異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第65話──

本当にそれはダメだって!
王女様だよ!?
一国の姫なんだよ!?

俺は王女様に迫る黒いローブの人を蹴り飛ばし、王女様をかかえ、その場から飛び退いた。

ローブの人は呻き声を上げながらも壁に激突し、煙が舞う。
だが、ローブの人は意識がある様で、煙の中から奇声が聞こえてくる。

「わぁ!ルディカッコいいっ!!」

「……へぇ。」

ラルフは場違いな声を上げ、ネロはにやにやとしていた。

……これ、絶対に後でからかわれるな。

「お前らっ!見てないでさっさと行けよっ!!」

俺は手の平に感じる暖かく柔らかな感触に恥ずかしさを覚えながらも、それを悟られたく無いので強い口調で二人に叫んだ。

「あはは!ルディがお姫様抱っこしてるー!」

「ふっ……ルディが、な。」

ラルフもネロも笑いながら俺に言葉を放つ。

「もう!いいからっ!」

「わー!ルディが怒ったー!あはは!」

「はいはい。」

俺の怒鳴り声にラルフは笑い、ネロは笑いを堪えながらもローブの人の元へ向かって行った。

俺はため息を吐いてから、手の中にいる王女様の顔を覗く。

王女様は顔を林檎りんごの様に真っ赤に染め、目を見開いていた。

え、なに。
どういう感情?それ。
驚き過ぎた?
それとも何か怒ってる?

俺は何かしたのかと思案し、思い当たる事が一つだけあった。

「あー……急に触ってごめん?そんなに真っ赤になって怒んないでよ。」

そう声を掛けたが、王女様からの返答は無い。

え、そんなに怒ってんの?
あのまま彼処あそこたら怪我してたかもしれないんだよ?
最悪の場合死んでたかもしれないんだけど……。
助ける為に触っただけで、そこまで怒らなくても良いじゃん!!
やっぱりあれか!?
高貴な人は無闇に異性に触れたらいけませんってか!?
そういう設定でもあるのか!?
あるなら取説とりせつくれ!
……ゲームの時は読まずにプレイするタイプだけど、無いよりマシだ!!

すぐに降ろそうとしたが、店内で乱闘が繰り広げられ、色々なモノや人が飛んでくる。

俺はそれらを王女様を抱えながら避け、安全地帯を探す。

「……えっ、と……大丈夫か?」

抱き上げたまま結構動き、早く降ろしたいけど、なかなか降ろせない状況で、王女様の機嫌がさらに悪化していないか、と思い聞いてみる。

「い、いえっ!ぜ、全然っ!大丈夫ですわ!」

王女様は上擦った声を出しながら激しく頷いてきた。

いや、この状況で全然大丈夫って言うのも問題だと思うんだけど……。
まぁ、大丈夫なら良いか。

辺りを見回すと、ネロとラルフが有言実行していた。

さっき言ってた事、本当にやってるよ……。
ラルフ……それ絶対モザイクだな。
…………。
うん、あそこの場所が良さそうだな。

見付けた場所はホールとキッチンの間にある壁際。
丁度柱と柱の間に人が一人入れる位の凹みがあった。

俺がその場に向かっていると、ローブの人が俺の横を通りすぎた。
と言うか吹き飛ばされてきた。

続いてネロがローブの人を追い詰め、気絶をさせる。
ローブの人が意識を無くすと、大きな音と共に爆発した。

目の前で飛び散る赤。
生暖かいものが俺にまで届く。

真っ赤に染められたネロは「気絶させても駄目か……」と言い、その場から離れて行った。

俺が王女様を柱と柱の間に降ろすと、王女様の顔色は赤から青に変わっていた。

それもそうか。
目の前で人間が爆発してたもんな。
……なんか、慣れてきてる自分が怖い。
こういうのは慣れてないのが普通……なのか?
もう、普通ってなにか分かんない……。

俺は王女様のフードを引っ張り、深く被せる。

「……見たく無かったら見るな。目と耳を塞いで終わるまで待ってろ。」

俺は出来る限り柔らかい口調で伝えると、王女様はフードから不安そうな瞳を覗かせる。

だから!
見たくないなら見なきゃ良いじゃん!
真っ青な顔してまで見るもんじゃ無いと思うよ!?
別に見た所で何の得も無いんだからさ!
嫌な思いをする位なら そこに意識を持っていくなよ!

俺は言いたい事が色々あったが、早く加勢したいので無言で王女様の頭を無理矢理下に向けさせる。

「……絶対、そこから動くなよ?」

俺の言葉に王女様が小さく、こくりと頷いた。
それを確認し、王女様の周りに【結界】を張ってから、俺はあたりを見渡し現状の把握をする。

エヴァンの方は相変わらず危なっかしく、何とか応戦しているが、破られるのも時間の問題だろう。

クリスの方は力が拮抗きっこうしているものの、若干クリスの方が強く、放っておいても死にはしないだろう。

ネロは二人を相手にしているが……全然余裕だな。
むしろ、何か考えながら適当に相手をしている。

ラルフは……うん。
相手のあるべき部位が無いよね。

あるべき四本の部位が残り一本になっていた。
這いずる相手にラルフは容赦なく最後の一本を切り落とす。

相手は奇声か悲鳴か。
どちらとも言えない声をあげると、大きな音を立てて飛び散った。

その音にネロと相手をしていたローブの人が一人振り向き、俺の事を認識するとこっちに向かって走り出した。

ちょ!!
まだ呼んでないって!!
切り替え早すぎない!?

いきなり別の方向へ走り出した相手にネロは一瞬意識を向けるが、俺に向かっている事が分かると、アイコンタクトで「そいつは任せた」と言ってきた。

俺はネロに「了解」と返してから相手を見据みすえる。

相手は大口おおぐちで奇声を上げながら、すぐ側まで来ていた。

俺は一つ息を吐き、戦闘態勢に入る。
















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