異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第97話──

 思っていたよりも帰りが遅くなり、いつもなら夕食を食べている時間を過ぎてしまっていた。

 俺が駆け足で門の所へ行くと、門の前にネロとラルフの姿があった。

 なにやら言い争いをしている様子を見て、俺は更にスピードを上げて二人の元へ向かう。

「二人とも、どうしたんだ?」

 俺がネロとラルフに声を掛けるとネロは俺の方を見ずに声を荒げる。

「どーしたも こーしたもねぇよ!ルディがまだ帰って……ってルディ!?今までどこで何してたんだっ!!」

「あ、ルディ!生きてたっ!おかえり~!」

いや、ラルフ。
勝手に俺を殺すな。

 ネロは言葉の途中で俺の姿を確認すると、凄い勢いで怒鳴られ、ラルフはネロの言葉で俺に気が付き、安堵した表情を見せる。

「ただいま。……え、と?昼に言ったと思うけど……森に行ってたぞ。」

「帰って来るのが遅ぇんだよっ!!」

「あはは!ネロってばルディが夕食の時間になっても帰って来ないから心配して探しに行こうとして」
ゴチンッ
「いたーいっ!ネロ!?痛いよっ!!」

「ラルフは黙ってろ!!」

「僕だって心配してたんだからね!?でも、もうすぐ帰ってくるかもしれないから、もう少し待とうよって言ってたのに!ネロが」
ゴチンッ
「いたーっ!二回も殴らなくても良いじゃん!!」

「うっせぇ!!」

つまり、二人とも俺の心配をしてくれてたのか。

ネロは、いつもの時間に帰って来ない俺をすぐに探しに行こうとして……。
ラルフは、もう少し待ったら帰って来るかもしれないから待とうとして……。

やっぱり、二人は優しいな。

そう思うと同時に申し訳なさが俺の胸を襲う。

「ネロ、ラルフ……心配掛けてごめん。」

 俺は素直に二人に謝った。
 二人は言い争いをしていたが、俺の言葉にネロは鼻で笑い、ラルフは満面の笑顔を向けてくれる。

 ネロは俺達に背中を向けると宿へと歩き出し、俺とラルフはその背中を追って宿へと向かった。









 宿へ着くと、いつもより少し遅めの夕食を食べてから部屋へと戻る。

 俺は帰って来るのが遅くなった理由……今日あった出来事を二人につまんで話した。

「あはは!楽しそうだねっ!僕も一緒に行けば良かった~っ!」

「ルディはユニコーンとパレードしに行ってたのか?」

「俺だって あんな事になるなんて思って無かったんだよ!」

 俺の話にラルフとネロは凄く笑っていた。
 俺が突っ込みを入れたが、それでも楽しそうに笑っている。

 先に落ち着きを取り戻したネロが口を開いた。

「ルディが“核”を取り出せるなら話が早い。」

「ん?何の?」

「ルディに確認して貰った方が早いしな。」
「そうだねっ!ルディに確認して貰った方が早いねっ!!」

「ちょっと待て。何の話だ??」

 俺を置いてネロとラルフは何やら納得していた。

 俺の質問に、ラルフとネロが交互に説明をしてくれる。

「あのね!僕達がお城の中で、ルディから貰ったメガネを掛けて見回ってたんだよ!そしたら殆どの人の首元に反応があったんだーっ!」

「それは、エヴァンやウィルも同様に、な。クリスには反応無かったが……アイツはエルフ族で警戒心や魔法にけてるからな……。やりたくても出来なかったんだろ。」

「は?エヴァンやウィルが操られてるかもしれないのか?」

 俺の問いに、二人は悩まし気な表情を見せる。

「いや……操られている、感じは無い。“もどき”みたいに自我を失ってもいないし、な……」

「それでね!“核”が埋められてるって仮定して~……僕が“もどき”にやったみたいに無理矢理 取っちゃったら廃人になっちゃうよねーって言ってたんだー!」

「俺とラルフが見てもどんな魔術が使われてるか分からんし……ルディが“核”を安全に取り外せるなら、ルディがした方が良いだろ?」

「そうそう!ルディが見た方が一番早いよね!!」

エヴァン達に“核”……?
何の為に……??

 ラルフとネロの言葉を考えるが……
 分かった事と言えば、エヴァン達に埋められてるしれない“核”を俺が取り出して見るって事だけだ。

 他の理由や目的がさっぱり見えない。

 ふ、と気になった事があるので、ネロに聞いてみる。

「俺が見るのは良いとして、どこで見るんだ?」

「城じゃマズイのか?」

「いや……もし、俺が失敗したら廃人になるかもしれないだろ?」

「ルディが失敗するのか?」

「だから、もしもの話だよ。それに、城の中にそれだけ“核”を埋められる人物に、俺の行動がバレる方がマズイと思うんだけど?」

城の中でやると、いつ、どこで、誰が見ているか分からない。

最悪の事態を想定し、細心の注意を払わなければいけないと思う。

 俺の言葉にネロは腕を組んで悩んでいると、ラルフが何か思いついた様子で手を ポンッ と鳴らす。

「なら、森でやるのはどうかなっ!」

「「森?」」

「そう!森!!あそこならルディが失敗したとしても、不慮の事故で済ませられるし!!それに、お城の人達は森に行く予定もしばらく無さそうだしねっ!!」

「ラルフ……あのな」
「よし、それで行こう。」

 俺はラルフに どうやって森に誘導するのか聞こうとすると、ネロにさえぎられてしまった。

ラルフ……
不慮の事故ってなんだよ。
ネロもネロで、それで良いのか!?

 ネロは俺の思いに気付かず、言葉を続ける。

「俺がエヴァン達を森に行く様にしておく。ルディは偶然を装って明日……いや、明後日の昼に森へ行ってくれ。」

「いや、それは良いけど……」

「後は理由だな……。何を使おうか……」
「ネロ!王女様はどうかなっ!!」

「……うん、それが一番使えそうだな。よし、ラルフ。明日エヴァン達に話に行くぞ。」

「は~いっ!!」

 何やら二人でどんどんと話が進み、俺は再び置いてきぼりを食らう。

誰か説明してくれよ!
俺が“核”を取り出すんだよな!?
俺、当事者だよな!?
俺を置いてくなーっ!!


















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