異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第88話──

賑やかで騒がしい いつもの食堂に俺とネロ、ラルフ、そしてセシルとテトの五人で料理を堪能していた。

腕相撲で儲けたお金をネロとテトで全員に分配する。

それぞれの飲み物を片手に皆で乾杯をし、セシルは酒を一気に飲み干すと ゴンッ とジョッキを机の上に置いた。

「で、ルディ達は何をしてたんだ?」

何を、て……
あぁ、腕相撲か。

俺とネロ、ラルフは顔を見合せると、ネロが先に話をし始めた。

「まず、最初はルディに言われた事から話した方が良いだろうな。」

ネロは口の端を持ち上げつつも楽しんでいる様子で話を続ける。

「俺達がセシルと合流して、ルディが前列に行った時にだったかな。」

ネロが俺に目配せし、続きを促されたので、俺がネロの言葉を引き継ぐ。

「俺がアイツらの腕相撲で気になった事があってネロに声をかけたんだ─────」

───────

「なぁ、ネロ。」

「なんだ?」

「アイツさ……」

俺は少し考えてから、周りに聞こえない様に言語を変え、ネロに伝わる程度の声量で言葉を続ける。

『アイツ、イカサマしてるぞ。』

『あぁ?イカサマ?』

俺はネロに自分の手のひらを見せて話を続ける。

『そう、手のひらに魔法陣を描いてそれによって腕力を上げてるんだよ。』

『魔術ってそんな事も出来るのかよ。』

『出来るよ。組み合わせによってマイナーなやつからメジャーなやつまで。ピンポイントのやつも出来るけど、実用性があんまり無いから やらないだけ。』

『へぇ。そんなもんなのか』

『そう、そんなもん。』

俺とネロは互いに前を向き、冒険者の様子を伺うと同時に向こうと目が合ってしまった。

冒険者は獲物を見付けたかの様にいやらしい笑顔を向けて来た。

「よぅ、〈呪い子〉にまた会うとはなぁ。」

その言葉を無視し、ネロが口を開く。

『なぁ、ルディ……。アイツがイカサマで使ってる魔術は相殺出来るか?』

『出来るけど、それがどうした?』

俺とネロは相手を見据えながら、気付かれない様に会話を続けていると、ネロから放たれる不穏な空気を感じとったのか、ラルフが会話に入ってきた。

『なになに?どーしたの??』

ラルフは空気を読んでくれた様で、言語を変え 声量を抑えていた。
ラルフの問いに答える様に、ネロが言葉にする。

『アイツらが持ってる金を貰おうと思ってな。』

は?
ネロさん?
何考えてんの?
強奪でもするつもり?
犯罪だよ、それ。
…………。
悪い顔になっちゃってるよ!?
あー………
もう何を言ってもダメだな、これは…………。

俺は視線だけでネロの様子を伺っていたが、その表情に自分の顔が ひきって来るのが分かった。
俺の表情を見たのか、冒険者の方が口を開いた。

「なんだぁ?さっきの見て怖くてチビッたか?ギャハハハハ」

いやいや、お前らになんかにビビってなんかねぇよ。
隣を見ろよ。
ネロの方を見ろよ。
すげー悪巧みしてる顔になってるぞ。
ネロの方が怖ぇよ。

冒険者の的外れな言葉に、俺は呆れてため息しか出なかった。

「なんだぁ?やるのかぁ?だがな、〈呪い子〉には そんな資格はねぇんだよ!ギャハハハハ」

その後も何か冒険者は的外れな言葉を続けていた。

俺とネロ、ラルフは冒険者の言葉に耳を傾けつつも会話を続ける。
ネロの言葉を聞き、少し考えていたラルフが声にする。

『お金を貰うってどーいう事?』

『そうだな……ルディみたいにエヴァンの厄介になるのは嫌だからなぁ。』

『うるせぇ。』

悪かったな。
考え無しで。
ちょっとイラッときちまったんだよ。
今でもアイツらにイラッときてるんだけど。

ネロは口に手を当て、少し悩んでから口にする。

『腕相撲で勝ちゃ良いんだよな、うん。相手の土俵で戦うんだ。向こうも文句は無ぇだろ。』

『腕相撲!!わー!楽しそう!!』

『腕相撲するとして、誰がやるんだ?向こうの土俵で戦うんなら、俺は参加する資格が無いらしいぞ。』

『だよなー……』

『僕がやる!僕!僕!!』

『『…………。』』

両手を握りしめてやる気のあるラルフの素振りは、見えない筈の尻尾が見える感じだった。

そんな様子を見て俺は、
『ネロがやるしか無いだろうな……。』
と、ポソリと呟く。

ネロは腕を組み、諦めた口調で言葉にした。

『だよなー……。ラルフがやったら機転が利かねぇかもしれねぇしな……。』

『えー!?二人ともヒドいよー!!』

『ラルフ…………あそこにある金を全部貰える様に挑発、誘導出来るか?』

『んー、どうだろ?分かんなーいっ!!』

『分からんかー……。』

いつもの調子のラルフに、ネロはため息を溢し、言葉を続けた。

『ラルフ、ここにある金が全部手に入れば、ルディが貧乏じゃなくなるんだ。』

『おー!!買いたいのが買える様になるんだね!!』

確かに貧乏だけどっ!!
金が足りないけどさ!!
言い方っ!!

俺が口を挟む間もなく、ネロは言葉を続ける。

『その通り。だから、出来る限り金を出す様に仕向けないといけないんだよ。……分かったか?』

ラルフは納得した様に首を何度も縦に振る。
そんな様子に俺は苦笑しながらネロに聞いた。

『で、どうやって勝つつもりなんだ?魔術が使われてるから、どれくらいの力量か分かりにくいぞ。』

『そこは、俺の手のひらにルディが相殺の魔法陣を仕込めば良いだけの話だろ。』

『あ、そっか。……でも、今俺達に注目してるから、仕込んだらバレるぞ。』

『それもそうだな……。誰かに時間稼ぎしてもらわねぇとな。』

『僕がやる!!』

『『ラルフは余計な事しそうだからダメ。』』

『えー!?』

俺とネロの突っ込みに、ラルフは頬を膨らませて抗議をしてくるが、ネロがそれを諭す。

『俺は自分達の強さをあまり大勢の奴らに知られたく無ぇんだよ。』

『……うん?』

『だから、俺達の強さをここにいる奴らに分からない様にして勝たなきゃいけない。』

『???』

『……もう良いや。ラルフは応援してくれるだけで良いんだよ。』

『……?うん!分かったー!!』

ネロ、説明放棄したな。
多分、だけど……ラルフは裏で色々としてるから表には出したくないんだと思う。
Aランクに勝てば嫌でも目立つからな。
ネロも裏で色々とやってるけど、俺が出れない以上 ネロが出るしか無いし……。
矢面に立つのは自分だけで良い、と。
素直にラルフが心配だからって言えないのがネロらしい所だな。

俺達の会話の間にも冒険者達の暴言が繰り広げられ、ネロの怒りの沸点を徐々に通り越していった。

冒険者の一人が睨んでいるネロに気が付き言葉を放つ。

「んだぁ??やんのか??〈呪い子〉のお友達のクソガキよぉ……」

「あぁ、やる。」

























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