異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第73話──

「じゃあ、コレは抜けないんだねー……?」

ラルフが悩ましそうに言葉にした。
だが、俺はそれを否定する。

「抜けるのは抜けるぞ。その“もどき”から微量な魔力を使って常時起動させてる状態だから……同時に抜けば問題無い。」

「そっか!それ位なら簡単に出来るよ!!」

そっかー。
簡単……なのか。
まあ、抜かないと ずっと爆発物を置いてる状態だからな……。
いつ、爆発するか分からない状態よりマシになる……だろう。

俺が遠目になっている中、ラルフは床に置かれたペンチを両手に二つ持ち“もどき”の前に立つ。

「え?今するの?」

俺はつい声に出してしまった。

本気?
今?
まじで?
俺の心の準備がまだなんだけどっ!!
ちょっと待って!!
…………。
………………。
……………………うへぇ。
想像しただけで痛いっ!!

俺は自分で顔がひきつるのが分かった。
そんな俺の様子を見てラルフは苦笑すると口を開く。

「そうだ!ルディ、ここに机と椅子が無いから持って来てくれる?」

ラルフに気を使わせてしまった……。
なんだか、自分を情けなく思いながら、ラルフに返事をし、別の牢獄に行く。

「ア"ガァァァァァア"ア"ァァァァァ!!」

「うぉ!?」

別の牢獄にある机と椅子に手を掛けた瞬間にその声が聞こえてきた。

うぅ……い、痛そう……。
声だけでも痛そうなの分かるよ……。
マジでやったんだな……。

そんな事を思いながらも、俺は机と椅子を運び込む。

「あ!ルディ!ありがとー!」

「う、うん。どーいたしまして。」

“もどき”はあのよく分からない道具……器具が外された口からボトボトと赤いモノを流している。

ラルフはシャーレの様な入れ物に入れた二本の歯を俺に渡してきた。

え。
どうしろと?

「僕は見ても分からないからねっ!後はよろしくー!」

はぁ!?
ここまでしといて!?
いや、ここまでしたんだから……か?
えー、と……
「……まじで?」

「え?うん!僕が写した魔法陣も、もしかしたら微妙に違うかもしれないしね!僕はルディみたいに詳しくないから!」

そーか、そーか。
分からんならしょうが…………──なくねぇよ!?
まじでか!?
俺が見るのか!?
…………見るしか無いんだろうなー……。

嫌な事でも、やれる事をやって行かないと前に進めない事は分かってはいても……。
俺にはかなり勇気がいる。

ラルフから抜きたてホカホカのを受け取り、持ってきた机の上に置いて、俺は椅子に座る。

ちょっと汚かったので、魔法で洗ってからを見た。

歯の中心には安物の宝石が差し込まれ、宝石を中心に魔法陣が描かれている。

魔道具の作り方と一緒だな。

魔術を常時発動させられる様にするためには、安物でも宝石が必要になる。

付与ふよつきの防具や武器もどこかに宝石が埋め込まれている様に、魔道具もどこかに宝石が埋め込まれ、魔術がほどこされている。

使いきりの罠なんかに使う時も魔道具と同じ様に魔法陣のどこかに宝石を入れ、罠に はまると、宝石に込めた魔力が流れ魔法が発動する。

宝石の役割は所謂いわゆる、充電式乾電池の様なものだ。
魔力がなければ魔術による魔法は発動しない。

一度きりの魔術であれば紙に書いて使用する事もあるが、それは自分が手の届く範囲で魔力が流せる状態にある事が必要だ。

……よし。
おさらいは これ位にして……
現実を見よう。

俺は歯の魔法陣とラルフが描いた魔法陣を見比べる。
若干の誤差はあるものの、大部分は合っていた。

ラルフが描いた魔法陣には描かれていなかった魔法陣の回路。
他の所からの指令を受信する様な内容が描かれている。

恐らく、この小さい中に描ききれなかった内容を別の所に置いているんだろう。

そう考えた俺は、いまだ“もどき”の様子探っているラルフの元へ行く。

「ラルフ、ちょっと いいか?」

「んー?なにー?」

「あー……“もどき”に確認したい事があってさ。」

「いいけどー……言葉、話さないよ?」

ラルフは俺の発言に首を傾げて言ってくる。

だけど、
「うん。言葉は話せなくても大丈夫。」

俺の言葉にラルフは頷くと場所をゆずってくれる。
俺は“もどき”の正面に立つと、俺の両手を“もどき”の両手に重ね、魔力を流す。

俺がノアにされた、アレだ。
俺のされたくないアレ。
幼少期にやられたヤツだ。

片方の手から魔力を流し、相手の身体を循環させ、もう片方の手に魔力を受ける。

「ア"ガッ……ァァァ……ゥゥゥゥ」

熱にうなされる“もどき”を見ながら、まだ大丈夫だと判断し、魔力の量を増やす。

自分の魔力を流した事によって、相手の身体の中にある異物を確認する事が出来た。

俺は確認したい事が終わり“もどき”から手を離すと、ラルフのドン引きした顔がそこにあった。

何か変な事でもしたか?

そう思い、ラルフに問う。

「ラルフ?どうかしたか?」

「…………ルディ。……すごく、その……えげつない事するねー……。」

は!?
どこが!?
なにが!?
さっきのラルフの方が よっぽど だろ!?

「それぇ……下手すると魔力が、暴走しちゃう……よねぇ?」

「ん?そうだな。」

俺もノアに暴走一歩手前までやられたしな。
あの時は死ぬかと思った……。

「うん……すごく……ねぇ……?僕でもそこまでは、出来ないよー……。」

「いやいや。俺はラルフの方が凄いと思うけどな……」

これが そんなに えげつないんならノアにやられた俺はどうなる!?
魔法の“ま”の字も分からない時にやられたんだけど!?
え、これ普通じゃないの!?

「魔力を渡す分には危険は無いんだけど……その……意図的に循環させる速度をあげたり、魔力の量を増やすなんて……なかなか……出来る事じゃ、ない、よ?」

そんなドン引きしないでくれないかな!?
俺からしたらラルフの方が えげつない事やってんだからな!!

俺とラルフはそれぞれ認識が違う事を認識したのだった。



















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