異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第89話──

騒がしい食堂で、飲み物が無くなったセシルは新しい飲み物を頼み、それを一口ひとくち飲んでから言葉にした。

「へぇ。それで、時間稼ぎに俺が出されたのか。」

神狼族に関わりそうな所は省きながらの説明だが、セシルとテトは楽しそうに耳を傾けていた。

俺は料理に手を伸ばして口を開く。

「急にネロがセシル出すもんだからさ、俺もビックリしたよ。」

「アイツらに殴りかからなかった分、ルディよりは落ち着いていたさ。」

「俺は殴ってない!ぶっ飛ばしただけだ!!」

「どっちも同じだろ。」

ネロは飲み物を片手に持ち、不敵な笑みを浮かべる。
すると、ラルフは食べ物を口に入れたまま言葉を放つ。

「ルディもネロも気が短いからねっ!!」

「「コイツよりマシだっ!!」」

俺とネロの言葉が重なり、互いに睨み合った後、どちらともなく食事に戻ると、今度はテトが口を開いた。

「その後から僕も知ってるよ。」

「なんだよ、知らなかったのは俺だけかよ。」

セシルは不貞腐ふてくされながらも、好奇心の目で俺を見る。

俺は飲み物で喉を潤してから言葉を紡いだ。

「それで、セシルが向こうの相手をして貰っている時に────」

──────────

俺はセシルの背中を見つめながらネロに言葉を投げ掛ける。

「セシルにもう少し優しい言葉を掛けられないのか?」

「そんなガラじゃねぇよ。」

「それもそうだな。ネロ、右手出せ。」

ネロの右手を取り、そこに魔法陣を描き込んで行く。
その様子を不思議そうに見ていたテトが俺達に聞いて来た。

「ネロもルディも何してるの?」

テトの質問に答えたのは、俺とネロでは無くラルフだった。

「おまじなーいっ!!」

「「…………。」」

ラルフの言葉に俺とネロは顔を見合せると、少し笑ってしまった。

「そうだな、おまじない だな。」

「そうそう、勝つ為のおまじない。」

ネロと俺の言葉にテトは首を傾げると口を開く。

「ネロも挑戦するの?」

「セシルが終わった後、な。それが どうした?」

「……うーん。それなら、セシルにもやって あげれば良かったのに。」

テトの言葉にネロは少し悩み、言葉にした。

「そうだな。じゃあ、セシルが帰って来たら おまじない をしてやってくれ。」

「勝負が終わった後にやっても意味無いんじゃ……?」

「俺が勝った後セシルと勝負して俺が負けたら、俺の実力は誰にも分からなくなるだろ?」

「「???」」

「まぁ、その おまじない を使うかどうかは相手次第だな。」

「あはは!セシルー!頑張れーっ!!」

テトの質問にネロが答えたが、俺もテトも頭に疑問符を浮かべてしまった。
そんな中、ラルフは元気にセシルを応援している。

魔法陣が描き終わったので、ネロの手を離して言葉にする。

「これで大丈夫な筈だ。ちゃんと使う時に魔力を込めろよ。」

「わぁってるって。これでルディの貧乏が解消出来るとかもな。」

「ルディは貧乏ーっ!!」

ネロは意地悪そうな笑顔で言い、ラルフは悪気無い様子でネロに続く。

貧乏 貧乏言うなよっ!!
確かに貧乏だよ!
ああ!貧乏さ!!
それが悪いかっ!!

俺は機嫌が悪くなっていると、俺の肩にテトが手を置いて慰められてしまった。

そんな哀れんで貰う程の事じゃないからっ!
借金してるんだね、可哀想。みたいな顔やめてくれないかな!?
借金してないからね!?

「ルディ達はあの賞金を貰うつもりなんだ?」

「そう。ネロが勝ったら賞金貰えるし。」

「俺はどうすれば多くの金が貰えるか 考えてるんだがな。」

テトの言葉に俺とネロがそれぞれ答えると、ラルフが何かを思い付いた様子で手を ポンッ と叩く。

「賭けをしたら良いんだよっ!賭け!!」

「「…………。」」

賭け、ねぇ。
賭けかぁ……。
確かに博打は儲かるかもしれないが……
何をどう賭けるんだ?

ラルフの言葉で俺とネロが悩んでいると、テトが口を開いた。

「ネロの勝負を賭けの対象にしたらどうかな?」

「え?でも、どう考えてもネロが勝つぞ??」

テトの言葉に俺が答えると、テトは苦笑しながら言葉を続ける。

「僕達はネロが強い事を知ってるからね。他の人達はネロの強さを知らないと思うよ?だから、ネロに賭けなかった人の賭け金は全部僕達のモノになる。」

「良いねぇ。それも やろう。」

ネロは口の端を持ち上げ、楽しそうに笑うとテトは首を傾げて質問をしてきた。

「ただ、誰がその胴元どうもとをするか、なんだけど。」

「「「…………。」」」

俺とネロ、ラルフはテトの方をじっと見る。

胴元どうもとって主催者だろ?
取り仕切ったりするんだろ?
ネロは勝負するし、俺はセシルに魔法陣を描かないといけないし、ラルフは……適当にしそうだし。
なら、後はテトしかいなくねぇか??

俺達の視線を受け、テトは一歩いっぽ後退あとずさる。

「え、まさか……僕?」

「他に誰がいるんだよ。」

「消去法でもテトだな。」

「テトがんばれーっ!!」

ネロ、俺、ラルフはそれぞれテトに言葉を掛けると、テトは何かを堪える様にした後、ため息を溢した。

「~っ!……はぁ。分かったよ。ちゃんと分け前貰うからね。」

「わぁってるって。……お、勝負がついたみたいだぞ。」

ネロがセシルの方を指で示し、俺達は示された方向を見る。

勝負が終わり、観客からは勝者を称える声、敗者の健闘を称える声、次の挑戦者を探す声等、様々な声が広がっていた。

「じゃ、行ってくる。」

ネロはそれだけ言うと、セシルの元へ歩みを進めた。
ネロとセシルは一言二言ひとことふたこと言葉を交わすと、セシルは俺達の元へ戻って来た。




























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