異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第33話──

カインは魔力を他人に渡せる人達を呼びに行き、俺は魔力回復薬をライアの側に全て置いていく。

ライアをちらりと見ると、目を閉じて集中している様だった。

カインが居ればライアも、きっと大丈夫だろう。

俺はライアに背を向け歩き出す。

『おい、ルディ。』

ネロに呼び止められ、そちらを向くとネロとラルフが真剣な眼差しで俺を見ていた。

『……俺も行く。』

『僕もー!仲間外れは嫌だからねっ!!』

『……駄目。』

『何でだよ。』
『なんでー!?』

『危険だからだよっ!ちょっとでもミスれば、お前ら二人は〈闇落〉になるかもしれないんだぞ!?』

『それくらいの手加減は出来る。』

『だいじょーぶだよっ!』

『〈闇落〉になれば苦しむのはお前らだけじゃないんだよ!』

『んなヘマしねぇよ。』

『ルディと遊んできたからだいじょーぶだって!』

『でもな……』

俺が何を言っても二人は折れてくれなかった。

何の根拠があって大丈夫って言うんだか。
二人にもしもの事があれば……。

俺の心配を余所に二人は俺に手を差し出す。

『……なんだよ。』

『薬……いや、毒か。さっさと出せ。』

『毒ちょーだいっ!』

そんな二人の様子に俺は呆れるしかなかった。
だけど、心のどこかで独りじゃないと言う安心感があった。
あんなに……さっきまで気を張っていた筈が、今は少し緩んでいた。

『はぁ……二人が来るなら猛毒は使えないな。そんなに耐性は無いんだろ?』

『少しはあるけど、あんまり無いな。』

『ネロと同じー!』

『絶対に止めまではやるなよ?』

俺はネロとラルフに声を掛けながら、二人が持てるだけの麻痺や睡眠と言った相手の動きを制限する毒を渡す。
ラルフは自分のポケットに入れ、ネロも同じくポケットに入れ、一つの小瓶を見ながら口を開いた。

『これ使って、瀕死になるまで攻撃もありかと思ったんだけどさ……』

『なーにー?』
『どうした?』

『どうせルディが止めを刺すんなら、一ヵ所に集めた方が楽じゃないか?』

『あー……確かにそうだな。』

俺とネロが頭を悩ましていると、ラルフがポンと手を叩く。
その音に俺達がラルフの方を見ると純粋な笑顔を見せた。

緊張感ねぇな。

『ねぇねぇ!闘技場に集めるのはどうかなっ!!』

『確かに……あそこなら防護壁もあるし、動ける魔物でもすぐには逃げ出せないだろうな。』

『最後に俺の魔法で燃やせば止めを一気に刺せるって事か……。でも、そうなると俺達三人でどれくらい魔物が運べるか、だよな。』

『そっかー。闘技場から見て里の反対側の魔物に対処出来なくなっちゃうねー。』

うーんと三人で頭を悩ませていると、ジョセフが声を掛けてきた。

『その作戦なら俺達も混ぜてくれねぇか?』

ジョセフの方を見ると、里の中で戦える人達が俺達を見ていた。

いつの間に、そんな注目されていたのか。

『俺達だって、ただ見てる訳にはいかねえぞ!』
『若いもんだけにやらせるか!』
『俺らが出来る事ならなんだってやるぜ!』
『里を守る為にやれる事はやりたいんだ!』

次々に里の人達が言葉を発する。

危ないって止めても聞きそうに無いな……。
いつも、俺の話は聞いてくれないし。

この里の人達は自分が決めた事は決して曲げない。
自分の言葉に責任を持って行動する。
今までも、無茶振りや悪乗りがあったとしても、相手が本気で嫌がるか命の危険がある事はやらなかった。

今回は自分の命が掛かっている。
笑顔で軽口を叩いてはいるが、それぞれ覚悟を持ってここにいるんだろう。

俺とネロ、ラルフは顔を見合せると、不意に笑ってしまった。

『若者って……俺は若者の歳じゃないと思うんだけどな。』

『何を言う。ネロはこの里の中で、下から三番目に若いだろ。ネロが若くなかったら俺達はどうなるってんだ。』

ネロの言葉にジョセフは、がはははと笑った。

下から三番目。
その当たり前に俺を含めてくれる言葉にいつも俺は救われていた。

そんな優しく暖かい場所を壊したくない。
───絶対に里を守る。

『ジョセフおじさん。』

『なんだ?』

俺が声を掛けると、ジョセフは笑いを止め俺に向き合う。 

『闘技場で魔物を燃やす時に薪になる様な物が欲しいんだ。中途半端になってしまう可能性もあるから……』

『ああ、良いぞ。』

『あと、お願いしたいのがあるんだけど。』

俺の火魔法で燃やし尽くせるかもしれないが、念には念を入れておきたい。

俺がもう一つのモノを頼むと、ジョセフは不思議そうな顔をしていた。

『集められるが、何に使うんだ?』

『えっと、『弔い』に、かな……?』

前世の記憶で曖昧な部分はあるけど……。
間違っていても咎める神はいないと思うし。

なんとなく、そうした方が良い様な気がした。

そして、俺は里の人達に向き直る。

『……皆、気を付けて。』

『ルディお前もな!』
『死ぬんじゃねーぞ!』
『俺達はヘマしないから心配すんな!』
『じゃーな!また闘技場で!』

俺は里の人達に毒を渡し終え、声を掛ける。

それを合図に、里の人達はジョセフの指示の元、行動を起こしていく。

『ネロ、ラルフ行こう。』

『おう!』
『うん!』

俺達はジョセフと出会った場所に走り出した。

振り向くとライアの元にはカインが寄り添い、他の里の人達もいた。
俺の置いた魔力回復薬にも気が付いた様で、使いやすい様に置き場所も変わっていた。

行ってきます。
カインもライアも無事で───。

俺は心の中で声を掛け、前に向き直り目的地へと向かう。

















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