異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第103話──

「ここから先は調べられなかった所だ。何があるか分かんねぇから……気を付けろよ。」

 ネロは小声で俺達に言葉をかける。
 ネロの言葉に俺とラルフは頷き、周りを注意深く観察する。

 石で出来た床と壁に最低限の灯り。
 薄暗いこの空間は無機質な印象を感じ、人が余裕ですれ違える広さの道には ぽつりぽつり と木で出来た扉が異質に感じた。

 扉の一つ一つを中に人がいないか確認してから入っていく。

 部屋の中は、書斎の様に魔術に関する本が所狭しと並んでいる部屋や、ベッドや椅子にベルトが取り付けられている部屋。
 前世で理科の実験で使いそうな器具が並んでいる部屋。

 どこを見ても“実験をしている”様にしか思えなかった。

俺の考えすぎかもしれないけど……。

 器具が並んでいた部屋には“核”を液状化させている実験もしてそうだった。

“核”がある状態で“もどき”になるのに、液状化させたらどうなるんだ……?
そもそも魔術を液状化なんてしたら陣が乱れるんじゃないのか??
……いや、体内に陣を描く……ってイメージだと不可能では無いか。
そうなると、二度と取り出せなくなるかもしれねぇな。
……考えたくもねぇ。

 俺が思考を巡らせていると、ネロが一つの扉の近くで俺達を止める。

「この中には……二人いるな。……どうする?」

 ネロは俺とラルフに問い掛けてきた。
 ラルフは何事も無い様にいつもの調子でネロの問いに答える。

「お話聞けたらいーねっ!」

少しは躊躇ためらおうよ。
そんな楽しい空気じゃないぞ。
確かに話が聞けたら色々と分かるかもしんないけどさ。

 ネロはラルフの言葉に「分かった。」と短く答えると、目の前の扉を開いた。

 中は大きい机があり、その上には たくさんの本や紙が置かれ、部屋の壁の棚には宝石……おそらく“核”と思われるモノが置かれていた。

 扉が開いた事に気付いた二人の人間。
 二人共、今俺達が着ているローブを身に纏い、一人は本を開き 一人は紙に何かを書き込んでいる最中だった。

 二人の人間が俺達と目が合うと一人が口を開いた。

「誰だ?」

 その問いにネロは迷う事なく答える。

「新しく入ったんだ。ここに来れば色々と説明して貰えるって聞いてたんだけど?何も聞いて無いのか?」

「俺は何も聞いて無いな。お前はどうだ?」

「俺も聞いて無いぞ。」

 二人の人間は互いに顔を見合せて どういう事だろう と頭を悩ませていた。

逆に知ってる方が この場合怖いけどな。

 俺がネロのやり取りを眺めているとラルフが こそっ と耳打ちしてきた。

「ネロって嘘が下手だねー!」

「そうだな。」

 言葉のイントネーションが普段と少し違う。

 初対面の人なら俺は分からないが、ネロは普段 一緒にいる事が多いから気付く事が出来た。

あー、だからネロが本気で言ってるのか冗談で言ってるのか判断出来てた訳か。

 俺は溢れそうになる笑いを殺していると、人間がネロの方に言葉を投げ掛けていた。

「何の魔術が得意だ?」

「何でも出来るぞ、コイツが。」

……俺かよ!
丸投げしたなっ!
あー……
こんな事があっても良い様に俺を連れてきた訳か。
普段ならネロだけで行くもんな。
何で俺を連れてきたのか謎だったんだけど、今分かったわ。
ほんと、ネロには敵わねぇな。

 俺はネロに色々と言いたかったが、この場で言える筈もなく……俺はネロの隣に立った。

 人間の一人が俺を見ると笑いかけ、一枚の紙を見せてきた。

「ほぉ……それは心強いな。では、君ならこの魔法陣をどう修正する?」

 俺は人間から紙とペンを受け取り、まず魔法陣を観察する。

 “もどき”に入れてた干渉魔術や自爆系の魔術が描かれている。

前から思ってたけど、別の陣と無理矢理組み合わせているからか魔力の流れが別れている所があるんだよな。

 イメージするとしたら、一本の大きな川の流れが正常として無理矢理真ん中に異物を建設して川が二つに別れる……と言った感じか。
 後は、入れたいモノが多過ぎて制御する陣を省いている事が失敗の原因だな。

そんなもん初歩中の初歩だろ。
何でこんな事も分からずやってんだろ。

 俺は紙に描かれた陣を前に疑問符を浮かべていると、ネロが耳打ちしてきた。

「正解は教えるなよ。」

「……分かってるって。」

分かってるんだけど、どうしたもんかな。

下手に成功されても困るし、成功したと見せ掛けての失敗をさせるには……。

そうだな。
この自爆する陣を外して、干渉魔術を相殺する陣を組み込んだら行けそうだな。

 俺は紙に描きながら人間に説明する事にした。

「この陣なんだけど、一人の身体に入れるには陣の種類が多過ぎるんだ。だから、陣と陣が反応し合ってしまって失敗する。……ならこの陣とこの陣を消して、こういう……陣を組み込んだら暴走はしない、と思う。」

 紙に描かれているいらない陣に大きくバツをつけ、新しい陣を描いて説明をすると、二人の人間は感心した声を出した。

「なるほどな……。そういう手もあったか。」

「さっそく素材を手配しよう。」

 意気揚々と出ていこうとする人間をネロは止めた。

「俺達、ここの事あんまり知らないんだけど、案内してくれねぇか?」

「……ふむ、今日はもう遅いだろうし…………手配の件は明日聞けば良いか。」

「そうだな。……よし、新人。案内する。ついてこい。」

 人間は扉を開けて、俺達に言葉を放つ。
 俺達はそれを受け入れ、人間達と共に扉をくぐった。

 一人の人間が俺の隣に立ち、並んで歩いていると言葉をかけられる。

「君みたいな優秀な子が来てくれて嬉しいよ。」

「は、はぁ……?どうも。」

 俺は何と答えれば良いか分からず、曖昧な返事を返す事しか出来なかった。


















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