適正について測らせて頂きます。」

そうして、異邦人達はテオドルとその従者達に連れられ、この部屋から出て行った。


────

ゆっくりとだが、堂々とした足取りで部屋の奥に進む

振り返り、配下達を力強い面持ちで一瞥する

そして、一呼吸おき、力強く語りだす


『皆、今日この儀礼に参加してくれたことに感謝する。これからだ。これから今日を出発点に偽りの神の暴虐から世界を救い、理想の世界を築こうではないか!』


『『『『陛下の仰せのままに!!』』』』

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